ダンジョン探索―地下六階へ―
翌日、十分に休息を取ったランド達はセーフルームから出るとフロアボスの部屋の前までやって来た。
「そういえば、このフロアのボスはなんなんだ?」
ランドがゼルにそう尋ねるとゼルは「いや、俺達も知らない。俺達もボスまで来るのは初めてなんだ」と答える。
「そうなのか?最深が7階だと言ってたからてっきり来たことがあるのかと思ってたが」
ランドの疑問に答えたのはリンだった。
「あぁそれはね、前に王都の図書館にある昔の文献でここのダンジョンは7階までだとは書いてたんだけど出てくるモンスターとかまでは資料が劣化していて一部しか解析できてないからわからなかったのよ。普段はここである程度鉄の塊が手に入ったら帰るからボスには挑戦してないの」
「なるほど、まぁ入ったらわかるし見てから考えるか」
そう言ってランド達は地下五階のフロアボスのいる部屋へと入っていった。
ランドはてっきりフロアボスは「ゴーレム系」だと思っていたがそこには初めて見る生き物がいた。
ランド達からまだ距離はあるがサイクロプスより巨大な体躯をしていて二本の角の生えた牛の顔に筋肉隆々の人の身体を持ち大きな斧を持つモンスターの姿が見えた。
「なんだアイツは?」
ランドの疑問に答えたのはゼルだった。
「アレはミノタウロスか?いやそれにしてもこの大きさは…」
「ミノタウロス?」
「ランドは見たのは初めてか?」
「そうだな、アイツは見たことがない」
「アレはミノタウロスと言うモンスターだ、見てのとおり牛みたいな頭と人の身体を持ったモンスターで手に持った斧で襲ってくるAランクのモンスターだ」
「つまりオーガやサイクロプスみたいなパワータイプのモンスターか」
「あぁ、そのハズなんだが…」
そこまで言ったゼルが不思議そうに首を傾げる。
「どうしたんだ?」
「いや、前に他のダンジョンでミノタウロスと戦ったことがあるんだがその時に戦った奴は大きさはサイクロプスとほとんど変わりなかったんだ。だけどアイツはここから見てもかなりデカいから不思議に思ってな」
「個体差なんじゃないか?」
「そうなのかなぁ…?」
そんな会話をする二人に対してリンが「アレはまさか…」と口にする。
「どうしたんだ?リン」
それを見たガイルがリンに声をかけると
「あれは多分「キングミノタウロス」よ。ミノタウロスとは別格のSランクモンスターだわ!」
「Sランク!?」
「一旦戻りましょう!作戦もなしに勝てる相手じゃ…「ブモォォォォ!」…!」
リンがそう言うより先にキングミノタウロスがこちらに気付いて突撃してきた。
その巨体からは想像できないスピードでこちらに迫ってくるキングミノタウロスにゼル達は焦りを見せた。
「速い!」
急接近したキングミノタウロスがその巨体から斧を振り下ろしたときにランドがゼル達とキングミノタウロスの間に入って斧を剣で止めた。
「ランド?」
「コイツは俺が止める、ノエルをつれて一旦下がってくれ」
「っ、すまない!」
ゼルはそう言うとノエルをつれて下がった。
「ノエルの安全が最優先だ、みんな部屋から出るぞ!」
「ノエル!こっちよ!」
ペンドラに手をとられてノエルが部屋を出てそれに続くようにランド以外のメンバーが部屋から出ていく。
やがてランドを残して部屋の扉が閉まった。向こう側からはキングミノタウロスの雄叫びと何かがぶつかり合う音が絶え間なく続いていた。
「ランドさん!」
ノエルは悲鳴に近い声を出して扉に近づくがそれをゼルが制止する。
「今開けるとヤツが部屋から出てくるかもしれない、ここはランドを信じよう」
「でも、でも私のためにランドさんが!」
「ランドならきっと大丈夫だ」
「そうよ、アイツは強いし。無謀な行動をするような奴じゃないわ」
扉の向こう側からはまだ激しい戦闘の音が聞こえている、ゼル達はタイミングを図ってもう一度部屋に入るか思考するがノエルが巻き込まれる可能性を考えると迂闊に扉を開けれない。
やがて扉の向こう側から聴こえてきていた戦闘の音がなくなり静かになった。
そしてボス部屋の扉がゆっくりと開きだした。
ゼル達はいざというときの為にノエルを背中で庇いながら身構える。そして部屋から顔を出したのは…
「しかしこの斧はデカイな、このデカさなら溶かしたらかなりの素材になるか?」
そんなことを言いながらランドが出てきた。
「ランド(さん)!」
ゼル達とノエルがランドに駆け寄る。
「無事だったんだな」
「良かったわ」
「まさかSランクモンスターを倒すとはな」
「なんでCランクなんかやってるのよ?」
「心配かけたな、ノエルを連れて行ってくれてありが…「ランドさん!」…っと?」
そんな会話をするランドの胸にノエルが飛び込んだ。
「良かった!ランドさんが無事でほんとに良かった!私なんかのためにランドさんに何かあったら…」
ランドはそう言って泣き出すノエルの頭をポンポンと撫でながら
「心配させてしまって悪かったな」と言った。
「まぁとりあえずこれで五階はクリアだな」
ゼルがそう言うと他のメンバーも「そうだな」と述べる。
そんなゼル達にノエルが言葉を発した。
「ねぇみんな、もう引き返しましょ。少しは鉄も手に入れたしこのミノタウロスの斧を溶かしたら鉄はかなりあるわ」
そう言うノエルにペンドラが返事をする。
「でも、次のフロアならもっと手にはいるわよ?それに六階からはきっとミスリルだって…「それでも!」…?」
「私の為にこれ以上みんなが危険な目に遭うのは耐えられない!もしみんなに何かあったら…「ありがとなノエル」…え?」
ノエルの言葉にランドがお礼を述べる。
「俺達のことを気にかけてくれるのは嬉しいよ、だけどな…ノエルが俺達を心配するようにペンドラ達もノエルを心配してるんだ。もちろん俺もな」
「私を心配…」
「そうだ、最悪俺達の武器は造れなくても気にしない。質は落ちても武器屋で買えないこともないからな、だけどな…ノエルは武器と違って代えがきかない、一人しか居ないんだ。このまま戻ってもあのバカ息子の妨害は続いていずれノエルは壊れてしまうかもしれない、そうなったらペンドラ達も俺も後悔してもしきれない。だから貴重な素材を採取してそれで武器を造ることが世間でのノエルの名前をもっと広める。そうすることであのバカ息子も迂闊に手は出せなくなるだろう、いくらバカでも冒険者に評判の鍛冶屋を妨害して冒険者全体を敵に回すようなことはできないだろう。だから俺達のことを思うならこのまま探索をさせてほしい、勿論ノエルは俺もペンドラ達も守るからな」
「ランドの言うとおりよ、私達のためにもノエルの為にも頑張っていきましょうよ」
ペンドラもランドの言葉に同意してそう続いた。
他のメンバーもそれに頷いている。
「みんな……うん、わかったわ私も頑張る。これからも護衛よろしくね」
「任しとけ」×5
ランド達全員がそう答えた。
そうして次のフロアへと進んでいくランド達だった。
ノエルは移動しているときにランドの背中を見て…
(会ったばかりなのにこんなに私の事を心配してくれるなんて…ランドさんは優しい人なのね。…なんだろう?今は金属を打ってる訳じゃないのになんだか身体の中が熱いような…///)
そんな不思議な感情が胸の奥に芽生えていた。
―一方こちらはエルフの里―
「ハッ!なにか悪寒が」
「風邪でもひかれましたか?」
「いえこれは…もしやランドさんになにかあったのでは!?」
「ランド様は今武器を新調するために出掛けているとシシリアさんが言ってたじゃないですか」
「もしやその出先でトラブルでもあったのかしら」
「ランド様に限ってそんな心配は不要でしょう」
「もしかして武器って言葉どうりの意味じゃなくランドさんの腰にある「武器」の隠語!?もしそうならランドさんも言ってくれれば私が鍛えるのをお手伝いするのに!手でも口でもなんなら下の…///べっ!」
「仕事をしてください!」