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Ruby父 まつもとゆきひろ「出社させたがるのは、マネジャーの怠慢でしかない」 - エンジニアtype | 転職type
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Ruby父 まつもとゆきひろ「出社させたがるのは、マネジャーの怠慢でしかない」

働き方

世界的なビッグテックでの出社回帰の流れを受け、日本でもLINEヤフーなど、出社頻度を増やす企業が出てきた。

「自然な会話や雑談の中から、新しいアイデアが生まれる」「顔を合わせることでチームワークが高まる」そんな言葉とともに、多くのエンジニアが再びオフィスへと呼び戻されている。

だが、この潮流を「ソフトウエア開発企業にとっては、明確な後退でしかない」と一刀両断するのが、プログラミング言語「Ruby」の生みの親・まつもとゆきひろさんだ。

なぜエンジニアにとって、オフィスは「非効率な場所」になり得るのか。まつもとさんに、話を聞いた。

プロフィール画像

Rubyアソシエーション理事長
Ruby開発者
まつもと ゆきひろさん(@yukihiro_matz

プログラミング言語Rubyの生みの親であり、一般財団法人Rubyアソシエーション理事長。株式会社ZOZOやLinkers株式会社、株式会社LIGなど複数社で技術顧問などを務めている。オープンソース、エンジニアのコミュニティ形成などを通じて、国内外のエンジニアの能力向上やモチベーションアップなどに貢献している。島根県松江市名誉市民

10分話しかけられるだけで、半日無駄になる

ーーなぜまつもとさんは「出社回帰」について否定的なのでしょうか?

ソフトウエアを開発するときって、基本的にはコミュニケーションを「最小」にしたいんですよ。

オフィスで仕事をしていると、「まつもとさん、ちょっといいですか?」って声を掛けられることがありますよね。やれ質問したいとか、資料を確認してほしいとか。

もちろん、人間関係もありますから断るわけにもいきません。一旦話を聞いて、一段落してから仕事を再開する。でも、そこから元の集中状態に戻るのに半日くらいかかるんですよ。

シューって気持ちが抜けてしまうというか、「さっきまで完全にゾーンに入ってたのに……」という喪失感がすごい。これが、本当にキツいんですよね。

たった10分程度の質問のために、半日が潰れてしまう。これでは生産性もへったくれもありません。

まつもとゆきひろさんがインタビューに答える様子

ーーとはいえ、業務中のコミュニケーションも重要ではありませんか?

「今はコミュニケーションに捧げる時間だ」と認識できているタイミングであれば良いんですよ。

問題なのは、何でも無いときに後ろから急に話しかけられて、思考を強制中断させられることです。これで生産性が激落ちするのが、嫌なんです。

気になることがあったら自分の方から問い合わせるので、そっちから割り込まないでほしいといった感覚に近いですね。

自分がフォーカスしたいときは徹底して集中し、フォーカスしなくても良いタイミングで質問などに受け答えする。要は、自分でコントロールできるかどうかです。

出社させたがるのは、マネジャーの怠慢

ーー「リモートワークだと創発性が発揮されない」「対面だからこそアイデアが生まれる」といった声をよく聞きますが、どうお考えですか?

そんなの嘘ですよ(笑)

「突発的なブレストでアイデアが生まれる」こと自体は否定しません。でもそれはあくまで例外的なラッキーパンチであって、仕事の基本形ではないはずです。

まつもとゆきひろさんがインタビューに答える様子

「アイデアを出したいから、別途時間を設けてそのタイミングで話し合いましょう」というのが、本来の健全な進め方だと思います。

ですから「仕事はみんなでワイワイやるものだ」みたいな風潮は、どうかと思いますね。少なくとも、ソフトウエア開発ではありえない。ソフトウエア開発は、一人一人のフォーカスで成り立つ仕事ですから。

そもそも「リモートだとイノベーションが生まれない」なんて、マネジャーの怠慢を正当化するための言い訳でしかないと思います。

ーー怠慢、ですか。

マネジャーはメンバーを管理するのが仕事ですから、自分の目の届く範囲にメンバーがいないと不安になる。「家にいるとサボっているかもしれないけれど、オフィスにいれば働いている」と、安易に判断できるわけです。

ですが、メンバーが「働いている姿」を見て自分が安心感を得るためだけに出社を強要し、結果として会社全体の生産性を下げるのは、ほとんどの場合において正当化されません。

メンバーを出社させるための大義名分として「リモートだとイノベーションが生まれない」「対面のコミュニケーションが重要だ」と言っているだけに過ぎないのではないでしょうか。

でもそれって、怠慢ですよね。メンバーを信頼して、成果で評価する努力を放棄している。これは本当に良くないと思います。

ーーリモートであろうと、やり方次第で十分にイノベーションを生み出せる、と。

もちろんです。こういった話になると、いわゆる「偶発的なコミュニケーション」の価値を強調する方がいます。喫煙所での会話や飲み会でのやり取りといったものです。

でもそれは、裏を返せば「その場にたまたま居合わせた人」しか情報にアクセスできないということでもある。喫煙所に行かない人や、飲み会に参加しない人は蚊帳の外になってしまいます。これは情報の非対称性を生みますし、純粋に不平等です。

その一方で、きちんと整備されたリモートワーク環境は、あらゆる情報に社内の誰もがアクセスできます。個人的には、こうした透明性の高い状況で多くの人が議論に参加して知恵を集める方が、より多くのイノベーションが生み出せると感じますね。

明文化されてない企業文化は障害でしかない

ーーまつもとさんクラスの方であれば「ゾーンに入れるからリモートがいい」という意見も納得できそうですが、まだ経験の浅い若手の場合はどうなのでしょうか。

邪魔されたら集中力が落ちるというのは、どんなレベルの人でも同じことですよ。若手だろうがベテランだろうが、関係ありません

ソフトウエア開発って、一度に頭に入れておかなくてはいけないコンテキストがものすごく多いんです。脳内で複雑なパズルを組み立てているようなもので、そこに横槍が入るとガラガラと崩れてしまう。これは致命的なロスになります。

ーー組織の一員としての役割というか、人と人との距離感も大事な気がするのですが……。

いや……正直、僕は「別にどうでもいいけどな」って思っちゃいますけどね(笑)

まつもとゆきひろさんがインタビューに答える様子

まあ、そういうウェットなつながりが欲しい人は、どうぞ求めてくださいって感じです。ただ、その価値観を全員に押しつけないでほしい(笑)

それに多くの企業において、企業文化は明文化されていない暗黙の知識の集合体であるケースが多いです。ただそうした「暗黙知」に依存した文化は、新人にとって一番習得しづらいものでもありますよね。

企業文化や一体感は、空気ではなく「言語化」によってつくられるべきです。思想を明文化して定期的にチームで振り返るなど、リモートでも企業文化を育むことは十分に可能ですよ。

撮影/Kiiimon 岸本茂樹 取材・文/今中康達(編集部)

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