本名福江 純，英名Fukue Jun，幼名純ちゃん，筆名本名と同じ，芸名未定． 父猛，母美佐子の長男として，本州の西端，山口県は宇部市に生を受ける． 時に1956年2月3日節分，しんしんと雪の降る（ここ脚色）夜であった．
さて当時宇部市は，石炭の町から化学工業の町へと変貌を遂げた頃で，
父親は現場の化学技術者として働きながら夜間大学へ通っており，
また母親は高校卒業後にしばらく東京の専門学校へ通っていた
いわゆるモガ（modern girl）と呼ばれる人種だったらしい．
一応，一人っ子ということになっており，実際に一人っ子で育てられたが， 真実のところは明らかではない． でも本人は，かなり長い間，7歳年上の叔父を兄弟だと信じていた． ちなみに，後年（小学校2年のころ）， 惑星の配列（例の水金地火木土天海冥）を教えてくれたのも，その叔父である．
小さいときから虚弱で，よく熱を出しては寝込んでいた （知恵熱だということになっていたが，たんに身体が弱かっただけだと思う）． また一人っ子の例に漏れず，マイペースな一方で（ふつうはワガママという） ナイーブな部分があったようだ（ふつうは神経質という）． このような繊細な神経が災いしてか，長年，自家中毒症を患っていて， 口になじまぬ食物が出てきたときのようにストレスがかかると， つい反芻してしまうことも多かった （たんに好き嫌いが激しかっただけかもしれない）． 幼稚園は，当時としては珍しく給食だったのだが， ホーレンソーが食べれなくて， （やさしくてきれいだった）先生に除けてもらったことがあるらしい （ちなみに，いまはホーレンソーのゴマかけオヒタシは好物という）．
生まれた直後は，市内で狭い間借りに住んでいたらしいが，
発展途上の宇部市は増加する人口に対処するため
市内のあちこちに市営住宅を建てつつあった．
そして，彼の家族も，郊外の風光明媚な常磐湖にほど近い東山地域に建てられた，
東山市営住宅の庭付き一戸建ての一つに入居でき，
一家3人，そこで20年近く暮らすことになる．
しかし“庭付き一戸建て”といっても，
その実体は木造！平屋で（その名も“木造15号”），
いまのプレハブ住宅よりすごいかもしれない．
電気水道だけは通っていたが，
ガスはプロパン（都市ガスなんぞは市全体でも一部だけ），
トイレは汲み取り（臭いももちろんだが，あの闇に蠢く，，，やめとこ），
窓は木枠で雨戸は一部しかなく
（大きな台風が来たら，雨戸のない窓が飛ばされないように，
家の外側から板を打ち付ける…父親は大変だったろうが子供は嬉しい），
入居当時は風呂もなく
（最初はもらい湯していたが，そのうち，父親が庭に風呂を作った），
部屋数はたったの3部屋だった（親子3人だからまあよかったけど）．
もっとも“庭付き”という点ではあながち嘘ではなく，
入居当時に植えたサクラの木などがやがて大きくなりサクランボも食えた．
ただし，もともと湿地帯を切り開いて造成した住宅地だったので，
ムシだけはうじゃうじゃおり，
50cmぐらいもある（少し誇張？）背中が緑色のナメクジもいた．
東山市営住宅には，庭付き一戸建ての木造住宅以外に， 2階建てのアパートが10棟ぐらいあり， そのうちの一戸には幼なじみの鉄っちゃんが住んでいた． 親同士が同僚だったり同い年の子供が少なかったりせいもあり， 鉄っちゃんとはよく遊んだものだ （もっとも外遊びが好きなてっちゃんの後をついていってただけだという話もある）． 鉄っちゃん，本名辻畑鉄也，またいずれ出てくるだろう．
就学年齢になると，ごくふつうに公立小学校に入学した． 時に1962年4月，桜吹雪の吹く（脚色）春の日である． 入学した宇部市立琴芝小学校は市内の琴芝地区にあった． 東山地区からは距離にして2kmぐらいはあっただろうか， とにかく子供の足だと片道ゆうに30分ぐらいはかかる距離で， 暑い夏の日や寒い冬の日はなかなか辛かったのではないだろうか． いやいや，それよりもっと辛いのは， ほら学校を出たすぐ後に，トイレに行きたくなるなんてことがあるわけだ． 通学路の脇は畑だらけだから，小さい方ならなんとでもなるが， 大きい方だと野○○というわけにもいかない． それでも，なんとか家までもつかなと思って歩き続けるわけだが， そうは問屋が卸さない． 自然の法則はなかなか子供には厳しいもので， 小学校1年か2年の頃だと思うが，一度だけお土産を挟んで持ち帰った覚えがある．
小さいときから頓狂な子供で，調子に乗りすぎて，よく失敗をした．
たとえば2年生のときだったかに浜辺に遠足に行って，
弁当を食べてしまった後に砂浜を走り回り，
まだ食べ終わっていなかった子の弁当を砂だらけにしたことがある．
もっとも，当の本人はそのことにまったく気づいておらず，後で，
砂だらけにされた子供の親から先生に苦情が来てわかった
（そんな細かいこと，いちいち言ってこなくてもいいやんなぁ）．
それとか，もっとアホなのは，やはり低学年のとき，
大雨が降って学校の校庭が水浸しになったことがあった．
膝ぐらいまでの水の中をみんなでドボンドボンと騒いでいたのだが，
そのうちいきなり胸ぐらいまで水の中に落ちてしまった．
排水溝の深いところに踏み込んだのである．
もっと水深があったらあのとき死んでいたかもしれない．
なにしろまったくの金槌だったから．
小学校で極めつけのアホな出来事は3年のときに起こった．
夏休みが始まったばかりでいきなり風邪を引いてしまった．
いや，これはいつものことなのだが，風邪が治って元気になったとき，
やはりいつものように“鉄っちゃんのとこに遊びに行ってくるよー”，
と言って家を走り出た．
そして家の前のゆるい下り坂で転んでしまったのだ．
当時の道路は舗装なんかしてなくて，
あちこちで大きな石の角が頭をのぞかせており，
転んだ拍子に石の角に肩がぶつかったから堪らない．
ポキッ！
右肩の鎖骨が折れてしまった音だ（音まで覚えているか）．
あまりの痛さに真っ青な顔をして家に戻ったのだが，
母親もすぐには折れたことがわからず，
あまり痛がるから病院に連れていってレントゲンを撮ってはじめて
折れていることがわかった．
幸か不幸か，鎖骨が八の字型に折れた単純骨折だったので，
手術もなく，お医者さんが，ヤッと引っ張って，骨折整形は終わりである．
そのときになって，大泣き状態になったが．だって麻酔もなしだもの．
で，結局，小学校3年の夏休みは，上半身ギブスで過ごすことになった．
小学校4年生でメガネをかけるようになった． ＴＶはカラー放送がはじまったかどうかの頃で番組の数も少なかったし， マンガも週刊誌（少年サンデーと少年マガジン）が創刊された頃で， 小さいときからマンガは大好きだったが，量がとにかく少なかった． もちろん（田舎だったせいもあろうが） 家庭教師はおろか塾にも縁がなく，家での勉強は宿題だけである． だから，目が悪くなる心当たりはないのだが， こればっかりは遺伝だと思われる． でも，目が悪いのは，とにかく至極不便なことではある． ちなみに，大学に入ってから，目はさらにぐっと悪くなるのだが， こちらは暗いところで本を読んだり麻雀をしたりした不摂生の結果である．
基本的に家遊びの子供で，本だとかプラモ作りに熱中していた． たとえば本だと，マンガはもちろん好きだったが， それ以外では図鑑や地図が好きで， とくに宇宙の図鑑はぼろぼろになるまで観た覚えがある． プラモデルもしこたま作ったが，最近はさすがに作る暇がない． それから映画好きの母親のお相伴で，ＴＶ桟敷で，いろんな映画を観た． うーん，目が悪くなる要素，案外あるやんか．
また小学校の中学年から高学年にかけては， 母親が病気がちで入退院を繰り返していた． 6年のときの修学旅行は大分県の別府だったのだが， そのときもちょうど入院していて， 観光バスで学校まで戻ったそのまま病院へ行ったものである． ほらほら，そこの人，それなりにケッコー苦労してるでしょ． 昔からノーテンキに生きてたわけじゃないんだから． ま，そんな母親でもいまだにかつかつ元気でいるから， 星も人も，太く短く細く長く生きるものなのかもしれない．
小学校と言えば，ガキ大将も懐かしいものがある． 5年のときのクラスにＯ中という腕白小僧がいて， Ｋ増という男の子とぼくとが子分のような格好で， いつも一緒につるんでいた． そういう腕白小僧の率いるグループがいくつかあり， そこに入っていると，他の腕白小僧からはＯ中が守ってくれるという仕組みだ． でも，何ヶ月かするうちに，そういう親分子分の関係がいやになってきて， グループを抜けたいと言ったわけだ． そのときには，下校の途中で草むらに連れて行かれ， “抜ける以上はケジメだから歯を食いしばれ”ってな感じで， Ｏ中とＫ増と二人から頬をしばらく殴られ続けた． ま，（やっちゃんが指を短くされる）あのしきたりのようなもんですな． 当然，ほっぺたを真っ赤に腫らして家に帰って， （それをみて）母親は何事かと血相を変えたが， 本人は途中で転んだと言い張り， また母親もそれ以上は追求しなかったらしい． 興味深いのは，つぎの日からも，何のこだわりもなく， そのＯ中やＫ増たちとごく普通に遊んだことだ． ただいつも一緒にいることはなくなっただけである． そういうガキ大将のいた時代だった．
つづくのか？