ブローバ
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ブローバ(Bulova)は、アメリカ合衆国の、時計メーカー「ブローバ・コーポレーション(Bulova Corporation )」、およびそのブランドである。
2008年1月10日に日本のシチズン時計によって買収され、現在はシチズン傘下の会社およびブランドである。
概要
1875年にボヘミアからの移民Joseph BulovaがJ. Bulova Company を創業し、当初は宝飾店だったが、のちに懐中時計や腕時計の分野に進出して、1923年に社名をBulova Watch Companyに変更して事業再編を行った。創業以来の企業理念は、"Perfection before Production"、"Quality before Quantity"。
20世紀初頭、アメリカの時計市場は、エルジン、ウォルサム、イリノイなど大手時計メーカー3〜4社にほぼ支配されていて、Bulovaは1911年に時計製造に乗り出したものの、きわめて弱小なメーカーにすぎず、スイスで製造することで生産コストを削減するなどして活路を見出し、1920年代以降、巧みな手法でCMを行い、Bulovaブランドをアメリカ人の心に刻みこむことに成功した。#歴史
時計の技術史の観点から当社が成し遂げた成果について語る場合、1960年に発表した電池式音叉腕時計「アキュトロン」を挙げることが一般的である。一定サイクルで作動する音叉を超小型化し電池で駆動するものにし腕時計のムーブメントに組み込むというもので、月差1分以内という当時最高の精度を誇った。(現在はこの音叉をエンブレムに用いている。) また、1960年代のブローバ社はアメリカ航空宇宙局と非常に密接な関係にあり、ジェミニ計画やアポロ計画に技術提供し、宇宙船内の計器や通信機器などに使われた計時装置のほぼ全てを供給し、計46回のミッションに貢献した。
ここ数十年のブローバの技術や製品ラインナップについて特筆すべきこととしては、2010年には、水晶発振子を3基用いて機械時計の様に滑らかな運針と高精度を誇るクォーツムーブメント「プレシジョニスト(Precisionist)・ムーブメント」を発表した。通常のクォーツでは一般的に32.768 kHzを振動源に使うが、プレシジョニストは262.144 kHz という高振動数(標準の約8倍) で駆動することで、年差±10秒程度の高精度や、秒針の動きを毎秒複数ステップさせる "滑らかなスィープ運針"を可能にするものである。
2012年には、機械式時計の精度をユーザー自らが調整できる業界初の外部歩度調整システム(External Fine Adjustment System)、EFAS(イーファス)を発表。「キャリブレーター」として発売した。
2014年には「ブローバ・アキュ・スイス(Bulova AccuSwiss)」をリリースした。これはスイス製の高級腕時計コレクションであり、男性用は機械式、女性用はクォーツである。
- ギャラリー 歴代のBulova腕時計
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女性用の手巻き式(竜頭を指で回してぜんまいを巻く)腕時計。ビンテージ品
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手巻き式腕時計、ビンテージ品
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男性用手巻き式腕時計、ビンテージ品
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Bulova Ambassador Automatic。男性用自動巻き時計、ビンテージ品
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Bulova Accutron Spaceview(1970年代)
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1970年代頃のBulova Longchamp
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クオーツ式でカレンダー内蔵のBulova
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1980年代のBulova Titanium
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Bulova Lunar Pilot
歴史
20世紀初頭のアメリカ時計産業は、携帯用としては主に懐中時計の製造を行っており(腕時計はまだきわめて稀な存在で)、アメリカの大手の時計メーカーは、最上位から挙げるとエルジン(Elgin)、ウォルサム(Waltham)、イリノイ(Illinois)、ハミルトン(Hamilton)などが主なメーカーで、Bulovaは1911年に時計製造に参入したものの、まだきわめて小さな、弱小の時計メーカーにすぎなかった。
1926年に、時計メーカーとして初めてラジオCMを行った。しかも、巧みな手法を採用し、時報形式のラジオCMで、次のメッセージを流すものだった。
It’s eight o’clock, B‑U‑L‑O‑V‑A Watch Time.
つまり、毎日定刻にCMを流すこと、および「B、U、L、O、V、A」と、綴りを1文字づつ読み上げることにより、人々の心にBulovaブランドを刻み込むことに成功し、生き残りに成功した。
1941年7月1日には、当時まだ十分に普及していなかったテレビという新しい媒体で、世界で最初のテレビCMも行った。 (このCMは広告史でも言及されることがある。) ニューヨークのテレビ局 WNBTで10秒間のCMで、シンプルな映像と次のような短いナレーションだったという。
America runs on Bulova time(アメリカはBulovaの時間で動く)
その後もテレビが普及し始めた1940年代後半から1950年代にかけて、Bulovaは積極的にテレビ広告を展開し、ブランド名、高級感、正確さなどを伝え続けた結果、アメリカ人にBulovaブランドを定着させることに成功した。
- 年表
- 1875年 - ボヘミア(チェコ)系移民であった「ヨーゼフ・ブローヴァ」ことジョセフ・ブローバ(Joseph Bulova 、1851 – 1936年)によってニューヨーク・マンハッタンのメイデンレーンで宝石店が創業された。
- 1911年 - 時計製造に参入。
- 1912年 -スイスのビエンヌに自社工場を開設し、開発や部品生産をスイス工場で実施することで、コストダウンと高品質の両立を図る。ブローバがアメリカ企業製品でありながら、そのムーブメントにスイス製と打刻される事例があるのはこのためである。
- 1916年から1917年ころ - 女性向け腕時計 Rubaiyat(ルバイヤート)を発売。
- 1919年 - 男性向けの腕時計も発売。
- 1928年 - クロックラジオを製品化。
- 1941年7月1日 - WNBCに4$支払い野球のブルックリン・ドジャース(現ロサンゼルス・ドジャース)対フィラデルフィア・フィリーズ戦の前に世界初のテレビCMを行なった。
- 1945年 - ジョセフ・ブローバ時計学校(Joseph Bulova School of Watchmaking )設立。
- 1958年 - ヴァンガード1号にブローバの技術が用いられた。オマール・ブラッドレーが会長に就任した。
- 1960年10月25日 - 音叉式の腕時計「アキュトロン」(Accutron )を発売。
- 1967年 - 要人輸送機VC-137Aのコクピットクロックに採用された。
- 1969年 - アメリカ合衆国初のクォーツ式腕時計「アキュクオーツ」(Accuquartz )発売。
- 1971年 - アポロ15号のデイヴィッド・スコットが、ブローバから贈呈されたクロノグラフを私物として月面に持ち込んだ[1]。
- 1973年 - スカイラブ計画用にアラームクロックを開発、搭載された。オマール・ブラッドレーが会長を退任した。
- 1979年 - ロウズ(Loews Corporation )によって買収された。
- 2000年 - ルドルフ・ジュリアーニ・ニューヨーク市長により、10月4日が「ブローバの日」と定められた。
- 2007年10月 - シチズンがブローバを買収すると発表した。
- 2008年1月10日 - 2億5000万ドルでシチズンに買収された。
- 2010年4月 - 直轄の日本法人が設立された。
- 2011年 - リチャード・ブランソンがアンバサダーとなる。
- 2015年 - 創業140年を機に、本社をエンパイア・ステート・ビルディングに移転。
- 2020年 - 発売60周年を機に「アキュトロン」をブランドとして独立させる。
アキュトロン
360 Hzの音叉を時間制御に使用する音叉式の腕時計である。スイスのバーゼル出身で、1948年にビエンヌのブローバに入社したドイツ系の物理学者・発明家マックス・ヘッツェル(1921年4月5日[2]-2004年9月12日[3])によって[4]1950年から[5]開発が進められ、1960年に市販化された[4]。この時計以降、ブローバのロゴは音叉に変更された(2020年まで→下記参照)。
音叉に電磁石で一定サイクルの振動を発生させ、音叉そのものの振動をラッチ利用で時針の駆動に用いるシステムである。機械時計の脱進機に相当するφ2mmのインデックス車に320枚の歯を切るなど非常に精密な加工を施し、誤差2秒/日という、当時としては驚異的な高精度を実現したことで技術的に世界の時計業界をリードした。
初期型キャリバーはCal.214で、他にCal.218、Cal.219がある。
アキュトロンに耳を近づけると、音叉の360 Hz (ほぼ F#、嬰ヘの音高)の音がかすかに聞こえる。時計愛好家の間ではAccutron ham(アキュトロンのハム音)と呼ばれている。
アメリカ航空宇宙局の公式腕時計の納入においてオメガのスピードマスターと争い、結果的に腕時計は採用されなかったが、当初は無重力下でゼンマイとテンプの振動に依存する従来の機械式時計がどのように動くかわからなかったため、エクスプローラー計画の搭載時計[6]や、宇宙船のパネルクロックは全て音叉式で重力に影響されにくいブローバ製となり、また最初の月着陸を成し遂げたアポロ11号により静かの海に設置された。後にオメガのスピードマスターにもブローバのメカニズムを採用する機種「スピードソニック」が発売された。
1971年にはレディース用も発売され、1977年に製造中止されるまでに4000万個以上のアキュトロンが売れた。
日本では、時計店の時計修理技能士程度の技能では、アキュトロンは構造が余りにも精緻すぎて修理・調整が難しいと見なされ、後から登場した日本メーカー製の初期のクォーツ式時計がアキュトロンの半額程度の安価ということもあって(おまけに、日本人はアメリカ人に比べて購買力も低かったことも影響して)、日本市場ではアキュトロンは広まらなかった[7]。
- シチズンとの共同開発品
日本国内のメーカーではシチズンが共同でブローバシチズン(現シチズン電子)を設立し、音叉式時計「ハイソニック」を製造、販売した。ハイソニックの内部構造はアキュトロンに酷似している。
- 製造終了
アキュトロンは1977年に製造中止となった。日本のメーカーによりクォーツ式腕時計が開発され、1969年に発売、市場に出回りはじめたことで、売れ行きに陰りが見えるようになったためである。
- アキュトロンの電池について
アキュトロン電池はこの頃一般的であった1.35Vの水銀電池を使用しており、2010年現在標準的になっている1.55Vの酸化銀電池では正しく動作しないため、維持するには本体を改造するか、アキュセル1のような降圧アダプタを併用する必要がある[8]。
- 発表50周年記念のムーブメント完全復刻品
2010年に音叉式ムーブメント発表50周年記念として当時のムーブメントを完全に復刻したスケルトンタイプのスペースビューが1000個限定品として発売された。
- 発表60周年記念の、新開発で新デザインのアキュトロン
(2008年にBulovaがシチズン傘下になって10年あまり経過した)2020年、発売60周年を機にアキュトロンはブランドとして独立することとなり(音叉のロゴも継承した)、オリジナルのデザインを取り入れた「アキュトロン スペースビュー 2020」(世界300本限定)と、デザインをアップデートした「アキュトロン DNA」(共にクオーツ駆動)が発売開始された[9]。これらは二つの静電誘導発電タービンにより腕の振動を利用して発電し、静電誘導モーターで針を動かす。精度は月差±5秒となっている[10][11]。
アキュクォーツ
原理としては32768Hzの水晶振動子の制御により音叉時計を動かす方式で、メーカーとしての目標精度は年差3分であった。1970年からは腕時計化された。酸化銀電池を使うため電池の入手は比較的容易である。
ブローバは1971年、従来のブローバ・218音叉ムーブメントにスイスの政府機関である電気時計研究所(CEH)が開発したベータ21・ムーブメントの電子回路を組み合わせた最初のアキュクォーツであるベータ21-アキュトロンを発売したが、ベータ21-アキュトロンは大型の18金ケースにムーブメントが収められており、重量は100gと腕時計としては重めの部類に入るものであった。ブローバはほどなくCEHとの協業をやめた為、ベータ21-アキュトロンは1年間しか生産されなかった[12]。
CEH陣営から離れたブローバは独自の音叉クォーツ回路の開発を進め[13]、翌1972年に完全自社製の音叉クォーツムーブメントであるブローバ・224を採用した音叉クォーツ腕時計を「アキュクォーツ」として発売する。アキュクォーツに於いては、音叉は周波数の発生源ではなく、単に指針を動かす動力源としてのみ機能した。この構造は1970年にロンジンが独自に開発したクォーツ腕時計であるロンジン・ウルトラクォーツに概念が類似していた[14][15]。224ムーブメントのアキュクォーツは1976年まで販売が続けられたが、1977年からはロンジンの量産クォーツムーブメントであるESA 9362[16]を内蔵したごく一般的なクォーツ時計であるアキュトロン・クォーツに置き換えられる形で姿を消した。
なお、1977年及び1978年には、日本のブローバシチズンからの技術供与で独自開発されたブローバ・242ムーブメントを内蔵したブローバ・クォーツ[17]も存在した[12]。242ムーブメントを最後に、ブローバはムーブメントの独自開発及び自社製造から撤退し、原則として製造を外部委託する(=ODM生産)か、他社製ムーブメントを購入する(OEM供給)経営戦略を採っていく事になる[17]。
スポンサーシップなど
2013年から2016年5月まで英国のサッカークラブ、マンチェスター・ユナイテッドの公式時計スポンサーとなった。
大統領専用機、エアフォースワンのキャビンにもブローバ製の掛時計が採用されている。
外部リンク
脚注
- ^ BASEL WORLD2016 BULOVA New Model2016年 ブローバ新作 ムーンウォッチ 01
- ^ Max Hetzel presents his invention to the world (circa 1962).
- ^ ランディー・ジェイ「Progression of Wristwatch Styles: From Bracelet Watches to SmartwatchesPart 4: 1960–1979: The Bulova Accutron, Mod Era, Quartz Revolution, and Multiple Technologies (LED, Solar, and LCD)」『The Watch & Clock Bulletin No. 433 2018年5/6月号』全米時計蒐集家協会、p.242
- ^ a b 『時計史年表』p.144。
- ^ 『時計史年表』p.122。
- ^ 『時計史年表』p.146。
- ^ “第4話(機械の簡単な歴史) 時計の小話 メルマガバックナンバー 1~20話”. イソザキ時計宝石店. 2026年3月11日閲覧。 あくまで日本市場(だけ)の印象論を漠然と語っている、日本市場に偏向した、日本人によるエッセー
- ^ “スピマス裏技13-3 The Customizing of The Mercury Battery Adapter Chapter 3 The Final”. オメガ・スピードマスター・ファンサイト・WELCOME To スピードマスター. 2026年3月11日閲覧。
- ^ 製品情報
- ^ “「アキュトロン」、60周年の節目で世界初の静電誘導ムーブメントを発表”. 2026年3月10日閲覧。
- ^ “「アキュトロン」 生誕60周年を機に、世界初“静電誘導”機能を搭載した新モデルが登場”. 2026年3月10日閲覧。
- ^ a b BULOVA 224 ACCUQUARTZ 1972 - crazywatches.pl
- ^ Accuquartz 224 - Electric Watches
- ^ LONGINES ULTRA-QUARTZ 6512 1970 - crazywatches.pl
- ^ Longines Ultra-Quartz - Electric Watches
- ^ LONGINES QUARTZ ESA9362 1977 - crazywatches.pl
- ^ a b BULOVA 242 QUARTZ 1977 - crazywatches.pl
参考文献
- 『時計史年表』河合企画室
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