2022.04.11
瞬間英作文で英会話が上達しない理由
「瞬間英作文をやっているのに、英語が話せるようにならない」
もしあなたがそう感じているなら、それは正しい感覚です。
瞬間英作文では、話せるようにはなりません。
理由ははっきりしています。
この方法は、英語を話すときに「脳が行う処理」を訓練しないからです。
日本語の文を見て、それを即座に英語に変換する。
これが瞬間英作文トレーニングですが、これは「翻訳のスピード」を上げる練習であって、「話す力」を育てるものではありません。
実際の会話では、誰もあなたに日本語の台本を渡しません。
あなたの頭の中にあるのは、まだ言葉になっていない「思考」だけです。
その思考を、英語の語順で組み立てる—— これが英語を話すということですが、この能力が瞬間英作文では育たないのです。
だから、一文は言えても、つながっていかない。
だから、練習では言えても、実際の会話では言葉が出てこない。
では、なぜそうなるのでしょうか?
そして、本当に話せるようになるには何が必要なのでしょうか?
順を追って説明します。
なぜ、瞬間英作文では話せるようにならないのか?
たとえば、「私たちは3年前からこの町に住んでいます」という日本語を見て、”We have lived in this town for three years.” という英語をつくる。
瞬間英作文のトレーニングをすれば、簡単にできるようになるかもしれません。
でも、英語を話せるようにはならなかった。
なぜか?
理由は単純です。
瞬間英作文で鍛えているのは「翻訳の瞬発力」であって、「話す力」ではないからです。
実際の会話を思い出してください。
あなたの頭の中に、日本語の文章が浮かぶでしょうか?
「私たちは3年前からこの町に住んでいます」という完成された日本語が、くっきりと単体で会話中に現れるでしょうか?
現れません。
あなたの頭にあるのは、まだ言葉になっていない「思考」だけです。
「ここに住んでどれくらいだろう?ええと、3年くらいか」
そういう漠然とした思考を、その場で英語の語順に組み立て、文にしていく——
これが、実際の「話す」という行為です。
瞬間英作文では、このもっとも重要なプロセスが完全に抜け落ちています。
日本語の文という「お題」が先にあり、それを英語に変換する。
これは「クイズに答える訓練」であって、「自分の思考を言語化する訓練」ではありません。
だから、練習では言えても、実際の会話では英語が口から出てこない。
英語を話すとき、頭の中で何が起きているのか?
では、「英語で思考を組み立てる回路」とは、具体的にどういうものなのでしょうか?
実際の会話で、ネイティブの脳内では何が起きているのか、そのプロセスを、認知科学の観点から分解してみましょう。
たとえば、先ほど出てきた「ここに住んで3年くらいになる」という内容を伝えたいとします。
このとき、英語話者の頭はこう動きます:
ステップ1:「誰が・何をしている?」
まず最初に特定するのは、主語と動詞です。
➡ 「私たちが」「住んでいる」 = “We have lived”
ステップ2:「どこに?」
次に場所の情報を追加します。
➡ 「この町に」 = “in this town”
ステップ3:「どれくらいの期間?」
最後に時間の情報を加えます。
➡ 「3年間」 = “for three years”
結果: “We have lived in this town for three years.”
これはたんなる文法ルールではありません。
英語話者の脳が、実際にこの順序で情報を処理しているのです。
だから、頭でわかるだけではダメなのです。
情報処理のモードを変える必要があるのです。
認知言語学では、これを「概念化 ➡ 線状化 ➡ 言語化」のプロセスと呼びます。
- 概念化:言いたい内容(思考)を持つ
- 線状化:それを言語の語順(英語なら主語→動詞→…)に並べる
- 言語化:実際の単語を当てはめて発話する
日本語話者が英語を話せない最大の理由は、この「線状化」の段階で躓くからです。
日本語の語順(「私たちは」「3年前から」「この町に」「住んでいます」)で思考するため、 それを英語の語順に組み替える際に、ワーキングメモリが過負荷になる。
結果、言葉につまり、フリーズし、「あれ、なんて言うんだっけ」となる。
しかし、瞬間英作文は、この「線状化」の訓練を一切しません。
なぜなら、すでに線状化された日本語の文を、英語に置き換えているだけだからです。
必要なのは、思考を直接、英語の語順で組み立てる能力です。
そしてその能力は、まったく別の方法で鍛える必要があります。
どうすれば「英語で思考を組み立てる回路」は育つのか?
答えは、瞬間英作文とは真逆のアプローチです。
速く処理しようとするのをやめる。
ゆっくりと、英語の語順で思考を組み立てる訓練をする。
私たちはこれを「構造的英語思考法」と呼んでいます。
瞬間英作文が「刺激 ➡ 反応」のスピードを追求するのに対し、 構造的英語思考法は「思考 ➡ 言語化」のプロセスそのものを育てます。
具体的には、こういうことです。
日本語の文を見たとき、すぐに英語に訳そうとしない。
まず、頭の中にイメージを浮かべてください。
「私たちは3年前からこの町に住んでいます」なら、 自分たちがこの町で暮らしている様子を、映像として思い描く。
そして、そのイメージを見ながら、英語の語順で組み立てていくのです。
- 「誰が?」➡ 私たちが ➡ “We”
- 「何をしている?」➡ 住んでいる(3年前から今まで)➡ “have lived”
- 「どこに?」➡ この町に ➡ “in this town”
- 「どれくらい?」➡ 3年間 ➡ “for three years”
このプロセスを、ゆっくりと、意識的に行います。
最初はぎこちなくていい。
5秒かかっても、10秒かかってもかまいません。
重要なのは、英語の語順で思考が流れる感覚を、脳に刻み込むことです。
この訓練を繰り返すと、脳内に新しい神経回路が形成されます。
「日本語 ➡ 英語」という翻訳回路ではなく、「思考 ➡ 英語」という直結回路です。
この回路さえ育てば、速度は後から自然についてきます。
考えていただきたいのですが、日本語を習得するときに「瞬発力」を養うトレーニングはしましたか?
流暢さは結果であって、トレーニングの対象ではないことが、このことからもわかると思います。
シノドス英会話の受講生は、6ヶ月後には1秒以内でこのプロセスを完了できるようになります。
しかも、瞬間英作文とは違い、実際の会話でも同じように言葉が出るようになるのです。
なぜなら、この訓練で育てているのは「パターン認識」ではなく、「思考回路」そのものだからです。
「できる文はすぐ出る、できない文はまったく出ない」
瞬間英作文でトレーニングしていて、こんな経験をしたことがあるはずです。
ある文は瞬時に英語が出てくる。
でも、少し変化した文になると、途端につまってしまう。
たとえば、 「昨日、駅で友人に会いました」➡ すぐ言える
「先週、偶然、昔の同僚と再会したんです」➡ 言葉につまる
この違いは何でしょうか?
前者は「パターンとして覚えている」から言えるのです。
後者は「自分で組み立てる必要がある」から言えないのです。
瞬間英作文で育つのは、前者の能力だけです。
それは繰り返し出てくる文型を、反射的に再生する能力です。
でも実際の会話では、後者の能力が必要です。
その場の状況に応じて、自分で文を組み立てる能力です。
しかし、あなたが今まで積み上げてきた努力は、無駄ではありません。
ただ、それだけでは足りないのです。
パターンの蓄積ではなく、思考回路の構築。
これが、あなたに欠けているピースです。
英語を学んできたのに話せない。
問題は知識量ではありません。
あなたの脳が「英語で思考を組み立てる回路」を持っていないだけです。
「文法や単語は知っているのに、言葉が出てこない」
「訳しながら話そうとして、途中で止まってしまう」
それは、頭の中で日本語を英語に変換しているからです。 これは「翻訳回路」であって、「英語の思考回路」ではありません。
実際の会話では、日本語の台本など存在しません。
思考を直接、英語の語順で組み立てる——
この回路がなければ、いくら知識があっても話せないのです。
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