「この10年は、組織文化の変革と共に歩んだ困難の歴史でした。『超ハードワーク』と呼ばれるような状態ではなく、バランスの取れたデジタル・クリエイティブの人材を育成し、彼らが活躍できるような組織を目指してきました。
それに呼応するように、さまざまな人材がアクセンチュアに参加してくださり、当社ならではといえる『ソング』や『インダストリーX』といったビジネスラインを拡大してきた流れがあります」(江川氏)
「人員増・組織拡大は継続の方針」アクセンチュア新社長・濱岡大が見据える“変革のプラットフォーマー”への道筋
2025年11月、10年にわたりアクセンチュアを率いてきた江川昌史氏が、そのバトンを渡す決断を下したと発表された。急速に到来する“AIの時代”を見据え、次の10年の成長を託した判断だ。
後任として代表取締役社長に就任するのは、1998年に入社して以降、変革の現場に立ち続けてきた濱岡 大氏。新体制のアクセンチュアは、どのような姿を目指すのか。2025年11月27日に行われた新社長就任記者会見の様子をお届けしよう。
アクセンチュア
代表取締役会長(12月1日 就任予定)兼 アジアパシフィック共同CEO
江川昌史氏(写真左)
1989年、慶應義塾大学商学部卒業後、アクセンチュアに入社。2000年、パートナー就任。03年には消費財業界向け事業責任者に就任。08年4月より製造・流通本部 統括本部長、08年10月より執行役員 製造・流通本部 統括本部長を歴任。15年9月、代表取締役社長に就任。20年3月よりグローバル管理委員会(グローバル・マネジメント・コミッティ)メンバー、24年9月よりアジアパシフィック共同CEOおよびグローバル経営委員会(エグゼクティブ・コミッティ)メンバーに就任(いずれも現職)。25年12月、代表取締役会長に就任予定
代表取締役社長 (12月1日 就任予定)
濱岡 大氏(写真右)
1998年、慶應義塾大学商学部卒業後、アクセンチュアに入社。2010年12月、製造・流通本部 マネジング・ディレクターに就任。19年5月より製造・流通本部 成長市場 小売事業 統括責任者、21年12月より執行役員 ビジネス コンサルティング本部 営業責任者、23年6月より常務執行役員 ビジネス コンサルティング本部 統括本部長を歴任。2025年12月、代表取締役社長およびグローバル管理委員会(グローバル・マネジメント・コミッティ)メンバーに就任予定
江川氏「今こそ、次の10年にバトンを渡す絶好のタイミング」
江川氏はまず、自身が社長に就任した10年前について、「テクノロジーがBtoBビジネスの世界で飛躍的に発展するとは考えられていなかった時代だった」と語った。
しかし、あらゆる可能性を見据えた上で、「これからのビジネスシーンにおいて欠かせないものになるだろうと考え、『デジタルテクノロジーの分野でNo.1を目指す』と宣言してきた」と、社長就任時に掲げた方針を振り返る。
結果、国内外におけるDXの潮流の加速を受けて、アクセンチュアは磐石なポジションを確立。その存在感を高めてきた。江川氏は、社長として駆け抜けてきた10年間を次のように説明した。
10年の年月を経て、アクセンチュアの社員数は5倍、売上は7倍へと拡大。江川氏からも確かな手応えがうかがえる。
次の10年もさらなる成長を目指すとした上で、社長のバトンを渡す決意について、胸の内を明かした。
「これからわれわれが取り組んでいくべきは、AIの時代への対応です。AIをはじめとする新しい技術に対応し、お客さまの変革のパートナーであり続けることができるかどうかが、極めて重要なテーマに違いありません。
今こそ次の10年にバトンをつなぐ絶好のタイミングであると考え、濱岡 大を代表取締役社長に任命しました。
濱岡と私は約25年の間、共に仕事に取り組んでまいりました。各社のCEOの方々と日々激論を交わし、お客さまの課題を一つずつ解決して成果を出していく。そういった彼の姿勢が、難しいAI時代を乗り越えるために必要だと考えています」(江川氏)
新社長・濱岡氏「スピーディーに成果を支援する『変革のプラットフォーマー』を目指す」
バトンを受け取る新社長・濱岡 大氏は、新卒でアクセンチュアに入社して以降、主にビジネスコンサルティングの領域で手腕を振るってきた。多様な業界の経営者とディスカッションを重ねてきた経験の中で、「リスクを恐れず、新しいことにチャレンジする姿勢」の重要性を感じてきたと強調する。
その上で、これからのアクセンチュアが目指す姿について宣言した。それが「変革のプラットフォーマー」だ。
「今後、ビジネス市場の変化はさらに加速していくでしょう。これまでアクセンチュアは、お客さまに伴走することで変革をお手伝いしてきました。これからは、そのスピードをより上げていく必要があります。
新たなプロジェクトで成果を求めるためには、さまざまなリソースの手配が必要になります。それをスピーディーに行うために、アクセンチュアが持つノウハウ、ネットワークを活かし、パートナー企業を含めたコラボレーションを促していく。そんなプラットフォーマーでありたいと考えています」(濱岡氏)
そのためにも、コンサルティングのみならず、ソングやテクノロジーのメンバーも含めて、より一体となって進んでいきたいと意気込む。
「変革のプラットフォーマーを目指すこと、これはアクセンチュアにとって大きな挑戦です。新しい挑戦には失敗や障壁がつきものですが、ここを突破することができれば、どんなにマーケットが変化しても戦っていける組織になると信じ、取り組んでまいります」(濱岡氏)
相次いだ企業買収。今後も人員増・組織拡大の方針を継続
変革のプラットフォーマーを目指すうえで、重要となるのが多様な人材やパートナーの確保だろう。事実、2025年5月にデジタルサービス開発に強みを持つゆめみを、8月にはSIerであるSI&Cを買収。ゆめみに関しては、12月1日に合併が決定している。
テクノロジー人材を中心とする増員の動きに対して、濱岡氏は「今後もチームの拡張は継続していく」との方針を示した。増員を積極的に行わない企業もある中で、アクセンチュアは引き続き採用を行い、価値を出せる人材へと育成していきたいという考えだ。
しかし、組織が拡大すればするほど機動力が低下するリスクもつきまとう。濱岡氏もその点について触れ、「お客さまのスピードと乖離することなく、変革を支援する速度を磨き上げていきたい」と意気込んだ。
ゆめみも一員。「ソング」とはどんな組織なのか
質疑応答では、会見中に何度か触れられた「ソング」についての質問が投げかけられた。
ソングとは、アクセンチュアにおける主要なビジネスラインの一つ。エンジニアtypeにも幾度となく登場してきたゆめみも、このソングの一員だ。事業成長戦略を軸に、AIや生成AIといったテクノロジーと、高いクリエイティビティーの融合を通じて顧客の成長実現を目指すとされている(参考)。
一体、このソングとはどのような組織なのか。そんな問いに濱岡氏は次のように答えた。
「ソングにはクリエイター、コンサルタント、テクノロジーなど多様な人材が所属しています。『ソング』という名前から異色の組織と捉えられやすい傾向にありますが、さまざまな組織や人材の協働を加速していく上で、共にプロジェクトを推進する一員であることに変わりはありません。
それぞれの人材の良さを最大限に活かしながら、コラボレーションしていきたいと考えています」(濱岡氏)
過去の成長体験に依存しすぎないという覚悟
1時間強の記者会見を通して濱岡氏が度々口にしたのが「スピード」と「新しいことへの挑戦」の重要性だ。
これまでアクセンチュアは専門性を磨いてのアプローチを強みとしてきたが、今後は過去の成功体験に依存しすぎない体制を意識したいと述べた。
「同じやり方を続けていると、どうしてもこれまでの成長で培ってきた成功体験にとらわれてしまい、進化が止まってしまう可能性があります。
マーケットやクライアントから求められるスピードがさらに加速していく中で、われわれの企業規模が大きくなってもそれに応えていくためには、マインドセットを変えていくことが必要だと強く意識しています」(濱岡氏)
加速し続ける変化のスピードに対応し、課題の設定から明確なゴール設定、それの実現までを、多様な人材や組織とのコラボレーションで支援する。そんな「変革のプラットフォーマー」を目指す新体制のアクセンチュア。今後も拡大予定とされる各組織がどのように進化していくのか、今後も注目していきたい。
文/秋元 祐香里(編集部)
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