インターロイキン-19
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/12/20 04:06 UTC 版)
| IL19 | |||||||||||||||||||||||||
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| 識別子 | |||||||||||||||||||||||||
| 記号 | IL19, IL-10C, MDA1, NG.1, ZMDA1, Interleukin 19, IL-19 | ||||||||||||||||||||||||
| 外部ID | OMIM: 605687 MGI: 1890472 HomoloGene: 17813 GeneCards: IL19 | ||||||||||||||||||||||||
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| オルソログ | |||||||||||||||||||||||||
| 種 | ヒト | マウス | |||||||||||||||||||||||
| Entrez |
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| Ensembl |
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| RefSeq (mRNA) |
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| RefSeq (タンパク質) |
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| 場所 (UCSC) |
Chr 1: 206.77 – 206.84 Mb | Chr 1: 130.86 – 130.87 Mb | |||||||||||||||||||||||
| PubMed検索 | [3] | [4] | |||||||||||||||||||||||
| ウィキデータ | |||||||||||||||||||||||||
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インターロイキン-19(英: interleukin-19、略称: IL-19)は、IL-10サブファミリーに属する免疫抑制性のサイトカインである。
ヒトのIL-19はIL19遺伝子によってコードされており、この遺伝子は1番染色体に位置し9個のエクソンから構成される[5]。IL-19は159アミノ酸から構成され、立体構造はαヘリックスとループからなる。IL-19は単球、マクロファージ、T細胞、B細胞に選択的に発現しており[5]、免疫細胞(マクロファージ、T細胞、B細胞)と非免疫細胞(内皮細胞、脳内のグリア細胞など)の双方と相互作用する[6]。
IL-19はJAK-STATシグナル伝達を開始して特定の遺伝子の転写を活性化し、合成されたmRNAはタンパク質へと翻訳されて下流でエフェクター機能を発揮する。IL-19シグナルの細胞内への伝達には二量体型IL-20受容体複合体が利用され、JAK、STAT3を介してシグナル伝達カスケードが開始される。
機能
IL-19は、炎症、細胞の発生、ウイルス応答、脂質代謝など幅広い機能と関連している[5]。IL-19は免疫抑制性のサイトカインとして抗炎症性のTh2応答を促進して抗炎症性表現型を支え、またTh1応答や炎症性サイトカインIFN-γの分泌を弱め、末梢血単核細胞(PBMC)における抗炎症性サイトカインIL-10の発現を高め、B細胞によるIgGの産生を阻害する[6][7]。
細胞接着分子の調節
IL-19はRNA結合タンパク質HuRの発現を抑制する[8]。HuRは細胞接着分子をコードしているmRNAの安定化を担っており、HuRのダウンレギュレーションは血管内皮細胞上に発現している細胞接着分子の翻訳に影響を及ぼす。細胞接着分子の減少は血管外へ遊出する好中球数の減少をもたらし、炎症過程によって生じる血管組織の損傷を制限する保護機能となっている[8]。
慢性炎症性疾患
IL-19は慢性炎症性疾患の進行をもたらすことが報告されている。IL-19は、肺胞マクロファージや肺樹状細胞など単球系統の細胞によって産生され、これらの細胞を調節している[9]。IL-19欠損マウスを用いて免疫学的攻撃を行った研究では、未処理のマウスでは単球由来の細胞の割合が低下しており、そしてリポ多糖などの外因性抗原による刺激を行った際には、応答して発現するMHCクラスII分子も有意に少ないことが示されている。また、IL-19欠損マウスでは細胞分化に関与しているNotch2の発現調節にも異常がみられる。MHCクラスII分子はT細胞へのペプチドの提示を媒介しており、Notch2は細胞運命の決定に関与している。内因性のIL-19はこれら双方の過程を調節しているようである[9]。
免疫細胞の極性化
IL-4やIL-10といった抗炎症性サイトカインの誘導、そしてIFN-γなどの炎症性サイトカインのダウンレギュレーションによって、ヘルパーT細胞の表現型はTh1型からTh2型へシフトする[10]。こうした免疫細胞の極性化過程は、免疫細胞が異なるプログラムに適応し、特定のシグナルに応答して専門的機能を発揮する際に行われる[11]。血管感染症時(動脈や静脈内で細菌、真菌、ウイルスの感染が発生した場合)には、T細胞集団の中ではTh1型が優位であり、IFN-γ、TNF-α、その他炎症性サイトカインが高レベルで分泌される[12]。一方でサイトカインの分泌が無制限に行われたままでは、血管や組織の損傷などの悪影響が生じる可能性がある。Th2型の細胞はIL-4やIL-10を分泌し、IFN-γをダウンレギュレーションすることで、炎症応答を弱める[12]。リンパ球と同じように、IL-19シグナルを受けたマクロファージも炎症性の表現型(M1)から抗炎症性の表現型(M2)へと極性化する[12]。
好中球の発生
骨細胞は骨の中に最も豊富に存在する細胞であり、骨の健康を担っている[13]。骨細胞は造血の重要な調節因子であり、細胞の発生を助ける重要な因子である。マウスでの研究では、骨細胞におけるmTORC1(栄養素やエネルギー、酸化還元状態のセンサーとして機能し、タンパク質合成を制御するタンパク質複合体)の構成的活性化によってIL-19の産生は劇的に増大し、好中球の前駆細胞の数が増加することが示されている。また、IL-19の投与によっても好中球の発生は刺激され、内因性のIL-19やその受容体を枯渇させることで細胞発生が阻害されることから、IL-19は好中球の発生に必要不可欠な調節因子であることが示唆されている[14]。
脂質代謝
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の進行した形態であり、炎症と線維症によって特徴づけられる[15]。高脂肪食が肝損傷、炎症、線維症に及ぼす影響は、IL-19欠損マウスで有意に悪化することが示されている。このことは、IL-19欠損マウスにおいてIL-6、TNF-α、TGF-βといった炎暑性サイトカインの分泌が有意に上昇していることとも一致する。肝細胞がん患者から単離された細胞株であるHepG2細胞では、IL-19の投与によってトリグリセリドやコレステロールの濃度や、脂肪酸合成と関連した酵素の発現が低下する(リポジェネシスの低下)[16]。このように、IL-19は脂質代謝の抑制と密接に関連している。
神経保護
中枢神経系に常在するグリア細胞は、神経炎症の開始と調節に関与している。ミクログリアやアストロサイトなどのグリア細胞は外因性抗原に応答して炎症性サイトカインを分泌し、また免疫応答の回復期には炎症を解消する免疫抑制性サイトカインを分泌する。脳内では、IL-19は炎症性サイトカインに遅れる形でアストロサイトによって分泌される。IL-19はミクログリアなどIL-20受容体を発現している細胞と相互作用し、サイトカインの分泌を調節するシグナル伝達カスケードを開始する。IL-19シグナルは炎症応答を制限し、中枢神経系に対する傷害から脳を保護する二次的な神経保護経路として機能している[17]。
自己免疫
IL-17Aは免疫応答、そして乾癬などの炎症性自己免疫疾患の発症に関与していることが示唆されている。IL-17AはIL-19、IL-20、IL-24をアップレギュレーションする。IL-23/IL-17経路関連サイトカインであるIL-19やIL-24のアップレギュレーションはケラチノサイトの増殖をもたらし、表皮の過形成に寄与している[18]。
HIV
現時点でHIVに対して最も有効性の高い治療法は多剤併用療法(cART)であり、この治療法はウイルスによる宿主細胞を用いた自己複製を防ぎ、AIDSの発症を遅らせるものである。cARTはHIV感染患者のCD4+T細胞の回復を補助するが、T細胞の回復やウイルス量の非検出レベルでの維持にはいくつかの因子が影響を及ぼしている。こうした因子の1つが、関連するサイトカイン(IL-15、IFN-γ、IL-19)の遺伝子の一塩基多型(SNP)である。多くの患者はcARTに応答するが、IFN-γやIL-19の遺伝子の多型がcART治療による免疫の回復が達成されない可能性に大きく影響することが相関研究により示されている[19]。
その他の関連する機能
ヒト血管平滑筋細胞において、IL-19はヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)をアップレギュレーションし、酸化ストレスを低減する[20]。
出典
- ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000142224 - Ensembl, May 2017
- ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000016524 - Ensembl, May 2017
- ^ Human PubMed Reference:
- ^ Mouse PubMed Reference:
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外部リンク
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