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【PR】モータースポーツ発の極限AT「GR-DAT」はいかにして生まれたのか? 開発パートナー アイシンの熱き挑戦と、次世代スポーツATへの道 - Yahoo!ニュース
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モータースポーツ発の極限AT「GR-DAT」はいかにして生まれたのか? 開発パートナー アイシンの熱き挑戦と、次世代スポーツATへの道

提供:アイシン

最終更新:

アイシンは日本のみならず、世界各地にトランスミッションを供給するメーカーだ

GRヤリスやGRカローラに搭載され「MTと同等に戦える」と話題の8速AT「GR-DAT」。圧倒的な変速スピードはいかにして生まれたのか? 開発を担ったアイシンの歴史と、極限のモータースポーツで鍛え上げられた技術の裏側に迫ります。

変速の聖地「アイシン安城地区」へ出発!

2020年に登場したGRヤリスは正式発売以降も改良が続けられ、モータースポーツをはじめとする極限の状態で研究開発が行われてきました。それらを存分に反映させたのが2024年に登場した「進化型」です。

トヨタの豊田章男会長が提案して生まれた「GR-DAT」。これは2ペダルでスポーツ走行のハードルを大きく下げるものだ。筆者(山本シンヤ氏)は、開発を担当したアイシンへ愛車のGRヤリスで向かった。ここは世界の自動車メーカーにトランスミッションを供給する変速の聖地である

その変更内容はフルモデルチェンジ並みに多岐にわたりますが、その中でも注目は「MTと同等に戦えるAT」を目指して開発されたGRダイレクトシフト8速AT(GR-DAT)の設定でしょう。

これはモリゾウこと豊田章男氏の「モータースポーツの敷居を下げるために、2ペダルの可能性を探ってみないか?」との提案から開発がスタートしたと言います。

進化型GRヤリスの目玉装備である新開発の8速のGR-DATは、モータースポーツの現場で鍛え抜かれた逸品だ

スポーツ走行に最適化されたギアレシオはパワーバンドを外さず連続的な加速を可能にしている

筆者(山本シンヤ)はその思いと実際の性能に感銘し、MTモデル(20式)から乗り換えました。そんなGR-DATをGRカンパニーと共に開発を行い、供給しているのが「アイシン」です。

今回の取材ではアイシン安城地区のテストコースでの撮影も実施。手前から、筆者である山本シンヤ氏の愛車でGR-DATを搭載したGRヤリス、同じく搭載のGRカローラ、そしてアイシンが全日本ラリーで使用しているラリー車だ

イチユーザーとして日頃GR-DATを体感している筆者は、開発の裏側を深掘りしてみたいと思い、変速の聖地「アイシン安城地区」(愛知県安城市)に向かいました。

まずはGR-DATにつながるアイシンのATの歴史を振り返ってみます。

鉛筆と執念でつかんだATの夜明け

ここからはアイシン安城工場に隣接するミュージアムにて、アイシンの歴史を振り返る。施設を案内してくれたのは、アイシン製品開発センター技術開発本部で、第2先行開発部主査を務める加藤博氏(写真右から2人目)と、同 グループ経営戦略本部 総合企画部 渉外室 室長 棚橋克行氏(写真右から1人目)だ

アイシンの歴史は古く、1965年に「愛知工業」と「新川工業」の合併により生まれた総合自動車部品メーカー「アイシン精機」がスタートです。

ATは愛知工業時代にトヨタからトヨグライド(日本初のトルコン式AT)の生産移管がスタートでした。

トヨグライドを前にその話を聞く山本シンヤ氏。トヨグライドは後にトヨタの社長となる豊田章一郎氏と、アイシンの社長となる豊田稔氏が当時アメリカで先行していたAT搭載のシボレーに乗り、その技術に未来性を感じたことが開発のキッカケだったそうだ

その後、トヨタから開発を移管されますが、大きな転機は1969年、アメリカのボルグワーナー社との合弁です。

当初、ボルグワーナー社は技術の優位性を背景に自社に有利な合併比率を求めていたが、アイシンは「単なる下請け工場」になることを拒み対等な立場を要求。何度も議論を重ねて50:50の比率に合意したそうだ

開発で最大の障壁となったのはボルグワーナー社が持つ膨大な特許でした。「特許を回避しながらの開発は不可能」と判断したアイシンは、AT普及への強い意思から1969年にアメリカの部品メーカーであるボルグワーナー社との合併会社「アイシン・ワーナー」を設立します。

アイシン・ワーナー設立後、イギリスの研究所で設計された次世代ATを日本で生産することになりましたが、ワーナー側からは何も教えてもらえず......。

英国で部品寸法を鉛筆で紙に書き写した技術者たち。国産AT技術確立への執念である

そこでアイシンの技術者は渡英時にパーツを前に「鉛筆で型を取り、寸法を測る」という執念で設計データを持ち帰ったといいます。「自分たちの技術にする」という強い思いがあったのでしょう。このデータが後の自社開発ATに大きく役立ったと言います。

絶対に諦めない! 品質の自信を体現した「2000台全数検査」

1972年には、独自設計の3速ATが登場します。この時、当時のアイシン幹部である諸戸脩三氏が「2000台全数検査」を発案。それは「新会社の初めての新製品を成功に導くためには、万全な品質で立ち上げなければならない」という強い思いによるものでした。

3カ月で異例の2000台全数検査を実施し、品質保証を徹底

アイシンはこれをやり遂げたことで、その品質の良さが認められ、ボルボへの供給もスタート。「世界のアイシン」の基礎が築かれた瞬間でした。

その後、ATは多段化・電子制御化の道を歩んでいきます。

中でもFFはスペースの問題で多段化が難しいと言われていました。

カローラがFF化する際、トヨタから「カローラはスペースの問題で3速が限界」と言われていました。しかし、アイシンの技術者は「世界戦略車であるカローラにこそ、燃費と静粛性に優れた4速ATが必要」と、若手からベテランまでが一丸となってこの難題に挑み、2階建て構造(カウンターシャフト式)を考案しました。

アイシンのミュージアムに並ぶトランスミッションのカットモデルの前で真剣に話を聞く山本シンヤ氏。スペースの都合で3速が限界とされたFFカローラだが、アイシンは4速ATの必要性を考え、開発に踏み込んだ

これにより劇的な全長短縮を実現し、狭いエンジンルームへの4速AT搭載を可能にしました。それが1983年に登場したFF4速AT(AW-Z)です。

「後がない」と言う意味を込めた「プロジェクトZ」という名の下、若手とベテランが挑んだ世界戦略車への4速AT搭載だった

異能なエンジニアが本社から離れて東京・秋葉原でしたこと

この頃、アイシンはある決断します。それは「ATの次に来るモノは何か?」と言う単純な探求心からでした。そこで1985年に東京・秋葉原に設立されたのが「エクォス・リサーチ」でした。ここには社内から「尖(とが)った才能」を持つエンジニアが数名招集され、自由な研究体制が敷かれました。

社内から集められた「7人の侍」と呼ばれる尖ったエンジニア。ATの次を見据えた自由な研究が秋葉原の一角で進められた

この"異能"のエンジニアたちは、クルマを意思の通じ合う「馬」のように進化させようと、150以上の研究を重ねました。この時の「提案型開発」という姿勢が、現在のハイブリッド技術やナビ、そして走りの良さへとつながっています。

人間と意思を通わせる「馬のようなクルマ」を理想に掲げ、150もの研究を遂行した

電動4輪駆動の試作車や、後輪の操舵(そうだ)が可能なHSカー等、独創的な成果は現在アイシンの柱である電動パワートレインやナビ技術を支える基幹技術となった

2000年代に入ると、同社の製品は欧州のアウディやVWにも採用され、現地の要望にすぐ応える体制を整えました。「言うべきことははっきり言う」という信頼関係を築き、単なる部品メーカーではない「開発パートナー」としての地位を確立したのです。

写真はGR-DATのベースとなるFF8速DAT(AWF8F)だ。TNGA思想を具現化した初のATで、2016年に登場し、大幅な軽量・コンパクト化を実現。ワイドレンジなギア比、低フリクション、ダイレクト感など、ATの基本性能を全方位でレベルアップさせたGR-DATの母体だ

2012年には8速化、2016年にはトヨタの新しいクルマづくり(TNGA)に合わせた最新のATへと進化。サイズを小さくしながらダイレクトな走りを追求したこの技術の先に、今、私が楽しんでいるGR-DATがあるのです。

プロドライバーの辛口評価が開発者に火をつけた!?

実はこの8速ATをベースにモータースポーツでも活用できるように圧倒的な変速スピードとダイレクトフィールにこだわって開発されたのが、GRヤリス/GRカローラに搭載されるGR-DATになります。

ATの黒子としての役割を捨て自らの走りを主張するGR-DAT。開発陣のこだわりが製品の端々からあふれ出ている

これまでATは滑らかさ(=シフトショック低減)や燃費(=伝達効率アップ)と言った性能を突き詰めるのが常でしたが、GR-DATの開発コンセプトは「MTと同等に戦える AT」です。

GR-DATについて思いを語る、アイシン 製品開発センター パワートレイン製品本部 T/M技術部 T/M第1設計室の第1グループ主幹の眞鍋正典氏(写真左)。取材では同グループ主任の須賀務氏(写真右)、同要素製品本部 コンポーネント技術部 第2ケーシング設計室で第1グループチームリーダーの澤口慎司氏(写真中央)からもお話を聞けた

つまり、MT並みに意のままに扱えること、さらにより過酷なモータースポーツシーンでもへこたれない耐久・信頼性が強く求められます。

スポーツ走行では意のままに操れるレスポンスこそが命だ。また、極限状態での連続走行を想定したタフネスさも必要。GR-DATは滑らかさや燃費という従来のATの常識を打破し、競技で勝つための変速機として誕生した

GRヤリスはこれまでの常識にとらわれない手法・技術を用いて開発されてきていることはさまざまなメディアで報告されています。

●山本氏: 時には「従来の考えを否定しながら」、「既存品では通用しないので専用開発」と言ったウルトラCもあったと思いますが、GR-DATに関してはどうだったのでしょうか?

アイシン製品開発センター パワートレイン製品本部 T/M技術部 T/M第1設計室の第1グループ主幹の眞鍋正典氏はこう話します。

自信と謙虚さが入り交じる開発陣の表情。アイシンが築いてきた歴史を背負い、次世代のATを語る

●眞鍋氏: 実はハードに関しては大きな変更はしていません。耐久・信頼性に関しては当社のこれまでの実績があったので自信がありました。

基礎となるハードの耐久性には絶対の自信。しかしスポーツ走行に適応させるための課題は多かった

その一方で、「MTと同等」と言う部分に関しては、いろいろな指摘を受けました。開発初期にツルシのDAT搭載の試験車にプロドライバーに乗ってもらいましたが、「変速時間の遅さ」や「ダイレクト感のなさ」、さらには燃費重視の「ワイドなギア比」に対して厳しい指摘を受けました。

意のままに操る! 痛快シフトのメカニズムはどうなっている?

●山本氏: そのような厳しい指摘に対して、どのような技術を盛り込んだのでしょうか?

●眞鍋氏: 高応答変速、つまりシフトスピードに関しては、電気信号(シフト操作)から油圧制御までのラグを極限までなくす高応答・小型リニアソレノイドの採用と、油圧がかかってからクラッチを切断・締結する際のピストンの移動量(ストローク)を最小限に設計しています。その結果、従来よりも50%以上シフトスピードを短縮した、ATでは世界トップクラスの変速性能を実現しています。

写真中央に縦に並ぶ円柱形のものが、高応答な小型リニアソレノイドだ。これらによって、従来のATに比べ変速時間を50%以上短縮した俊敏なシフトを生んでいる

●山本氏: スポーツドライビングで重要な要素となるダイレクト感に関してはどうでしょうか?  これまでもそれをうたうATはありましたが、「ATとしては......」と言うレベルだったような気がしますが。

●眞鍋氏: 従来のATでも発進時以外のほとんどの領域でロックアップ(=直結状態)ですが、GR-DATではトルクコンバーターのダンパーを強化することでさらなるロックアップ領域の拡大を可能とし、MT車のようなダイレクトな操作感を実現しています。

●山本氏: プロドライバーに指摘されたワイドなギア比に関してはどうでしょうか?

●眞鍋氏: MTは6速ですが、GR-DATは8速であることを最大限に利用しエンジンのパワーバンドを常に維持できるように、各ギアの比率を極限までクロスさせています。

これにより変速しても回転数が落ち込みにくく連続的な加速が可能になり、シフトアップ時のトルク切れ感が減少。どの速度域からでも鋭いレスポンスで加速できるようになっています。

もちろんクロスレシオ化により変速頻度が増えますが、アイシンの知見を投入し、激しい加減速を繰り返す状況でもギア欠けや摩耗が起きないように強度も最適化されています。

GR-DATはMTの6速を超える8速を採用。この多段化はパワーバンドを外さない鋭いレスポンスの要となる

●山本氏: GR-DATの特徴の一つに「Dレンジでの完全自動変速」があります。これは単なる自動変速の枠を超え、ドライバーの意思を先読みした制御ロジックが盛り込まれていますが、この辺りは?

●眞鍋氏: ソフトウエアに関してはトヨタさんが担当していますが、あの複雑かつ緻密な制御ロジックを忠実に再現し、ドライバーの思いを実現するハードに仕上がっていると自負しています。アイシンはこれまで培ってきたハードウエアの技術をさらに進化させ、ソフトウエアの高度化に対応した価値を提供できることが強みです。

熱との闘いにも負けず! 伝統の全数検査再び

ここでは、同社の要素製品本部 コンポーネント技術部 第2ケーシング設計室で第1グループチームリーダーの澤口慎司氏と眞鍋主幹と同じグループの須賀務主任が話します。

●山本氏: シフトスピードの短縮やクロスレシオのギア比採用などにより、熱の面でかなり厳しいと想像しますが、その辺りの対策はどのようなことが行われているのでしょうか?

●澤口氏: まず摩擦材(クラッチ板)の素材そのものを高耐熱仕様に刷新しています。加えてトランスミッションケースの底面に冷却フィンを新設、走行風を積極的に利用して熱を逃がす構造になっています。さらにATFクーラーを2個搭載することで低速高負荷時でも油温の上昇を抑え込んでいます。

ATFクーラーを2基搭載することで冷却性能を向上。燃費よりも性能維持に特化したスポーツカー専用設計だ

つまり、燃費よりも熱を逃がして『性能を維持すること』に特化した構造・構成になっている......と言うわけです。

とはいえ、それでも開発中はかなり熱に悩まされたと聞いています。筆者も開発中の試験車に乗る機会が何度かありましたが、それを実感したことも。

GR-DATは激しいシフトや、走行風が当たりにくいラリー等の極限状況を想定。標準を大幅に上回る過酷な評価パターンを導入し、プロが「壊れるまで追い込む」実走テストを繰り返して弱点を徹底的につぶし、信頼性を研ぎ澄ませている

●山本氏: 品質へのこだわりはアイシン全ての製品に共通している所だと思いますが、GR-DATならではの取り組みなどはあるのでしょうか?

●須賀氏: 組み立て時のばらつきをより厳格に管理、モータースポーツなど厳しい条件での走行時にも安定した性能を維持できるよう設計しています。

GR-DATの取材を通して、「自分たちの技術にする」という創業期の熱量は、今もエンジニアたちの胸の中に脈々と流れていると感じる

製造は高度な自動化ラインで行われていますが、検査工程でギアのかみ合わせやベアリングの微細な異音を逃さないように検査員がマイクを通して音を聴き、デジタルデータと照らし合わせて"全数"検査を行っています。

全数検査と聞き、1972年にアイシンが独自に設計したATと同じ思いがGR-DATにも込められていることを知り、時代が変わってもアイシンイムズは不変だと実感しました。

アイシンについて詳しく知る!

GR-DATはまだ進化中! 現場で鍛え抜く心でより良い製品に

そんなアイシンはGR-DATの開発が完了した後も「もっといいATづくり」を進めています。その1つが全日本ラリー選手権に自社チーム「AISIN RALLY TEAM with LUCK」としての参戦です。

テストコースで登場したのはラリー仕様のGRヤリス。ラリー専用のGR-DATを搭載しており、ギア比の変更をしていたり、摩擦材潤滑をレベルアップ仕様にしていたりするが、基本は量産品と同じとのことだ

搭載されるDATはギア比の変更(1速を使わない設定)や細かいアップデートが行われているようですが、基本は量産品と同じモノ。つまり、より厳しい条件でテストを続けることで、次世代スポーツATのヒントを探しているのでしょう。

アイシン ラリーチーム チーフメカニックの榊原宏晃氏と同乗走行に挑む山本シンヤ氏。その乗り味はいかに?

ちなみにGR-DATはラリーごとに全バラされ劣化や不具合をチェックしているそうです。つまり、自ら造り上げたGR-DATを、今も自ら鍛えている......と言うわけです。

ラリーカーのステアリングには、DATの電撃的な変速をいかなるハンドル角からでも瞬時に呼び出せるシングルパドルがあった

今回、このマシンの助手席に同乗させてもらいました。本格ラリーカーとしてボディ/サスペンション、操作系などはアップデートされているのは乗れば一目瞭然ですが、トランスミッションの小気味よいシフトアップ/ダウンやダイレクト感あるフィーリングなど、「自分の愛車のGR-DATと同じ!!」と、思わずニンマリ。一般道からコンペティションまでリアルに通用するATであることを改めて実感しました。

今回、GR-DATを取材をして感じたのは、本来ATは黒子であるべきですが、GR-DATは控えめながらも内に秘めた"主張"を持ったユニットである......と言うことです。

技術者たちの思いに触れた充実の取材。DATが変えた「ATの常識」。その革新を支えたメンバーと共に、取材のフィナーレを笑顔で飾る

個人的には「ATはつまらない」と言う心のどこかにある思いを払拭させ、自分たちが「乗って楽しい」、「ワクワクできる」製品を造り上げたエンジニアの"自信"がちょっとあふれ出てしまったのかな......と思っています(笑)。

だからこそ、GRヤリス/GRカローラのGR-DATユーザーは、それを造り上げた技術屋集団がアイシンであることを知っておいてほしいです。

[Text:山本シンヤ Photo:土居凌祐]