MiG-11 (航空機)
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MiG-11(ミグ11;ロシア語:МиГ-11ミーグ・アヂーンナッツァチ)またはI-220(И-220)は、ソビエト連邦のミコヤン・グレヴィッチ設計局が試作したレシプロ戦闘機である。MiG-3の改良型(I-210やI-230)と並行して開発されていた高高度迎撃戦闘機で、I-221、I-222、I-224、I-225と改良を重ねたが、いずれも試作に留まり不採用となった。本項では一連のシリーズについて解説する。
開発
ドイツ空軍の高高度偵察機に対抗するため[1]、ソ連空軍はミコヤン・グレヴィッチ設計局(以下、ミグ設計局)に対し、MiG-3よりも高高度飛行性能に優れた新型戦闘機の開発を要求した。その要求に沿って試作されたのがI-220である[2]。採用後の制式名称としてMiG-11が予定されていた[3]。
I-220はMiG-3の基本形態を受け継いではいたが、一回り大型の完全新規設計だった[4]。機体は木材と金属の混合構造で、コックピット前方が金属製、後方が木製セミモノコック構造だった[5]。MiG-3で問題となった前方視界を向上させるため、コックピットはMiG-3よりも前方に移されている[2]。主翼は金属製の中央翼に上反角のついた木製の外翼を結合させており、この点はMiG-3と変わらないが[2]、翼平面形は大幅に異なり、MiG-3と比べて前縁にかなりの後退角がついていた[3]。また、翼型として層流翼を採用した[2]。ラジエーターは中央翼前縁部に埋め込まれている[3]。
エンジンはミクーリン AM-39を検討していたが、エンジンの調達が間に合わなかったため、試作1号機には代用としてIl-2用のミクーリン AM-38Fを搭載し、1943年7月より飛行テストを開始した(後に換装)[3]。試作2号機には当初よりAM-39が搭載され、1944年初頭に初飛行した[6]。
I-220は上昇限度の要求値を満たすことができなかった。そのため、ミグ設計局では改良型のI-221を試作した[2]。I-221はI-220よりも主翼を大型化し、TK-2Bターボチャージャーを2基搭載した[7]。I-221は1943年12月2日にP・A・ジュラフリョフの操縦によって初飛行したが、1944年2月7日の8回目の試験飛行で墜落した。原因はターボチャージャーの炎によってコックピット内に煙が充満し、テストパイロットが機体に火災が発生したと誤解して脱出したためだった[6]。
この時点で既にドイツ空軍の高高度偵察機は飛来しなくなっており、高高度迎撃機を配備する必要性は薄れていた。だが、ミグ設計局では高高度機の研究が継続され、I-221の改良型であるI-222が1機試作された[6]。主な変更点はコックピットの与圧化、水滴型キャノピーへの変更による後方視界の向上、エンジン及びターボチャージャーの換装などである[6][7]。また、当初はI-220以来の3翅プロペラを装備していたが、後に高高度性能向上を狙って4翅プロペラに交換されている[8]。I-222は1944年5月7日に初飛行。試験では691km/h (高度14,500 m) という高速性能を示した[7]。
I-222の小改良型がI-224で、エンジン換装や4翅プロペラの大型化のほか、与圧式コックピットがアルミ合金の溶接構造に変更されていた[7]。
主翼を大型化したI-221系列のI-222、I-224に対し、I-220系列の最終改良型となったのがI-225で、1号機はI-220 試作2号機を改造して製作された。同機は改造によってエンジンがより強力なミクーリン AM-42B(ターボチャージャー付)に換装され、コックピットも与圧化された[6]。I-225は1944年7月21日にアレクセイ・ヤキモフの操縦によって初飛行したが、8月9日の15回目の試験飛行中に火災を起こして失われた[9][8]。そのため試作2号機が新造されることになり、同機は1945年3月14日にアレクサンドル・ディエフの操縦によって初飛行した[10]。2号機はエンジンがAM-42BからAM-42FBに[7]、ターボチャージャーがTK-300BからAMTK-1Aに変更されている[8]。
I-225は主翼を大型化したI-221系列の各機と比べて実用上昇限度では劣っていたが[8]、2号機は初飛行で720 km/hを記録し[7]、最終的には726km/h (高度10,000 m) という高速記録を残した[8]。これはソ連のレシプロ戦闘機としては歴代2位の記録となったが、既にジェット機の実用化が間近に迫っていたこともあり、この高速性能が本機の量産に繋がることはなかった[7]。
各機はその後も試験機や評価機として運用され、I-222は1945年7月、I-224は1946年、I-225は1947年3月に退役した[9]。
各型
- I-220 (MiG-11)
- 最初の試作型。2機新造。非与圧、ターボチャージャー未搭載[6]。
- I-221
- 主翼大型化モデル。1機新造。エンジンはミクーリン AM-39A。ターボチャージャー搭載。1943年12月2日初飛行、1944年2月7日墜落[6]。
- I-222
- I-221の改良型。1機新造。エンジンはミクーリン AM-39B。与圧キャビン、ターボチャージャー搭載。1944年5月7日初飛行、1945年7月退役[6]。
- I-224
- I-222の改良型。1機新造。エンジンはミクーリン AM-39FB。与圧キャビン、ターボチャージャー搭載。1944年9月26日初飛行、1946年退役[10]。
- I-225
- I-220の改良型。1機改造、1機新造。与圧キャビン、ターボチャージャー搭載[6]。
スペック
出典:「I-200/MiG-3ファミリーの開発と各型」 17頁[7]
| I-220 (MiG-11) |
I-221 | I-222 | I-224 | I-225 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 全長 | 9.5 m | 9.5 m | 9.6 m | 9.6 m | 9.5 m |
| 全幅 | 11.0 m | 13.0 m | 13.0 m | 13.0 m | 11.0 m |
| 翼面積 | 20.38 m2 | 22.38 m2 | 22.38 m2 | 22.38 m2 | 20.38 m2 |
| 自重 | 3,103 kg | N/A | 3,167 kg | 3,105 kg | 3,010 kg |
| 総重量 | 3,835 kg | 3,800 kg | 3,790 kg | 3,780 kg | 3,900 kg |
| 最大速度 (海面高度) | 625 km/h | N/A | N/A | 574 km/h | 560 km/h |
| 最大速度 (高空) | 695 km/h (高度7,500 m) |
690 km/h (高度不詳) |
691 km/h (高度 12,500 m) |
693 km/h (高度 13,100 m) |
726 km/h (高度 10,000 m) |
| 上昇性能 | 高度5,000 mまで4.5分 | N/A | 高度5,000 mまで6.0分 | 高度5,000 mまで4.8分 | 高度5,000 mまで4.0分 |
| 実用上昇限度 | 11,000 m | N/A | 14,500 m | 14,100 m | 12,600 m |
| エンジン | ミクーリン AM-39A 液冷V型12気筒エンジン (出力 1,800hp) ×1 ※1 |
ミクーリン AM-39A 液冷V型12気筒エンジン (出力 1,750hp) ×1 |
ミクーリン AM-39B 液冷V型12気筒エンジン (出力 1,750hp) ×1 |
ミクーリン AM-39FB 液冷V型12気筒エンジン (出力 1,750hp) ×1 |
ミクーリン AM-42B 液冷V型12気筒エンジン (出力 2,000hp) ×1 ※2 |
| 武装 | ShVAK 20 mm機関砲×4 ※1 | ShVAK 20 mm機関砲×2 | N/A | N/A | 20 mm機関砲×4 [6] |
脚注
- ^ アンジェルッチ & マトリカルディ 1981, p. 250.
- ^ a b c d e 藤田 2013, p. 23.
- ^ a b c d e 藤田 2013, p. 16.
- ^ ブリッジウォーター 2022, p. 19.
- ^ ブリッジウォーター 2022, pp. 19–20.
- ^ a b c d e f g h i j k l ブリッジウォーター 2022, p. 20.
- ^ a b c d e f g h i j 藤田 2013, p. 17.
- ^ a b c d e 藤田 2013, p. 24.
- ^ a b c ブリッジウォーター 2022, pp. 20–21.
- ^ a b c ブリッジウォーター 2022, p. 21.
参考文献
- エンツォ・アンジェルッチ、パオロ・マトリカルディ 著、石川好美 訳『航空機 第二次大戦II』木村秀政 監修、小学館〈万有ガイド シリーズ5〉、1981年。
- 藤田勝啓「I-200/MiG-3ファミリーの開発と各型」『第二次大戦ミグ戦闘機』 No.156、文林堂〈世界の傑作機〉、2013年。ISBN 978-4893192189。
- スティーブ・ブリッジウォーター 著、青木謙知 訳「ミグのピストン機」『ロシア戦闘機 MiG』ニュートンプレス〈ニュートンミリタリーシリーズ〉、2022年。 ISBN 978-4315525083。
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