Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
世界で進む未成年SNS規制 禁止が生む『次の依存』の危険性(神田敏晶) - エキスパート - Yahoo!ニュース
[go: Go Back, main page]

Yahoo!ニュース

世界で進む未成年SNS規制 禁止が生む『次の依存』の危険性

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
写真:ロイター/アフロ

KNNポール神田です。

SNS利用を禁止・制限する動きが世界各国で広がっている。誹謗中傷や詐欺などの被害防止を目的とした政策だが、規制の強化が子どもたちの『依存先』を別のデジタル体験に移す可能性も指摘されている。禁止によって生まれる『次の依存』とは何か。

■世界各国で広がる未成年のSNS規制


デンマーク、15歳未満のSNS利用禁止へ 首相「子どもの幼少期奪っている」

デンマークメッテ・フレデリクセン首相は、15歳未満の子どものSNS利用を禁止する方針を表明した。SNSが「子どもたちの幼少期を奪っている」と強調している。
□昨年11月にはオーストラリア議会が世界で初めて16歳未満のSNS利用を禁止する法案を可決した。
□ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ首相も15歳未満の利用禁止を提案している。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c4dbfd137e0d541134029f920b67b33b7e1aa57a

2024年から25年にかけて、オーストラリアやデンマーク、米国一部州など、未成年のSNS利用を厳しく制限・禁止する国家的な動きが加速している。その背景には、SNSによる誹謗中傷や不適切投稿、詐欺・犯罪の増加、そして自殺に繋がる事例まで社会的問題の深刻化がある。

米国で子供のSNS利用への規制拡大、保護者の同意など義務付け…事業者側は差し止め求め訴訟

SNS事業者を相手取った訴訟が急増する米国で、子供のSNS利用を規制する法整備が拡大している。
□(2025年10月)2日時点で、全米50州のうち少なくとも10州で関連法が施行され、新たに4州で施行を控える。一方、事業者側による訴訟で関連法の施行が差し止められるなどした州は7州に上り、子供を守るためのSNS規制を巡る綱引きが激化している。
□子供のSNS利用を規制する関連法が施行されている10州のうち、テネシー、ミシシッピ州は未成年のSNSアカウント作成時に、ユタ州はSNSアプリのダウンロード時に、年齢確認や保護者の同意などを義務付けた。フロリダ州では、保護者が子供のアカウント削除を請求できる制度が導入されている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b54d885b4b10084fa22f1670e91fe6e638b0c5ca

事業者視点から見ると、アメリカ一国だけで州ごとに、ダウンロードや利用規約を変更する必要が出てくる。同様に、これが、世界各国の自治体レベルとなると膨大なローカライズが必要となる。

その一方で、SNS規制の拡大により『子どもの健全な育成』が守られると期待されるが、必ずしも規制だけでうまくいくのかも気になるところだ。

■ SNS禁止がもたらす“依存の移行”

SNSを禁止することが、必ずしも『SNS依存』そのものを解消するわけではない

SNSによって満たされてきた承認欲求や交流の刺激は、別のデジタル手段へと移行する傾向がある。特にオンラインゲームや動画視聴は、即時的な報酬を得やすく、脳の報酬系を強く刺激する代替体験となりやすい。安直なSNS規制はより強固な『依存』を生む機会となるだろう。

このような『依存のシフト』は、SNS規制社会が抱える新たな課題といえる。

単なる禁止ではなく、子どもがリアルな人間関係や多様な刺激を得られる場の提供が求められる。
オーストラリアの16歳未満のSNS規制なども、Facebook・Instagram・TikTok・X(旧Twitter)などが規制対象ではあるが、学習目的であるYoutubeやメッセージアプリやオンラインゲームなどは規制から外れている。

■SNS規制社会が見落としがちな本当のリスク

SNS規制は、一定の抑止効果をもたらす一方で、次のような副作用を内包している。

  • ゲーム・動画・性的アダルトコンテンツなどへの依存移行
  • 報酬系神経の過剰活性化によるデジタル刺激への渇望
  • 現実社会でのコミュニケーション機会の減少
  • 家族・教師が子どもの変化に気づきにくくなるリスク

子どもの関心は、規制によって自然に『健全な趣味や学習』へ戻るわけではない。社会は『何を禁止するか』だけでなく、『どんな新しい体験や価値を与えるか』を問われている

■ 大人の役割は「監督」から「共創」へ

禁止や制限の強化は一定の抑止力を持つが、それだけでは十分ではない。

大人が果たすべき役割は『監視』ではなく、『健全なデジタル体験を共に創ること』だ。

リアルな居場所や体験の場を整え、ITリテラシー教育を継続的に行うことが、依存を防ぐ最も確かな対策となる。


同時に、『情報リテラシー』や『審美眼』を育てる教育も欠かせない。

なぜ自分が特定の情報に惹かれるのかを客観的に捉え、アルゴリズムに流されずに判断する力――それが、AI時代の新しい基礎教養である。

テレビをつけっぱなしの大人がSNSを批判しても、子どもにはまったく響かない。

AIやSNS『危険だから遠ざける』よりも、『どう使いこなすか』を共に学ぶことが、次の世代のリテラシーを育てる道だ。

『禁止』ではなく『共創』へ――その発想の転換が、これからの社会を決定づける。

SNS規制の是非は、『禁止』か『自由』かの単純な二択ではない

大人がテクノロジーと向き合い、子どもたちにリアルな刺激と安心できるデジタル環境を提供できるかどうか。

その視点こそが、いま社会全体に問われている。

馬車の時代に、クルマが登場したのと同じで、馬車の時代の論理でクルマを論じるのではなく、クルマの将来の普及を想像しながら、どのような『シフト』と『乗りこなし』が必要なのかを過去の経験と新たな経験で考える必要がある。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任、iU大学客員教授。著書に『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼などは070-5589-3604まで

神田敏晶の最近の記事