※本稿は、大江英樹・大江加代『知らないと損する年金の真実【改訂版 2026年新制度対応】』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。
「年金は保険」と言われてどう思う?
さて、ここからは公的年金というものの本質を正しくお話ししたいと思います。それもできるだけ難しい話は避け、ごくシンプルに3つに絞ってわかりやすくお話しします。
まずひとつ目は、「年金は“貯蓄”ではなく、“保険”である」ということです。実はこの概念は年金で最も大切な本質であり、この考え方がちゃんと理解できれば年金に対する誤解や間違いの8割以上は解消すると言っても良いと思います。
読者の中には「え! 保険って、あの生命保険とか自動車保険の保険でしょ? 年金の一体どこが保険なの?」と思う人もいるでしょう。「保険」と聞くと、民間の生保や損保が提供している保険がすぐ思い浮かびますから、それと年金がどう結びつくのかがピンとこないのだろうと思います。
たしかに民間の保険会社はさまざまな保険を提供していますが、実は最も大事な保険は民間の保険ではなく、「社会保険」なのです。社会保険というのは、病気になった時に治療費がまかなえる健康保険や失業した時の雇用保険、あるいは年を取って要介護状態になった時に補助される介護保険といったものです。年金もそんな社会保険のひとつです。
不幸が突然起きても困らないための仕組み
そもそも「貯蓄」と「保険」の違いって何でしょう? この2つは全く異なる概念のものなのです。貯蓄は、「将来の楽しみのために自分で蓄えるもの」、これに対して保険は、「将来の不幸のためにみんなで備えるもの」です。
いずれも、「将来」のために「準備しておく」ことは同じですが、その目的や方法は全く正反対です。貯蓄の場合は、「来年は海外旅行に行こう」とか、「子供が大学に進学するためのお金を作っておこう」、あるいは「将来、家をリフォームするためにお金を積み立てておこう」といった具合に自分や家族の楽しみのために蓄えておきますが、保険は、一家の働き手が突然亡くなったり、病気や失業、火災や自動車事故に遭ったり、といった人生において起こり得る不幸に備えるものです。
ただし、この不幸は楽しみと違って突然訪れることも多いものです。そんな時に困らないようにするためにみんなでお金を出し合っておいて、そんな不幸が突然訪れた人にお金を回してあげる、それが保険という仕組みなのです。
