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「使いこなせなくていいIT」で高齢者を守る。誰もが最期まで自分らしく過ごせる社会へ #豊かな未来を創る人

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日本の人口構造は、大きな転換点を迎えています。2040年には高齢者人口がピークに達し、介護職員は約57万人が不足すると推計されています。従来の人の手に頼ったケアモデルが限界を迎える中、デジタル技術への期待が高まっていますが、現場にはリテラシー格差などによるIT導入への障壁が残っています。こうした課題に対して「より良い最期をITで実現する」というミッションを掲げ、独自のテクノロジーで挑むのがHubbit株式会社代表取締役の臼井 貴紀(うすい きき)さんです。徹底した現場主義を経て、高齢者が「覚えること」を一切必要としないツールを開発した臼井さんの行動とその発想の源泉に迫りました。

臼井 貴紀(うすい・きき)

1991年、石川県出身。2014年に新卒でヤフー株式会社に入社し、営業、マーケティング、新規事業開発を担当。2017年にヴァンテージマネジメント株式会社に転職し、サービス立ち上げに携わる。祖父の他界がきっかけで介護の分野に興味を持ち、2019年にHubbit株式会社を創業。現在は、認知症自立度IIIbの利用者にも対応するシニア向けコミュニケーションアプリ「話せる伝言板 ケアびー」を展開し、孤独解消と介護現場の効率化の両立に挑んでいる。

操作不要で家族と繋がる。「使いこなせなくていいIT」の正体

── 臼井さんが開発された、高齢者向けのタブレット「ケアびー」はどのような製品なのでしょうか。

一言で言えば、「高齢者本人が操作を覚える必要が一切ない、置くだけの通信タブレット」です。私たちのタブレットは、平均年齢83歳、認知症自立度IIIb(日常生活に支障があるレベル)の方にも実際に使っていただいています。そうした方々にも無理なくお使いいただけるよう、操作の負担をできる限り減らすことを前提に設計してきました。

一般的なタブレットやスマートフォンは、電話がかかってきたらボタンを押して「受話」をするといった操作が必要です。一方、ケアびーには「自動ビデオ通話機能」があり、離れて暮らす家族やケアマネジャーなど、あらかじめ登録された支援者からビデオ通話が入ると、本人が何もしなくても自動で画面が切り替わり、相手の顔が映ってそのまま会話が始まります。耳が聞こえにくい方のために、音声を自動で字幕表示する機能も備えています。

高齢者、特に認知機能が低下した方にとって、「着信音に気づき、画面の特定の場所に、適切な強さで触れる」という一連の動作は決して簡単ではありません。私たちはテクノロジーによってこの手順そのものをなくすことで、高齢者がITに合わせて頑張らなくても、自然に社会とつながり続けられる環境をつくりました。

ケアびーの利用画面
ケアびーの利用画面(ホーム画面、一人ひとりに合わせたお知らせ機能、自動ビデオ通話機能)

その他には「お知らせ機能」があります。たとえば、デイサービスのお迎えが来る直前に「もうすぐお迎えですよ」と表示したり、服薬の時間に合わせて通知を出したりします。本人が通知に対して画面をタッチして回答すると、その結果は家族のスマートフォンに自動で通知される仕組みです。

これにより、本人は予定を把握しやすくなり、家族にとっては「今日も元気に過ごしている」と感じられ、監視ではない形での見守りになります。ケアびーは医療・介護事業所とも連携しており、ケアマネジャーのケアプランに沿って予定を伝えることも可能です。

高齢者本人に新たな学習を求めず、医療・介護従事者の負担を軽減しながら、持続可能なケア体制を築いていくこと。ケアびーを通じて、私たちはその実践を続けています。

寝たきりの祖父の看取り──「本人の想い」を形にしたかった

── この事業を立ち上げるきっかけは何だったのでしょうか。

私が高齢者向け事業に関心をもったきっかけは、祖父の看取りの経験でした。祖父は寝たきりで、およそ6ヶ月間、言葉を交わせない状態で過ごしました。

当時、特に印象に残っているのは、医療やケアに関する大切な選択が「本人の思いを十分に確認できないまま」進んでいく場面でした。本人の意思を直接たしかめることが難しいため、祖母が「きっとこう望んでいる」と考えながら、人生の最終段階の方針を決めていく。そのプロセスに私は違和感を覚えました。

また、自分の家族の話ではありませんが、介護の現場で日々向き合い、心身ともに疲弊している家族がいる一方で、現場から離れて状況を十分に知らない親族との間で方針をめぐるすれ違いが生じるケースも耳にしました。

これらは、情報の伝達がうまくいっていないことから生まれる社会的な課題ではないか。この情報の不均衡を少しでも解消し、たとえ言葉などの意思疎通の手法を失ったとしても本人の尊厳が守られる仕組みをつくりたい。それが、私の活動の原点です。

── その想いは具体的なアクションとしてどのように発展していったのですか。

高齢者向け事業を自分でつくろうと思い、当時勤めていた会社の新規事業コンペで「生前葬」の事業を提案しました。結果としてこのときの提案は選外となりましたが、この領域に取り組みたいという思いが薄れることはありませんでした。その後、会社を立ち上げ、「IT版のエンディングノート」に取り組むなど、高齢者向けの事業を模索する中で、ケアびーを開発しました。

介護の現場で見つけた「教育」の限界と、システムが果たすべき役割

── 臼井さんは、起業後にまず実際の介護の現場に身を置かれたとうかがいました。

はい。高齢者の方々のリアルな生活や身体状況、そして介護職の方々の日常を肌で知るために介護施設に3ヶ月間住み込ませていただきました。

私の祖母は97歳で今もデジタル機器を使いこなしています。当初は「なぜ祖母はデジタル機器を使えて、他の高齢者の方は使いこなせないのだろう」という純粋な関心から現場に入ったのですが、多くの事例を観察して分かったのは、「祖母がいかにイレギュラーな存在であるか」という事実でした。

── 現場では具体的にどのようなアクションを起こされたのですか。

施設で入居者の方々を対象に、何度も「スマホ教室」を開催しました。そこで私が実感したのは、「記憶を保持することの難しさ」「教え続けることの難しさ」でした。教室でスマートフォンの操作を何度も丁寧にお伝えしても、翌日にはまったく同じ質問を受けることがある。その現実に直面しました。教える側も人間ですので5回目くらいまでは笑顔で接することができても、それを超えると「また同じことを聞かれる」と心理的な負荷を感じてしまう。そして気づかないうちに、相手を少し避けるような態度を取ってしまう場面もありました。

これは教える側が悪いわけでも、覚えられない側が悪いわけでもありません。「好奇心を持ってください」と言葉で促しても、それだけで自然に生まれるものではない。そう考えたときに、従来の教育型の「老化しても覚えてもらう」というアプローチだけでは、すべての高齢者の状況に十分寄り添いきれていないのではないか、という課題が見えてきました。

── そのアクションが、現在の製品やサービス設計に直結しているのですね。

そうです。人間の持つ記憶力には当たり前ながら限界があるので、それだけに頼るのではなく、システム側で解決するしかないと考え、本人の学習ステップを必要としない「使いこなせなくていいIT」というケアびーのコンセプトにつながりました。

現在、国を挙げてデジタル化が推進されていますが、介護の現場においては依然としてリテラシーの壁が厚く、情報の格差が社会的孤立を招いています 。本人が「頑張って使う」必要のない、生活環境に溶け込んだ温かなテクノロジーこそが、孤立を食い止める鍵になると考えています。

ケアびーを利用する様子
ケアびーを利用する様子

── ITを現場に実装していく上で、他にどのようなステップを歩まれてきたのでしょうか。

私たちの具体的なアクションは、単にデバイスやアプリを配ることではなく、介護現場のプロセスそのものにケアびーを組み込んでいくことです。

コロナ禍以降、介護現場でも「オンライン担当者会議」や「遠隔モニタリング」が法的には可能になりました。しかし、実際には高齢者本人がネット環境を持っていなかったり、機器を扱えなかったりするために、本来はオンラインでもよかった対応業務がまだまだ訪問になっています。そこで私たちは、ケアびーの簡便さと医療介護事務所との連携を活かし、対面でなくても可能な業務をオンライン化することで、医療・介護従事者の負担を減らす試みをしています。

孤独や不安を解消し、高齢者が「頼られる喜び」を感じられる未来へ

── 臼井さんは、今後どのような新しい取り組みを考えていますか。

ケアびーの画面上にAIキャラクターが登場し、高齢者本人に語りかける機能を開発しています。ただ、いわゆる話し相手としてのAIとは少し異なり、これまでの会話の内容などを踏まえて、AIのキャラクターが「おばあちゃん、ちょっと相談に乗ってよ」と頼ってくるような設計にしています。

── 「逆に頼られる」というのはユニークなアプローチですね。どのような意図があるのでしょうか。

既存の高齢者向けサービスの多くは、本人の能力低下に焦点を当て、「支えられるべき存在」として捉えがちです。しかし、介護の現場で感じたのは、高齢者の方々が誰かに必要とされ、頼られたときにこそ、いきいきと力を発揮するということでした。

たとえば、「おばあちゃん、友達と喧嘩しちゃったんだけど、どうすればいいかな」とAIに相談される。そうしたやりとりを通じて、自分が必要とされているという手応えを感じることが、生きがいや認知機能への良い刺激にもつながるのではないかと考えています。

ケアびーを利用する様子2
ケアびーを利用する様子

── そのほかにも今後力を入れていきたい取り組みはありますか。

在宅介護の環境をより安心できるものにする取り組みに力を入れていきたいと考えています。具体的には、最新のIoT機器、たとえば、置くだけで脈拍や呼吸、睡眠の質を測定できるセンサーなどとケアびーを連携させることを進めています。

こうしたテクノロジーと組み合わせることで、自宅にいながら日々の体調変化を把握しやすくなります。取得したデータは家族や医療・介護職とも共有できるため、離れていても状態を見守ることができ、異変の兆候にも早めに気づけるようになります。

自宅にいながら、施設に近い安心感と見守り体制を整える。それを、できるだけ導入しやすい形で実現することが目標です。施設入居を選ばなくても、住み慣れた家で最期まで穏やかに暮らせる。そうした選択肢が特別なものではなく、あたりまえになる社会を目指しています。

── そうしたアクションの先には、どのような社会の姿を見据えているのでしょうか。

今後、身寄りのない高齢者や老老夫婦が増えると言われており、自分で決めることが難しくなったときにその人の思いや希望を代弁する人がいないケースが増えていくことが想定されます。

私たちの最終的なミッションは、家族の有無に関わらず、誰もが自分らしく最期まで過ごせる社会の基盤を、ITによって築くことです。

「より良い最期をITで実現する」。そのビジョンのもと、本人の意思がきちんと伝わり、尊重される環境をテクノロジーで支えていきたいと考えています。高齢者が無理に操作を覚えなくても、自然に家族や社会とつながり続けられること。そして、大切な選択の場面で「本人不在」にしないこと。そうした社会の実現に向けて、これからも現場の声を起点に取り組みを重ねていきます。

\ さっそくアクションしよう /

ひとりでも多くの人に、地球環境や持続可能性について知ってもらうことが、豊かな未来をつくることにつながります。

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