日本が台湾有事で備えるべきことはなにか。経済安全保障アナリストの平井宏治さんは「中国には習近平の一存で国際航空便を停止させることができる法律がある。台湾有事で10万人の中国在留邦人を人質に取られないためにも、日本企業は脱中国を決断する必要がある」という――。(第1回)

※本稿は、平井宏治『日本消滅』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

中国を超大国にした「富国強兵」政策

2013年に第7代国家主席に就任した習近平はさらなる経済成長と国力増強に取り掛かり、2015年、李克強国務院総理の名の下に産業政策「中国製造2025」を発表した。

習近平中国共産党総書記
写真=Wikimedia Commons
習近平中国共産党総書記(アゼルバイジャン共和国大統領報道より抜粋/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

2025年までに中国国内の工業の製造能力を高め、中国の製造業を労働集約型から技術集約型に変え、中国を付加価値の高い製造業強国に発展させることを目的とする産業政策である。

「中国製造2025」は、中華人民共和国建国100年にあたる2049年までに、①半導体など次世代情報通信技術、②高機能NC工作機械とロボット、③航空宇宙設備、④海洋エンジニアリング設備とハイテク船舶、⑤先端的鉄道交通設備、⑥省エネルギー・新エネルギー自動車、⑦電力設備、⑧農業用機材、⑨新素材、⑩バイオ医薬と高性能医療機器、の10の分野で世界のトップとなることを目標としている。つまり、アメリカを追い抜くということだ。

そして、「中国製造2025」と並行して、同時期、中国における産業発展は何のためにあるのかということが明解に打ち出された政策がある。2017年の中央軍民融合発展委員会第1回会議において大々的に宣言された「軍民融合政策」だ。

軍民融合政策とは、軍事分野と民間分野の連携を強化して互いに資源や技術を共有することによって安全保障の確保と経済発展を同時に進めようとする政策であり、現在の中国の国家政策の根幹には常にこれがある。

すべての技術発明は軍事利用のため

軍民融合の方針の下では、民間資源はすぐに軍事利用できる状態におかれる。技術はまず軍事のためにあるべきで、それが民間に転用され研究投資を回収する状態が望ましいと考えるのが、現在の中国の産業政策の常識である。習近平が軍民融合をどれだけ重要視しているか、それは、中央軍民融合発展委員会の主任を自ら務めていることからも明らかだ。

「軍民融合政策」が明確に打ち出された背景には、現代の先端技術ならではの特徴がある。前時代の機械的技術には、ある程度わかりやすいかたちで民生技術と軍事技術の区別があった。

それが、半導体技術を考えてみればわかるように、例えば私たちが普段使用している電子機器を構成している技術などはすぐに軍事利用できる状況にある。

そのような状況に対して、中国はとにかく軍事優先で産業政策を展開する、ということを明らかにしているのが「軍民融合政策」なのだ。そして、この「軍民融合政策」は、アメリカを撃破するために中国が案出した「智能化戦争」の実現化のためにある。