能楽の二人
VerdictDay10日目—百鬼夜行連合学院—
ザッ…
ヒナ「……………不思議」
“………何が?”
ヒナ「誰も銃を持っていない。かと言ってヴァーディクターズがいる訳でもない」
“……………ニヤ……”
イロハ「陰陽部に行ってみますか?」
“そうだね。少し話を聞きたい”
イブキ「ニンジャのお姉ちゃんたちは~?」
イロハ「もう少し待ってください、イブキ。必ずあの人たちに会いに行きますから」
イブキ「はぁ~い」
一行が再び歩みを始めようとしたその時、どこからともなく大きな怒声が響いたのだ。
ベベンッ♪
??「待たれェェェエエエイッ!!!!」
“!?”
イロハ・イブキ「「!?」」
ヒナ「………今度は何……」
ガッガッガッガッガッガッガッ!!
バッ
ズザザァッ!!
??「そこ行く御仁たちは一体何者かァ!?なに故そのような物騒な物を持ってこの地を跋扈しているのか!?」
一行の前に姿を現したのは、下駄を履き、真っ赤な着物に身を包み、地面を引きずる程に長く真っ赤な髪を垂らし、二丁の火炎放射器を持ち何やら顔全体に赤色のメイクのようなものも施している少女と、同じく下駄を履き、白を基調とした花柄の着物におかめの面を被った琵琶と突撃銃を持った少女の二人がいた。恐らく、百鬼夜行連合学院に通う生徒なのであろう。
”君たちは……?”
ベベンッ♪
猩々「私は、この百鬼夜行連合学院能楽部で演者してる『猩々』!!」
牧馬「ウチは……そやなぁ、猩々ちゃんの一番の相方、『牧馬』や。よろしゅうな~(ヒラヒラ)」
イブキ「かっこい~…(キラキラ)」
“ねぇ~……ちょっと演目見てみたいかも”
イロハ「前に来た時は見れませんでしたからね」
ヒナ「(ガチャ)もう少し緊張感を持って欲しい。この誰も銃を持っていない百鬼夜行で、二人は銃を持っている………。それはどういうことか……」
イロハ「………はぁ~(カチャ)」
イブキ「むんっ!!(カチャ)」
牧馬「血の気多いなぁ~。も少しウチらの話聞いてくれへん?そない横暴やと………ほら、お天道様に睨まれんで?」
猩々「『牧馬』、それはまだ気が早いぞ!」
牧馬「あっ!そぅやったなぁ~うっかりしとったわぁ~。………そちらさん、シャーレの先生やろ?」
“うん”
牧馬「提案なんやけど、あんたらの持ってはるその銃、ここに置いて行ってくれへん?今はまだやけど、それ、もぅ違法になんねん。あっ、ウチらのこれもなぁ~」
イロハ「………先生、どうしますか?(ヒソッ)」
ヒナ「やろうと思えば強行突破はできる(ヒソッ)」
ボォオッ!!
猩々「内緒話とはいただけぬなァ!!」
イブキ「わわっ!?」
イロハ「イブキ、もう少し下がってください…!」
イブキ「う、うん…!」
牧馬「怪我させたらアカンでぇ『猩々』ちゃん。……あっ!すまへんなぁ。『猩々』ちゃん、ちょ~っとばかし気ぃが短いんや。ウチらもあんま乱暴したないし。…………さっ、どないする?」
ヒナ(ここで銃を棄てれば、この百鬼夜行で面倒ことを起こさなくて済む。でもそれは……)
ヒナ「彼女の阻止を、放棄する理由にはならないわよね」
イロハ「ヒナ委員長……」
ヒナ「えぇ、もちろん……」
牧馬「………そかそかぁ。賢明な判断とちゃうなぁ~」
ヒナ「徹底抗戦よ」
ボッ…ボボッ…
猩々「なんと言う暴挙であるか!今やそのような行いは誰も望んではいない!!御仁たちこそ、真の悪鬼ではなかろうかァ!!」
ボォォオオッ!!
ヒナ「イロハ、先生を!」
??「御免!!」
ボヒュンッ!!
猩々「な、なに!?」
牧馬「『猩々』ちゃぁ~ん素が出とるで」
猩々「はうっ!?」
タッタッタッタッタッタッタッ!
牧馬「抜かったなぁ~。逃げられてしもた」
猩々「ぬぐぁあ~!!!」
牧馬「大丈夫やて。サンちゃんもキヨちゃんも、こないなことで『猩々』ちゃんのこと嫌いになったりせぇへんから」
猩々「くぅう~!」
—忍術研究会の隠れ処—
タッタッタッタッタッタッタッ!
イロハ「はぁ…!はぁ…!はぁ…!はぁ…」
“あ、ありがとう……。たすかったよ…。ミチル、ツクヨ、イズナ……!”
ミチル「ドンパチが始まっちゃう前でよかったよぉ~…!」
ツクヨ「ま、間に合って、よかったです…」
イブキ「ニンジャのお姉ちゃんたちーっ!!」
ギュー
イズナ「お久しぶりでござる。イブキ殿!」
ヒナ「………あの二人は?」
ミチル「多分もう聞いたと思うけど、あの二人は能楽部の子たちでさ。けっこー武闘派でさー。………百花繚乱の切り込み隊長とバチバチにやり合ったののはビックリしたよぉ~」
“………百花繚乱のみんなは?”
ミチル「みぃ~んな、銃を置いちゃった。置かざるを得なかった」
“置かざるを得なかった…?”
ミチル「気が付いたら四面楚歌。誰も銃を握ることを望んでなかった。だからナグサは、銃を置く判断をせざるを得なかったんだよ」
ツクヨ「最初は、百花繚乱紛争調停委員会に声が掛かっていたようなんです。ヴァーディクターズの傘下に入れって。傘下に入って、ヴァーディクターズの指示に従い、治安維持を行うようにと…」
“それをナグサが突っ撥ねた?”
ミチル「そ。最初こそ衝突があったんだけど……それこそ、ホントに四面楚歌でさ。百花繚乱を見るみんなの目がヤバイの何の……」
“それで銃を……”
ツクヨ「ヴァーディクターズの影響力の強さを実感しました……」
ヒナ「生徒会…………陰陽部も?」
ミチル「うん。交換条件付きでね」
イロハ「交換条件?」
ミチル「ヴァーディクターズの要求を素直に呑む代わりに、今まで通り学院の運営をさせてほしいってね。向こうもすんなり受け入れてくれたみたいだよ。おかげで今まで通り………銃がないだけ」
“………ここは?”
ミチル「」
“…………あそこの銃は……”
ミチル「あれはヴァーディクターズが没収した銃。陰陽部とか、百花繚乱の」
“……………ムリしたんだね”
ミチル「まぁね。………ニヤが言ってた。いつかのために用意しておけって」
“…………”
ミチル「先生?」
“ミチル、ツクヨ、イズナ”
ミチル「んん~?」
ツクヨ「は、はい…?」
イズナ「はい!」
“私に……力を貸して欲しい”
ミチル・ツクヨ「「え゛っ」」
イズナ「~~~っ!!お任せください、主殿ぉ!!」
チツヨ「えっあっ……が、頑張ります…!(フンス)」
ミチル(また危険なことするのぉ~~~!?!?)
ザッ…
猩々「…………」
ボッ!
ミチル「ま、まぁ!先生に協力するってことなら、急いでここを移動しよっか!言っちゃば敵地なんだし…」
ボボッ…
ヒナ「ちょっと待って」
ミチル「へっ?」
ヒナ「静かに」
“ヒナ?”
ヒナ「……………」
ボボボッ!
ヒナ「扉から離れて!」
一同「「「!?!?」」」
バガァアアンッ!!!
ズザッ!
ミチル「ふげっ!?」
ヒナ「くっ…!」
ツクヨ「だ、大丈夫ですか!?」
イロハ「は、はい…!ありがとうございます」
イズナ「一体何事でござるか!!」
イブキ「あ、ありがとうニンジャのお姉ちゃん…!」
猩々「見つけたぞ不届き者どもォ!!」
ミチル「うっぎゃあ!?すっごいキレてるよぉ!?」
牧馬「すまへんなぁ。『猩々』ちゃん気ぃ短い言うたやろ?こうなんねん」
イズナ「イブキ殿!イズナの後ろに…!」
イブキ「う、うん…!」
牧馬「勘弁して欲しいわ。なんで協力してくれへんの?せっかくウチらが回収した銃も盗られとるし。…………ほんま、勘弁して欲しいわ。のぉシャーレの先生。あんた大人なんやろ?ウチらのお願いも聞いてくれへん?…………ルキはんは、ウチらに親身やぞ?」
“!”
牧馬「お?なんや、怖い顔すんねんなぁ~」
ヒナ「(ガチャ)これ以上邪魔するなら容赦しない」
猩々「~~~ッ!!!」
牧馬「はいはい。『猩々』ちゃん頭に血ぃ昇り過ぎやでぇ。………邪魔すんなら容赦せぇへん……かぁ。ほんま勝手やなぁあんた」
ヒナ「………?」
牧馬「だぁれも求めてへんで?あんたらがそうやって暴れんの。気ぃ付いてはる?あんたら、ものごっつ浮いとんで」
ヒナ「よく回る舌ね。誰かに似てるわ」
—連邦矯正局—
カスミ「へくちっ!!」
—忍術研究部の隠れ処—
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドト!!!!
ドガシャァアン!!
猩々「くっ!」
牧馬「噂通りやなほんま。おっそろしいわ。……けほっ」
ヒナ「先に行って」
“ヒナ!”
ヒナ「大丈夫。ミレニアムで会いましょう」
“…………うん!”