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CREB結合タンパク質とは? わかりやすく解説

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CREB結合タンパク質

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/01/17 03:45 UTC 版)

CREBBP
PDBに登録されている構造
PDB オルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

1JSP, 1LIQ, 1RDT, 1WO3, 1WO4, 1WO5, 1WO6, 1WO7, 2D82, 2KJE, 2KWF, 2L84, 2L85, 2LXS, 2LXT, 2RNY, 3DWY, 3P1C, 3P1D, 3P1E, 3P1F, 3SVH, 4A9K, 4N3W, 4N4F, 4NR4, 4NR5, 4NR6, 4NR7, 4NYV, 4NYW, 4NYX, 4OUF, 4TQN, 4TS8, 4WHU, 5JEM, 5I8B, 5I89, 5I86, 4YK0, 5CGP, 5I8G, 2N1A, 5I83, 1ZOQ, 5DBM

識別子
記号 CREBBP, AW558298, CBP, CBP/p300, KAT3A, p300/CBP, RSTS, CREB binding protein, RSTS1, MKHK1
外部ID OMIM: 600140 MGI: 1098280 HomoloGene: 68393 GeneCards: CREBBP
遺伝子の位置 (ヒト)
染色体 16番染色体 (ヒト)[1]
バンド データ無し 開始点 3,725,054 bp[1]
終点 3,880,713 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
染色体 16番染色体 (マウス)[2]
バンド データ無し 開始点 3,899,192 bp[2]
終点 4,031,861 bp[2]
RNA発現パターン


さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 トランスフェラーゼ活性
transcription coactivator activity
MRF binding
zinc ion binding
p53結合
転写因子結合
クロマチン結合
cis-regulatory region sequence-specific DNA binding
transcription coregulator activity
シグナルトランスデューサー活性
金属イオン結合
histone acetyltransferase activity
damaged DNA binding
DNA-binding transcription repressor activity, RNA polymerase II-specific
血漿タンパク結合
アセチルトランスフェラーゼ活性
acyltransferase activity
peptide N-acetyltransferase activity
DNA-binding transcription factor activity
transcription corepressor activity
細胞の構成要素 細胞質
核質
histone acetyltransferase complex
細胞核
核内構造体
生物学的プロセス Notchシグナリング
低酸素症への反応
regulation of transcription, DNA-templated
周期的プロセス
cellular response to UV
embryonic digit morphogenesis
N-terminal peptidyl-lysine acetylation
stimulatory C-type lectin receptor signaling pathway
negative regulation of transcription by RNA polymerase II
transcription, DNA-templated
positive regulation of transcription, DNA-templated
regulation of smoothened signaling pathway
histone acetylation
regulation of transcription from RNA polymerase II promoter in response to hypoxia
regulation of cellular response to heat
transcription initiation from RNA polymerase II promoter
viral process
positive regulation of type I interferon production
シグナル伝達
protein acetylation
homeostatic process
beta-catenin-TCF complex assembly
regulation of apoptotic process
positive regulation of transcription by RNA polymerase II
regulation of lipid metabolic process
protein destabilization
regulation of myeloid cell differentiation
positive regulation of transcription of Notch receptor target
positive regulation of transforming growth factor beta receptor signaling pathway
positive regulation of Notch signaling pathway
protein-containing complex assembly
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒト マウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_001079846
NM_004380

NM_001025432

RefSeq
(タンパク質)

NP_001073315
NP_004371

n/a

場所
(UCSC)
Chr 16: 3.73 – 3.88 Mb Chr 16: 3.9 – 4.03 Mb
PubMed検索 [3] [4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト 閲覧/編集 マウス

CREB結合タンパク質(CREBけつごうタンパクしつ、: CREB-binding proteinCREBBPCBP)またはKAT3Aは、ヒトでは16番染色体英語版短腕の16p13.3に位置するCREBBP遺伝子によってコードされている転写コアクチベーターである[5][6]CREBcAMP応答配列(cAMP response element、CRE)に結合する転写因子であり、CBPはCREBを含む多数の転写因子に結合して転写のアップレギュレーションを行う。CBPはアセチルトランスフェラーゼ英語版としての機能も有しており、転写因子やヒストンリジン残基にアセチル基を付加することができる。CBPによるヒストンのアセチル化はクロマチン構造を変化させ、遺伝子は転写装置がアクセスしやすい状態となる[7][8][9][10]。こうした比較的ユニークなアセチルトランスフェラーゼ活性はEP300英語版(p300)でも観察され、両者はまとめてp300/CBPコアクチベーターファミリーと呼ばれる。これら2つのタンパク質はヒトでは16,000以上の遺伝子と結合することが知られており、また構造的特徴の多くも共通している一方で、近年のエビデンスは両者が異なる生物学的機能を有する遺伝子群の転写を促進している可能性を示唆している[7][11][12]

一例を挙げると、CBPは大腸がん頭頸部扁平上皮がんなど広範囲の病態生理への関与が示唆されている。これらの疾患ではCBPとβ-カテニンとの結合ががん細胞の増殖と疾患のaggressivenessを促進していることが示されているのに対し、p300とβ-カテニンの結合は細胞分化アポトーシスをもたらしている[11][13]。また、CBPはリポジェネシス糖新生を担う転写因子や遺伝子の活性を調節することで、栄養状況の変化に応答したエネルギー恒常性の維持を可能にし、肝機能調節を補助していることが示されている[6]。CBPは血液腫瘍やその他の固形腫瘍、糖尿病統合失調症アルツハイマー病抑うつ、その他多くの神経疾患の病因にも関与していることが示唆されている[14][15][16][17][18]

構造

機能的なCBPは2441アミノ酸から構成される[8][18]。CBPはプロモーターエレメントと直接的に相互作用するのではなく、さまざまな構造ドメインが他の転写因子などと複合体を形成することで、タンパク質間相互作用によって特定のDNAエレメント上へもたらされる[8]

CBPの主要なドメイン構成

TAZドメイン

CBPには2つのTAZ(transitional adapter zinc finger)ドメインが存在し、それぞれ亜鉛イオンによって安定化された4本のαヘリックスから構成される。TAZ1とTAZ2はどちらも両親媒性アミノ酸配列内の疎水性残基に選択的に結合する。またTAZ1の結合親和性はTAZ表面の正に帯電した残基と、リガンドの酸性残基との相互作用によって強化される[19]。TAZ2はアセチルトランスフェラーゼドメイン(KATドメイン)に近接して位置しているため、TAZ2に結合する因子はアセチル化による調節を受けている可能性がある[19]

KIXドメイン

KIXドメイン英語版(CREB結合ドメインとも呼ばれる)は、他の転写因子やコアクチベーターとヘテロ二量体を形成するドメインである。3本のαヘリックスと2本の310ヘリックスから構成され、両親媒性配列に対して高い親和性を有する[19]。これらのヘリックスはいくつかの異なるコンフォマーへフォールディングすることで、結合様式にある程度の多様性を維持したまま、調節制御機能の発揮を可能にしている[19]。KIXドメインは転写率の制御を行っており、造血系の分化に重要であることが示されている[8][19][20]。このドメインに結合するタンパク質群にはCREBとMybのように競合的関係にあるものも、MLL英語版とMybのようにアロステリックな協同的結合を行うものも存在する[19]

ブロモドメイン

アセチル化リジンと複合体を形成したヒトCBPブロモドメインの結晶構造、PDB: 3P1C​。

ブロモドメイン(BRD)は約110アミノ酸から構成され、アセチル化リジン残基を認識する機能を果たす[8]。4本のαヘリックスから形成される左巻きのヘリックスバンドルとループ領域によって、疎水的な結合ポケットが形成されている[8][19]。CBPのブロモドメインは、アセチル化リジン残基を多く含むゲノム領域に結合する。こうした領域ではヒストンの正電荷の喪失によってDNAに対する親和性が低下しており、転写装置がアクセス可能な開いたクロマチン状態となっている。アセチル化されたp53STAT3もCBPのブロモドメインに結合することが示されている[18]

リジンアセチルトランスフェラーゼドメイン

約380残基からなるリジンアセチルトランスフェラーゼ(KAT)ドメインは、非常に重要かつ特徴となる領域の1つである。アセチル基転移活性はCBPのリン酸化によって制御されている。このドメインで興味深いのは、ヒストンだけでなく他のタンパク質も同様にアセチル化することができるという点である。CBPのKATドメインの基質として、p53、E2F1–3、GATA1英語版MyoD英語版、CREBなど100種類以上が現時点で知られている[18]

核内受容体コアクチベーター結合ドメイン

核内受容体コアクチベーター結合ドメイン(nuclear receptor coactivator binding domain、NCBD)またはインターフェロン制御因子結合ドメイン(IRF-binding domain、IBiD)はCBPのC末端に位置し、標的タンパク質を結合していない状態では複数のコンフォメーションの間を揺れ動いている[19]。標的タンパク質との結合の際にはNCBDは3本のヘリックスへフォールディングし、標的タンパク質の天然変性領域に結合する[19]。この領域に結合するタンパク質としては、甲状腺ホルモン受容体レチノイド受容体英語版のコアクチベーターであるACTRやそのホモログであるSRC-1のほか、p53、SMADが知られている[19][20]

相互作用

CBPは次に挙げるタンパク質と特異的に相互作用することが示されている。

機能

CBPは普遍的に発現しており、多くの転写因子コアクチベーターとして転写活性化に関与している。CBPは、アセチルトランスフェラーゼ活性によるアセチル基の転移、そして転写クロマチンリモデリングに必要な複合体をリクルートして構築する足場、という2つの重要な機構によって遺伝子発現を調節する。CBPはリン酸化によってアセチルトランスフェラーゼ活性化が高まるが、この過程は細胞周期依存的な調節を受けていると考えられている[18]。また、CBPを介したN-グリコシル化活性によってCBP相互作用タンパク質のコンフォメーションが変化することで、遺伝子発現、細胞成長、分化の調節が行われていることも示唆されている[28]

p300との差異

CBPとp300の間のアミノ酸配列の相同性

多くの科学文献(特に古いもの)では、CBPとp300はCBP/p300として区別されずに扱われていることがある。両者の配列相同性、構造的類似性、結合特性を考えると両者を同一視することには合理性があるものの、近年の研究ではCBPとp300には異なる生物学的機能も存在していることが示されている。

CBPとp300は基質となるヒストンは共通しているものの、ヒストンやアセチルCoAの存在量が乏しい条件下での基質選択性は異なる[18]。また、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス英語版に関する実験では、病原性タンパク質(vIRF)の発現はCBPによってアップレギュレーションされるのに対し、p300によって抑制されることが示されている[12]。p300のホモ接合型ノックアウトマウスは胎生致死となり、神経胚形成英語版の異常や心形成不全がみられる。さらに、こうしたマウスから単離された線維芽細胞は正常な増殖を行うことができず、レチノイン酸受容体を欠いている[7][18]。CBPのKATドメイン欠失変異をホモ接合型で有するトランスジェニックマウスもまた胎生致死となるが、このマウスでは血管新生の低下、そして造血系前駆細胞の増殖の欠如や造血微小環境の変化を特徴とする造血異常を示す[18]。CBPとp300のホモ接合型ノックアウトマウスがどちらも胎生致死となることは両者がともに胚発生において重要な役割を果たしていることを示唆しているものの、両者の表現型の差異はCBPとp300がそれぞれ胚発生の異なる側面を調節していることを意味している。

細胞周期の調節における役割

CBPとp300は細胞周期のさまざまな時点において、多くの異なる調節機能を介して細胞周期の進行を制御している。

1990年代後半に行われた研究によって、CBPのアセチルトランスフェラーゼ活性はG1/S期細胞周期チェックポイントにおいてピークに達することが示された[29]。そのため、この時点にキナーゼ活性を有するCDK2がCBPやp300の翻訳後修飾の重要な調節因子である可能性が示唆され[7]、実際にサイクリンE/CDK2阻害剤の投与によってCBPのKATドメインの酵素活性が阻害されることが明らかにされた[29]。他にも、MAPKPKACAMK4英語版などがCBPをリン酸化することが示されている[7][18]。Ser133は、PKAによるリン酸化によってCBPの転写活性化機能が開始される重要残基である[20][30]

G1/S期の移行にはE2Fファミリーの転写因子が重要である[31]。これらの転写因子はDNA複製に関与する遺伝子のプロモーター領域内のコンセンサス配列に結合する。CBPとp300はE2Fタンパク質に対しコアクチベーター、アセチルトランスフェラーゼの双方の形で作用し、後者の作用によってE2FのDNA結合親和性が増大する[5][12]。抗CBP/p300抗体のマイクロインジェクションによってS期へ進行する細胞数が有意に減少することからも、CBPがG1/S期の移行時の転写に必要不可欠であることが支持される[12]

また、CBPは複製起点周辺のヒストンをアセチル化することで、DNA複製過程を促進していると考えられている[12]。ヒストンのリジン残基のアセチル化はヒストンとDNAの間の荷電相互作用を弱め、周辺領域はより開いた、DNA複製装置がアクセスしやすい状態となる。ヒストンH3のリジン18番のアセチル化(H3K18ac)と27番のアセチル化(H3K27ac)は、活発な遺伝子領域と関連したマーカーである[12]。また、CBPは岡崎フラグメントのプロセシングに関与している2つのエンドヌクレアーゼFEN1英語版DNA2英語版)をアセチル化することも示されている[12]

CBPによって調節されている細胞周期の重要な構成要素には、後期促進複合体(APC/C)もある。この複合体は、"Arc Lamp"、"Platform"と呼ばれる2つのサブドメインに分けられ、サイクリンBセキュリンPLK1など細胞周期と関連した構成要素をプロテアソーム分解の標的とするE3ユビキチンリガーゼとして機能する[32][33]。APC/Cを構成する多くのサブユニットのうち、Platformサブドメインに位置するAPC5英語版、そしてArc Lampサブドメインに位置するAPC7英語版の2つのサブユニットがCBPと直接的に相互作用することが示されている[32][33]RNAiによってCBPとp300を抑制した実験では、通常APC/Cの標的となっているタンパク質の濃度が有意に上昇し、多くの細胞が細胞周期のM期で停止した状態となることが示されている[33]

CBPとp300は、塩基除去修復ヌクレオチド除去修復非相同末端結合などさまざまなDNA修復過程に関与する重要な因子をアセチル化することが示されている[24]。CBPとp300はDNA損傷応答タンパク質のアセチル化に関与し、これらの機能に影響を及ぼす[24]

疾患における役割

ルビンシュタイン・テイビ症候群

ルビンシュタイン・テイビ症候群英語版(RTS)は、CBPとp300のいずれかの遺伝的変異を原因とする希少遺伝疾患である。CBPの変異を原因とするRTS1型は500種類以上の変異が記載されており、全症例の約55%を占める。一方、RTS2型は約120種類のp300変異を原因とし、診断症例の約8%のみである[34]。こうした変異の大部分は機能喪失変異であることが示されている[12]。RTS患者ではがんのリスクが上昇することが統計的に示されており、約5%が神経堤由来の小児がんと診断される[12]。また、骨格の異常、神経解剖学的欠陥、低知能、注意欠陥、協調運動障害といった精神障害がみられることが多い[22]

CBP変異が高頻度でみられるがん [12]
がんの種類 N 変異試料の割合(%)
濾胞性リンパ腫 66 33.3
皮膚扁平上皮癌 77 28.6
辺縁帯リンパ腫英語版 15 13.3
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 242 12.0
唾液腺癌 63 9.5
膀胱癌 438 8.9
子宮体癌 337 8.0
小細胞肺癌 52 7.7
ER陽性乳癌 80 7.5

がん

CBPは腫瘍形成のあらゆる段階に関与していることが示されている[8]。細胞の増殖、成長、遊走、アポトーシスの調節に重要な役割を果たしており、がん遺伝子としてもがん抑制遺伝子としてもはたらく場合がある[5]。CBP活性の増大は、乳がん肺がん前立腺がん大腸がん急性白血病頭頸部がんやその他幅広いがんとの関連が示唆されている[11][12][18]。一方、最も高頻度でみられる変異はKATドメインに生じるもので、大部分はアセチルトランスフェラーゼ活性の低下や阻害をもたらすものである[12]

血液腫瘍

CBPヘテロ接合型(Cbp+/-)マウス胚は、髄外造血、骨髄の細胞密度(脂肪との比率)の低下、造血系の分化の異常を示す[18]。生後1年までに、こうしたマウスでは白血病やその他の血液腫瘍の発生率が上昇する[26]。また腫瘍細胞のシーケンシングでは、野生型アレルの喪失によるヘテロ接合性消失英語版が生じている[18]。こうした実験結果の説明の1つとして、CBPが造血幹細胞の自己複製に関与していることが考えられている[18]

急性骨髄性白血病骨髄異形成症候群と診断された患者では、CBPに機能獲得型変異が生じている場合があることが示されている[12]。この変化は、KAT6A英語版MOZ)、KAT6B英語版MORF)、KMT2A英語版MLL)といった遺伝子とCREBBP遺伝子との間での染色体転座によって生じたものである[12]。いずれのケースでも融合タンパク質ではCBPのC末端が失われており、KAT6AKAT6Bとの転座では双方のタンパク質のアセチルトランスフェラーゼドメインが維持された融合タンパク質が形成されてリジンアセチルトランスフェラーゼ活性が非常に高くなる可能性がある[12]

急性リンパ性白血病の再発症例の患者では、約18%にCBPのKATドメインの変異が存在することが報告されている[18]

固形腫瘍

β-カテニンとCBPが結合するか、ホモログであるp300が結合するかによって異なる、活性化される転写経路。ICG-001による阻害はCBP/β-カテニンに対してのみ作用する。

CBPの変異は、頻度は比較的低いものの、肺がんでも同定されている[21]呼吸上皮における腫瘍形成の初期段階ではCBPの発現が上昇するとともに、AP-1サイクリンD1といったCBPの転写活性との関連が知られている因子も発現が上昇する。これらの過剰発現は、肺での腫瘍形成に好都合な下流のシグナル伝達イベントを引き起こしている可能性がある[21]

大腸がん頭頸部がん(頭頸部扁平上皮癌)においては、CBPとβ-カテニンとの結合と重症度が関連している。β-カテニンは、古典的Wntシグナル伝達経路に関与する重要な因子である[11][13]。CBPとβ-カテニンとの結合は、がん幹細胞集団の存在、免疫細胞の浸潤の低下、転移の可能性など、よりアグレッシブながん形質と関連した遺伝子群の転写をもたらす[13]。β-カテニンとCBPとの結合を阻害し、p300との結合は遮断しない低分子であるICG-001を用いて行われた実験では、発がんの減少、そして細胞分化アポトーシスの増加が観察されている[11][13]

アンドロゲン受容体(AR)やエストロゲン受容体(ER)によって媒介されるホルモンシグナルの増大は、それぞれ前立腺がん乳がん症例と関連している[11]。CBPは、コアクチベーターとアセチルトランスフェラーゼの双方の形でARやERと相互作用することが知られている。CBPのアセチルトランスフェラーゼ活性の阻害は、これらの受容体の発現を低下させることでシグナルを減少させ、腫瘍形成を抑制することが示されている[11]

代謝の恒常性

エネルギー恒常性英語版は個体の生存に必要不可欠であり、グルコース脂質のバランスに依存している[6]代謝活性の異常と関連した疾患には、肥満2型糖尿病非アルコール性脂肪性肝疾患などがある。過剰な栄養はグルコースやインスリンの濃度の上昇を介してリポジェネシス(脂質の合成)を促進し、絶食はβ酸化(脂質の分解)と糖新生(グルコースの合成)を促進する[6]

食餌誘発性肥満マウスでは、過剰発現したSREBP-1c英語版ChREBPと協働してリポジェネシスを高めていることが観察される。SREBP-1cとChREBPはどちらもリポジェネシスに重要な転写因子であり、またどちらもCBPによってアセチル化されることで転写活性が高まる[6]。また脂質合成の増大に応じて、高分子を細胞外へ搬出して貯蔵する必要が生じる。MTPリポタンパク質の組み立てと分泌を担うタンパク質であり、MTPをコードする遺伝子のプロモーターにはRNAヘリカーゼDDX3が結合する。DDX3はCBPと相互作用してHNF4英語版のアセチル化を引き起こし、遺伝子の転写を高めている[6]

CBPは絶食時のグルコース恒常性の調節にも関与している。低血糖時に放出されるホルモンであるグルカゴンCREBを活性化し、CREBはCBPを結合してFOXO1の転写を活性化する。FOXO1は、グルコース-6-ホスファターゼホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼなど糖新生に必要な酵素をコードする遺伝子に対して転写因子として機能する[6]

神経疾患

CREBは、神経保護作用が示されている[14]。CREBはCBPと結合するため、神経学的経路におけるCBPの役割、そしてその異常がどのように疾患に影響しているのかについての関心が高まっている。CBPの変異に伴う、運動、学習、記憶機能の変化の評価を行うため、多数の動物モデルが作成されている。CBPのヘミ接合型マウスやコンディショナルノックアウトマウス、ドミナントネガティブ変異を有するマウスは、記憶(具体的には長期記憶英語版)と関連した欠陥を示す[22]。KIXドメインにホモ接合型変異を有するマウスは、運動技能の学習や実行に欠陥がみられる[22]

胎児性アルコール・スペクトラム障害

胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)は、妊娠中のアルコール曝露を原因とするあらゆる疾患を含む分類群である[22]。こうした疾患の症状としては、小脳依存的学習、運動協調や平衡感覚の乏しさが挙げられる[22]。FASDのラットでは、CBP濃度の低下と、ヒストンH3H4のアセチル化の低下が示されている[22]

ハンチントン病

ハンチントン病(HD)は、ハンチンチン遺伝子の変異による変異型ハンチンチン(Htt)タンパク質の合成を原因とする、致死的な進行性神経変性疾患である[22]。この疾患と密接に関連する症状としては、運動機能障害、行動変容、最終的には認知症に至る認知機能障害が含まれる[35]。HDの動物モデルでは、CBP活性の減少と神経のヒストンアセチル化の低下が観察されている[22]。変異型HttはCBPと直接相互作用することが示されており、変異型HttはCBPの分解をもたらす、もしくはCBPのアセチルトランスフェラーゼドメインを直接阻害すると考えられている[14][22]

アルツハイマー病

アルツハイマー病(AD)は進行性の神経変性疾患であり、神経炎症をもたらすアミロイドβ(Aβ)プラークやタウ(τ)タンパク質による神経原線維変化の存在に基づいて診断される[22]。ADの原因は明確にされていないものの、CBPはいくつかの機構でADの進行に関与していると考えられている。早期発症型家族性アルツハイマー病の多くの症例では、Aβプラークの形成を担う酵素を構成するタンパク質(プレセニリン1もしくは2英語版)に変異が生じており、野生型タンパク質が存在しない場合にはCBPの活性は低下する[16][22]。さらにADのマウスモデルでは、CBPの重要な機能である神経のヒストンアセチル化の低下が示されている[22]

CBPの阻害

CBPは幅広い生理過程を制御していることが明らかになっており、CBP活性阻害剤の将来的な治療薬としての重要性はますます高まっている。現時点では、発見された阻害剤のごく一部が臨床試験段階まで進行している。

CBPを阻害する薬剤
薬剤 開発段階 疾患、機序、標的領域など 出典
A-485 In vitro/ in vivo 血液腫瘍、AR陽性前立がん [36]
C646 In vitro/ in vivo 固形腫瘍、神経上皮細胞のヒストンアセチル化の低下 [8]
CBP30 In vitro 自己免疫疾患 [8]
CCS1477 Phase 1b/2a 進行性去勢抵抗性前立腺がん、血液腫瘍 [10][8]
CPI-637 In vitro/ in vivo 去勢抵抗性前立腺がん [37]
dCBP-1 In silico 多発性骨髄腫 [38]
DC_CP20 In silico 白血病 [8]
E7386 Phase 1 固形腫瘍、β/カテニン/CBP相互作用の阻害 [39]
Garcinol In vitro/ in vivo 食道がん [36]
GNE-049 In vitro/ in vivio 乳がん、前立腺がん [38]
GNE-207 In vitro/ in vivo 急性骨髄性白血病、他の血液腫瘍も標的となる可能性 [8]
GNE-781 In vitro/ in vivo 急性骨髄性白血病、他の血液腫瘍、前立腺がん、乳がんも標的となる可能性 [38][8][40]
HBS1 In vitro/ in vivo 腎細胞がん [8][41]
I-CBP112 In vitro/ in vivo CBPのブロモドメインを標的とする [8]
ICG-001 In vitro/ in vivo 大腸がん、頭頸部扁平上皮がん [11][13]
KCN1 In vitro/ in vivo 神経膠腫 [8][42]
MYBMIM In silico 急性骨髄性白血病、CBP/Myb相互作用の阻害 [8]
NASTRp In vitro/ in vivo 肺腺がん [8]
NEO2734 In vitro/ in vivo 前立腺がん [8]
Nicur In silico 消化器がん [8]
OHM1 In vitro/ in vivo CBP/HIF-1α相互作用の阻害 [8]
PRI-724英語版 In vitro/ in vivo 肝線維症 [6]
PU139 In vitro/ in vivo 神経芽腫 [36]
Y08197 In vitro 去勢抵抗性前立腺がん [37]

出典

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