無題
水星の魔女
ベルメリアと4号(ベルメリア視点)
「終わったわ。」
ベルメリアの合図とともに、調整用のイスの光が消えた。
いつもなら強化人士4号はすぐに体を起こすが、今回は中々起き上がる気配がない。
「4号.....?」
ベルメリアが様子を確認すると、4号はイスにぐったりと横たわったままだった。顔色は明らかに悪く、荒い呼吸をしながら虚空を見ている。
「大丈夫だから...」
「ちょっと診るわよ。」
強化人士はガンダムに乗るために脳などをいじっている。そのため定期的に調整しなくてはならない。その調整もガンダムの搭乗回数など時々で手順や数値を変える必要がある。少しでも間違えれば、この子はもう使えなくなってしまう。
瞳孔、咽喉、首の脈、体温、肌にパーメットの模様が勝手に浮かび上がってないか、手早く細かく触診する。体調は崩しているが、調整に不備があったわけでは無さそうだ。
「風邪のようね。」
これなら今後もまだ大丈夫そうだ。
「よかったね、ただの風邪で。」
虚空を見てた4号が、焦点の合わない目でベルメリアをみつめた。ちくり、とその一言がベルメリアの心に小さな針となってささった。