しあわせのかたち
NTR堕ち薄暗い地下室の中、蝋燭の僅かな光が二人の男女をうっすらと照らし出す。彼らは衣服を奪われ両手を体の後ろに回され、縄で固定されて床に転がされていた。
「どうして、こんなこと……。」
赤毛の少女──スレッタ・マーキュリーが弱々しく呟いた。その背後に転がされた緑髪の少年──エラン・ケレスは未だ目覚めていない。まるで人形のように横たわっているだけだ。
「どうして、だって?」
エラン・ケレスと同じ顔をした青年が嗤う。
「決まってるじゃないか。」
「お前等を虐めてやろうって、それだけの話だろ。」
「お、お、おかしいですよ そんなの!」
スレッタは怯ながらも言葉を返すが、少年は動じなかった。
「うるいさいなぁ。自分の立場くらい、理解しろよ。」
「がはッ……。」
一度、二度、三度。
青年が勢いよく少女の腹を蹴り上げる。磨き上げられた革靴が薄い皮膚を無視して内蔵に打撃を与えた。スレッタの顔が大きく歪む。だが、彼はそれで満足しないのか、更に足を振り上げた。
しかし、その一撃は寸前のところでピタリと止まる。彼の肩に手が置かれたからだ。
振り向くとそこには彼と瓜二つの顔をした少年が立っていた。
「そこまでだよ。」
「まさか自分で計画したこと、忘れちゃったの?」
少年の咎めるような声に青年は従い、その足を地面に戻した。
「君の目的はこいつらを"しあわせ"にしてやることであって、痛めつけることじゃない。そうでしょ?」
「……その為にお前を呼んだんだ。少し興が乗りすぎたってだけだろ。」
突然現れた3人目の"エラン・ケレス"が床に転がる彼女の元に腰を下ろし語りかける。
「ゴメンね。痛かっただろう?もう大丈夫だから。」
「……えらん、さん?」
「あぁ、もう大丈夫だよ、スレッタ。」
エラン・ケレスは彼女の頬を撫で、彼女の涙を指で拭う。
(あぁ、よかった、えらんさん、ぶじだったんだ。)
彼女の想い人は未だに目覚めていないというのに、混乱する脳味噌はあり得ざる答えを演算する。
エランのオリジナルはやわらかな笑みを浮かべ、そっとスレッタに語りかけた。
「だから、これからいっぱい気持ちよくなろうね。」
その一言は、地獄の始まる音だった。
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ぴちゃぴちゃとした水音がして、エラン・ケレスは瞼をゆっくりと開いた。覚醒した脳髄を最初に刺激したのはペイル寮の硬いマットレスではなく、コンクリートの冷たい感覚だった。
ここはどこだろうか、いつまでねていたのだろうか、そう考えて体を起こそうとして現在の異常な状況に気がついた。手が後ろに回され、縄で縛り上げられているせいで身動きがうまく取れないのだ。それでもエランは眼球を動かし耳を傾け情報を少しでも集めようとする。
(いつの間に脱がされたんだ……?)
全裸の自分に、腕に巻かれた縄。
自分の様子に流石に戸惑いが隠せない。この状況はどう考えても異常だ。考えがうまくまとまらない。そうこうしているうちに突然、鋭い快楽がエランを襲ってきた。
「なっ……。」
思わずエランは絶句した。視線を下げればそこにはスレッタ・マーキュリーの顔があったからである。先程から聞こえてきたものは彼の股座から聞こえる水音と女の吐息だった。
彼女は一心不乱にエランの男性器を口に含んでいる。舌先で鈴口を舐められると彼は背筋にぞくりとしたものがこみ上げるのがわかった。
「スレッタ・マーキュリー、いったい、どうして……。」
エランの問いには答えず、スレッタは口淫を続ける。
一体、何が起こっているのか理解できないまま、エランは彼女にされるがままだった。スレッタの小さな口に収まりきらないそれは、彼女が動く度に刺激を感じ取る。その光景にエランは唾を飲み込んだ。やがて限界が訪れたことを感じ取ったのか、スレッタの動きが激しくなる。熱が高まり快楽が彼の全身を貫いた。
その瞬間、熱い飛沫がスレッタの口内に降り注いだ。スレッタはその苦味に一瞬だけ顔を歪めたが懸命に飲み込んだ。口を離し、唇から溢れ出した精液を舌で拭い取り、そうして今度はエランの陰茎を口に咥え、刺激を与えようとする。その異常な光景ににエランは言い知れぬ興奮を覚えた。
そんな時だ。
不意に、頭上から声が降ってきた。
「あーあ、こんなに出しちゃってまぁ。」
「気持ちよかったんだ。前任者の僕は本当にヘ・ン・タ・イさんだね。」
自分と同じ顔をした見知らぬ男が側にしゃがみ込むと、スレッタの頭を掴んで無理やり男性器を引き抜いた。彼女の口からつぅっと唾液が糸を引いて、下腹部から熱が引いていった。
「スレッタ、よくできました。初めてには上手だったよ?」
5番目の強化人士は優しく微笑むと、スレッタの顎を手で支え、ゆっくりと彼女の頭を撫でた。まるで恋人同士のようなやり取りを見てエランは眉をひそめる。
「……どういうこと。」
エランの言葉に5番目はくすりと笑って答えた。
「何って?慰問だよ。」
「ほら一応君のお陰でエアリアルが手に入りそうだし、前祝いも兼ねてるから。」
「わけがわからない、説明をしてくれないか。」
「うーん、4番目は理解力が低いのかな?ま、いいや。ヒャクブンはイッケンにシカズだもん。」
5番目の強化人士はそう言い終わると、手に隠し持っていた小さな白い機械を見せつけてきた。丸みを帯びたデザインで中央にはこれ見よがしに大きなボタンがついている。
「これなーんだ?」
明るい調子で5番目が問いかける。しかしこんなものは見たことがない。
「解らない。」
「素直だね、そういうの嫌いじゃないよ。」
じゃ、実演してみようか。そういうと5番目は手に持った機械を見せつけるようにしてエランの顔面の直ぐ前でその突起を押し込んだ。
「あっ、あぁぁッ!?!?」
「スレッタ!?!?」
途端にスレッタが甲高い悲鳴を上げた。彼女の体が大きく跳ねる。見れば彼女の下腹部からは純白のコードのようなものが伸びている。それは彼女の太ももにベルトで固定され、別の機器に繋がっていた。恐らくは5番目があのボタンで彼女の体内にある何かを遠隔操作しているのだろう。エランは必死にスレッタに呼びかけるが、彼女は体を震わせ虚ろな目で小さく喘ぐだけだ。
「やめてくれ!彼女に何をしたんだ!」
「えぇ?何言ってるの?"僕"ならわかるよね、これは"幸せ"になる為のものだよ。」
「"幸せ"だって?」
エランは耳を疑った。目の前にいる男はいったい何を考えているのだろうか。
「そうだよ、しあわせ、幸福……オリジナルはパッピーエンドをご所望だ。だから、ね。」
スレッタ・マーキュリーは全く抵抗する素振りを見せることはなく、5番目にその身を預けている。彼がコードを引っ張るとちゅぽんと音がして、小さな、細長い球形の機器が蜜口から床に転がり落ちた。それは体液と蝋燭の光に照らされてテラテラとした輝きを放っている。
「気にすることはないよ、4番目も喜んでるんだから。」
そして彼女の太ももからベルトを外した5番目のエランはスレッタの体を反転させ、彼自身と向かい合うような体勢に移動させた。
そのまま優しく抱きしめるような形で彼女の背中に手を回し顔を近づけ唇を触れ合わせる。最初は触れ合うような優しいキスだった。だが徐々にそれは深いものへと変わっていく。
「あっ……んむっ……♡」
互いの唾液が混ざり合い、淫靡な音を立てながら口づけを交わす2人の姿は酷く官能的であった。エランはその様子をただ見ながら己の無力さを感じることしかできなかった。
やがて終わりがやってきて、どちらともつかない銀色の糸を引きながら互いの唇が名残惜しそうに離れていった。
「ありがとう、スレッタ。とっても気持ちよかったよ。」
「……。」
スレッタは何も答えない。けれど5番目は全く気にする様子もなく笑みを浮かべたままの表情を保っていた。
そうして、彼はスレッタの体を4番目の方に向き直させた。彼女の顔はすっかりとろけていて、口元は唾液でびしょびしょに濡れていた。
「さぁどうする?もう一人の僕。」
「……。」
「このまま見ているだけならそれでも構わないけど、君はどうしたい?」
「僕は……ぼく、は……。」
エランは俯きながら言葉を濁した。葛藤しているのだ。その様子を見た5番目は立ち上がると制服のズボンのポケットからナイフを取り出し、エランの縄を切り捨てた。
「なんで。」
「だって、そっちのほうが楽しいでしょ?」
にっこりと5番目のエランが微笑んだ。
「ここから逃げるならそれでもいい、自由になれるんだ。でも彼女は僕らのものになる。……君はどうするのかな?」
ほら、早く決めてよ。5番目がエランの耳元でそう語りかけた。エランはしばらく黙っていたが、やがて決心がついたのかゆっくりと顔を上げた。
「スレッタ・マーキュリー……君を愛している。」
エランはそう言うと、スレッタの体に覆いかぶさった。そしてそのまま自らの剛直を彼女の蜜壺に埋め込んでいった。
ずぷり、という音と共にエランの男根が根元まで埋まっていく。
「あぁっ……ッ!」
「スレッタ、ごめん……」
一度に挿入したせいで押し広げられ、破れた処女膜から流れた血が蜜口を汚していく。スレッタはその痛みに耐えるかのようにぎゅっと目を瞑っている。その目からはぽたり、ぽたりと涙が落ちていった。