NTTグループの挑戦
年間1000万文書を自動保管
NTTグループの中核をなすシステムインテグレーターのNTTドコモソリューションズ株式会社(以下、NTTドコモソリューションズ)は、グループ会社115社のグループ共通の決裁システム(以下、決裁システム)標準化を図った。各社で個別最適化されていたシステムを、いかに統合するか。選択したのは、業務をシステムの標準機能に合わせるFit to Standard(フイット・トゥ・スタンダード)の採用だ。ServiceNowを導入し、親和性が高い電子帳簿保存法対応・文書管理ソリューション「invoiceAgent」を採用。専用アダプターで年間1000万超えの文書を自動保管・一元管理し、証跡管理により監査対応の効率化も図る。
グループ会社115社
17万人利用の決裁プロセス刷新
電話中心からICTへ、中核事業をシフトするNTTグループ。「お客様のDX」とともに「自らのDX」を掲げ、変革に挑み続けている。ソフトウエア開発をはじめとする技術力で支えているのが、NTTドコモソリューションズだ。2025年7月に、旧NTTコムウェアから商号を変更。NTTドコモグループの一体感をより高め、シナジー効果の最大化を図る。
NTTドコモソリューションズ株式会社
ビジネストランスフォーメーション事業本部
コーポレートビジネスソリューション部
グループ共通IT部門 担当課長
高木 景介氏
NTTグループの「自らのDX」において、取り組み第一弾として着手したのが「決裁プロセス」の刷新だ。従来の課題について、同社 ビジネストランスフォーメーション事業本部 コーポレートビジネスソリューション部 グループ共通IT部門 担当課長の高木 景介氏は話す。
NTTドコモソリューションズ株式会社
ビジネストランスフォーメーション事業本部
コーポレートビジネスソリューション部
グループ共通IT部門 担当課長
高木 景介氏
「従来、NTTグループ会社115社は、それぞれが独自の決裁システムを運用しており、各社で入力や操作方法はもとより決裁プロセスが異なるという課題がありました。ITコスト削減、現場の業務負荷軽減、生産性向上などの観点から、標準化による決裁プロセスの抜本的改革が求められていたのです」
NTTドコモソリューションズ株式会社
ビジネストランスフォーメーション事業本部
コーポレートビジネスソリューション部
グループ共通IT部門
小栁 瑞季 氏
同グループは、決裁システム標準化に向け、2021年4月に要件定義を開始。基盤として選択したのがデジタルプラットフォームServiceNowだ。理由について、同社 ビジネストランスフォーメーション事業本部 コーポレートビジネスソリューション部 グループ共通IT部門の小栁 瑞季氏は次のように話す。
NTTドコモソリューションズ株式会社
ビジネストランスフォーメーション事業本部
コーポレートビジネスソリューション部
グループ共通IT部門
小栁 瑞季 氏
「各社の要望に応じてカスタマイズを行う場合、膨大な時間とコストがかかります。業務をシステムの標準機能に合わせるFit to Standardを採用することにしました。標準として合わせる製品には、世界で導入が進むグローバルスタンダードのデジタルプラットフォームServiceNowを選択しました」
NTTドコモソリューションズは、デジタルプラットフォームと合わせ、電子帳簿保存法対応・文書管理システムの選定も進めていた。決裁システム標準化の効果を最大限に生かすためには、業務で利用する文書管理システムを一体として捉える必要があったからだ。
ServiceNowとの高い親和性
大規模文書管理にも対応
グループ共通利用の電子帳簿保存法対応・文書管理システムの選定は、ウイングアークの「invoiceAgent for ServiceNow(以下、invoiceAgent)」一択だったという。「重視したのは法順守のために、新たに作り込みが発生しないこと。決裁システム変更に伴い検討事項や開発作業が多数発生し、それにリソースを集中するためです。また、ServiceNowとの高い親和性に加え、グループ従業員17万人以上の利用に応える容量や性能も採用のポイントとなりました」(高木氏)
invoiceAgent選定後にPoC(概念実証)を実施。同製品はSaaSのためスモールスタートにより1年間を準備期間とした。「分からないことをウイングアークに相談すると、丁寧かつ迅速に回答が返ってきました。また、当グループの財務部門がinvoiceAgentの設定や記録方法などに関して法令に適合しているかをチェックした上でリリースしました」(小栁氏)
1000万ファイルを保管
税務以外の監査でも利用
2023年4月、NTTドコモソリューションズにおいてServiceNowによる決裁システムと、それに連携するinvoiceAgentを利用した電子帳簿保存法対応・文書管理システムが本稼働した。システム間連携は専用アダプターを使用。ServiceNowで決裁後の書類は自動で振り分けられ、invoiceAgentに保管される。保管時にタイムスタンプを付与した上、電子帳簿保存法にも対応。対象書類のURLが発行され、ServiceNowからアクセス可能となる。契約締結後の書類もinvoiceAgentへ保管。監査対応時は文書検索も容易に行える。
図のような連携により、NTTドコモソリューションズにおける決裁業務の効率化、ガバナンス強化を実現した
NTTドコモソリューションズは、決裁に関するすべてのデータをinvoiceAgentで保管している。「請求データや支払データは、決裁にひもづくかたちとなっています。請求元になった意思決定は誰が行ったのかなどの情報も一緒に管理すべきという考え方です」(高木氏)
現在では、invoiceAgentへの保管数は毎年1000万ファイルを超える。図面や画像などが添付されているファイルもあり、大容量データにも対応。グループ各社は、税務以外の監査業務でも同製品を利用し、業務の大幅な効率化を図っている。「決裁文書を監査人に提出する場合、ServiceNow側では権限設定などで対応が難しい場合があります。データが証跡管理されているinvoiceAgentを使うことで、監査に対応できるメリットは大きいと思います。また同じファイルを更新する場合、ファイルのバージョンを管理できる点も便利です。NTTグループにおいて、経理部門などの監査対応で同製品を使う従業員は約1000名。セキュリティ確保のためアクセスは多要素認証で行っています」(小栁氏)
invoiceAgent導入により、これまで決裁関連情報を紙で管理していたグループ会社は大幅な効率化を実現。また、デジタル化により請求書提出や監査業務のための出社も不要となった。リモートワークがしやすくなり、働き方改革にも貢献。さらにグループにおける決裁関連データの一元管理によりガバナンス強化が可能になった。
今後の展望について高木氏は話す。「invoiceAgentは、保管データ量も利用会社も増えていきます。それらに対応していくことが重要テーマです。また、決裁以外に各社固有領域でServiceNowの活用が広がっており、その中で電子帳簿保存法に対応するべくinvoiceAgentを利用しています。日本形式の帳票作成といった課題も検討中です。今後、ウイングアークには安定稼働、データ量増大への対応はもとより、NTTグループの視点に立った提案も期待しています」