ダイガンの孫ノエル
「勝手に割り込んでしまったが余計な事だったか?」
ランドは女性の方を向くとそう声をかける。女性は茶色の髪を三つ編みにして作業服のようなものを着た活発そうな顔立ちをした美人であった。
ポカンとしていた女性はハッとしてランドの方を見ると「いえ、ありがとうございます。助かりました」と礼を述べた。
「ならいいが、にしてもなんだったんだ…今の変な格好の奴と品の無さそうなチンピラは?」
「アイツらの事知らないんですか?」
「さっきアイツらにも言ったがついさっきこの街に来たばかりでな、ここの事情とかは全く知らないんだ」
「そう言えばそんなことをおっしゃってましたね。アイツらはこの街の領主の息子とその取り巻きの冒険者崩れのチンピラです」
「あんなのが領主の息子だとこの街の未来も心配だな」
「お父様は立派な方なんですけどね、お父様の支持が高いのをいいことにやりたい放題ですよ」
「親父さんはなにも言わないのか?」
「領主様は今公用で王都の方に行かれていて留守なんです」
「鬼の居ぬ間にってやつか……ところで何でまたアイツに絡まれてたんだ?」
「実は少し前から店を閉めて愛人になれとあの息子に言い寄られてまして」
「それは災難だな」
「はい、私はこの店を守っていきたいので断っているんですが。するとアイツ…権力を使ってこの店に依頼や武器を造るための素材をまわさないようにしてきたんです」
「クズすぎるな、まぁ君は美人だから言い寄りたい気持ちはわからんでもないが手段が汚いな」
「び、美人って///」
そう言って女性が顔を赤くするとランドは「あぁすまない」と謝罪した。
「つい本音が出た。初対面でそんなこと言われたら不快だよな悪かった」
「い、いえ大丈夫です///」
「ならよかった」
「そ、そう言えばうちの店になにかご用だったんじゃないですか?ええと…」
女性がそう言ったのでランドは「あぁそう言えばまだ名乗ってなかったな」と声にすると
「俺はランドという冒険者だ、ここに鍛冶屋のダイガンの技術を受け継いだ人がいると聞いて訪ねてきたんだが知らないか?」
「あ、それ私です」
「は?」
「私が鍛冶屋ダイガン…おじいちゃんの技術と秘伝を受け継いだ鍛冶屋ノエルです」
「そうなのか!?」
ランドは驚きの声を上げる
「意外でしたか?」
ノエルの言葉にランドは「あぁいや、ちょっと驚いたが大丈夫だ。てっきり男が鍛冶屋をしていると思い込んでいたんでな」と答える。
「まぁ女で鍛冶屋をしているのは珍しいでしょうね」
「すまない、別に君が女性だから仕事に不安とかそんなのはないから気を悪くしないでくれ」
ランドはそう言って頭を下げる。
「大丈夫ですよ、ランドさんの人柄はなんとなくわかりましたから頭をあげてください」
ノエルにそう言われてランドはホッとした顔をする。
「それで、私になにかご用ですか?」
ノエルがそう尋ねるとランドは「あぁ、実はな…」と自分が来た理由を話し出した。
話を聞いたノエルは「なるほどお話はわかりました」と答える。
「できそうか?」
ランドそう尋ねるがノエルは「お造りしたいのは山々なんですが難しいですね」と申し訳なさそうに答える。
「それはやはりさっきのバカ息子とやらの影響か?」
「そうです、素材さえあれば造れますがその素材が無いですからね、私は鍛冶屋であって錬金術師ではないので…」
「うーん仕方ないか、新しい武器は諦め「ノエル!大丈夫!?」…ん?」
ランドが諦めようかなと口にしようとしたときに店の中に一人の女性が入ってきた。
「近所の人があなたの店にまたあのバカ息子が向かったと聞いたから飛んで来たわよ!コイツね!?あのバカに雇われた奴は!」
「は?」
「いや、ペンドラこの人はね…「私の友人に手出しはさせないわよ!」…って」
「おい、なにか勘違いして「問答無用!」…ってうわ?」
女性は話を聞かずランドに殴りかかって来た。ランドは咄嗟にそれを回避する。
「な?」
女性はかわされたのが意外だったのか少し驚いたようだったが「これならどうよ!」と連続で殴りかかる。
(けっこう早いな…)
そう思いながらもランドはそれを全てかわすと「だから話を…」と声をかけるが女性は聞く耳を持たず「なかなかやるようね、かくなる上は…」と剣を抜いた。
「おいまて、流石にそれは」
ランドが慌てるが女性は剣を構えて「これで決めてや…いだぁ!」突然後頭部を抑えて踞った。
「な、なにをするのよノエル」
「落ち着きなさいペンドラ!この人は私を助けてくれたのよ!」
女性の頭を近くにあった板で叩いてノエルが制止した。
「え?コイツあのバカ息子の手下じゃないの?」
「違います!全く少しは人の話を聞きなさいよ!」
それから少しして、「すいませんでしたー!」女性は今ランドに土下座していた。
「いやまぁ気にしてないから、顔あげてくれ」
流石に女性に土下座されるのは罪悪感があるのでランドはそう言葉にする。
「ったく、ペンドラはもう少し落ち着きなさい。旦那さんに笑われるわよ」
「だって…」
「だってじゃないわよ」
「はい」
とりあえず誤解が解けたのでランドとペンドラという女性は改めてお互いに自己紹介をすることにしたのだった。