ベリシャー・ビーコン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/12 21:46 UTC 版)
ベリシャー・ビーコン(英: Belisha beacon)は、イギリスをはじめ、多くのイギリス連邦国や以前イギリス植民地だった国の横断歩道で使われている高視認性交通標識である。
歴史と由来
1934年の英国交通法によって新設された横断歩道は[1]、道路に平たい鉄鋲を打ち付けて並べただけのものであったので視認性が悪く[注釈 1]、場所を分かりやすくするために、歩道の両端に白黒の縞模様のポールを建て、さらに夜間や霧の中でも見えるように、電気で点滅する球形の黄色いランプを上に取り付けた[3][4]。このランプのことを、当時の運輸大臣で創案者ともいわれるレスリー・ホア・ベリシャーにちなんで、ベリシャー・ビーコンと呼ぶようになった[5][6]。ポールを含めた全体を指してベリシャー・ビーコンと呼ばれることが多いが、本来は上についた球形のランプのことだけを指す[7]。
1935年からイギリス全国へ広がった。現在、イギリスの横断歩道は基本的に以下の3種類がある[8]:
- 島状安全地帯のみの横断歩道。交通標識や路面標示なし。自動車優先。
- ベリシャー・ビーコンが設置された横断歩道。路面標示は縞模様。歩行者優先。
- 信号機が設置された横断歩道。路面標示は縦の点線。信号によって通行権が変わる。
アイルランドでは、2022年より横断歩道の設置にかかる時間と費用を削減するため、ベリシャー・ビーコンを廃止した横断歩道や、電気点滅式のビーコンの代わりに固定式の反射板を設置した標識の利用などを、いくつかの自治体において試験的に許可している[9][10][11]。
イギリス国外における使用
香港
イギリス領香港政庁は、1950年代から従来の「紳士脚」行人過路処標識に代わってベリシャー・ビーコンおよび横断歩道を香港に導入し、あわせて歩行者交通安全を改善した。警務処交通部はさらに1958年に漫画キャラクター「斑馬佬」を導入し、市民に対して横断歩道(中国語: 斑馬綫)を利用して道路を横断するよう奨励した[12][要文献特定詳細情報]。英国法と同様、香港法例第374G章《道路交通(交通管制)規例》では、すべての横断歩道には少なくとも二つのベリシャー・ビーコンを設置しなければならず、かつ道路両側の歩道にそれぞれ一つずつ設置しなければならないと規定している。もし道路上に安全島が存在する場合には、安全島上に追加でベリシャー・ビーコンを設置することができる[13]。運輸署は2022年に、一部のベリシャー・ビーコンに黄色に点滅する光環を付設するとともに、灯柱が白色に点滅するようにして、運転者の横断歩道への注意を喚起する措置を約6か月間にわたって試行した[14]。
アイルランド
英国法の規定と同様に、アイルランドの「1997年道路交通(標識)規則(Road Traffic (Signs) Regulations, 1997)」では、すべての横断歩道には少なくとも二つのベリシャー・ビーコンを設置しなければならず、かつ道路両側の歩道にそれぞれ一つずつ設置しなければならないと規定している。道路上に安全島が存在する場合には、安全島上に追加でベリシャー・ビーコンを設置することができる[15]。アイルランド国家運輸管理局(英語: National Transport Authority (Ireland))は2022年10月24日より一部の横断歩道交差点において蛍光黄色縁の歩行者横断標識を用い、ベリシャー・ビーコンの代替とする措置を試みた。これは費用削減および設置時間の短縮を目的とするものであったが、この計画はベリシャー・ビーコンを直接廃止するものではない[16]。
マルタ
英国法と同様に、マルタ法例第65.05章「交通標識および車道標示規則(Traffic Signs and Carriageway Markings Regulations)」は、すべての横断歩道には少なくとも二つのベリシャー・ビーコンを設置しなければならず、かつ道路両側の歩道にそれぞれ一つずつ設置しなければならないと規定している[17]。
シンガポール
英国法と同様、シンガポール法例第276.33章「道路交通(交通標識)規則(Road Traffic (Traffic Signs) Rules)」は、すべての横断歩道には少なくとも二つのベリシャー・ビーコンを設置しなければならず、かつ道路両側の歩道にそれぞれ一つずつ設置しなければならないと規定している。道路上に安全島が存在する場合には、安全島上に追加でベリシャー・ビーコンを設置することができる[18]。シンガポールにおけるベリシャー・ビーコンの点滅時間は、毎日午後7時から翌日午前7時までに限定されている[19][要文献特定詳細情報]。
デザイン
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ベリシャー・ビーコンは白黒の縞模様の電柱である。電柱の上は点滅式の警光灯がある。イギリスにおいて、歩行者優先の横断歩道は全て2本設置する義務がある。島状安全地帯があれば、道路管理者の判断で3本以上設置するケースもある[20]。
点滅の周期は0.75秒点灯/0.75秒消灯を繰り返す[7]。
写真
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モデルTS2300の高視認性ベリシャー・ビーコン
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LEDが付いているベリシャー・ビーコン
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点灯しているLEDのベリシャー・ビーコン
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香港にあるベリシャー・ビーコン
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シンガポールにあるベリシャー・ビーコン
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ニュージーランドのベリシャー・ビーコンデザイン
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ベリシャー・ビーコンではないが、フランスにある同じ目的で設置された点滅信号機
脚注
注釈
出典
- ^ “Road Traffic Act, 1934” (英語). イギリス政府. 2026年1月18日閲覧。
- ^ Kat Eschner (2017年10月31日). “A Short History of the Crosswalk” (英語). Smithsonian Magazine. 2026年1月18日閲覧。
- ^ “Pedestrian Crossing-Places (Beacons)” (英語). UK Parliament. 2026年1月18日閲覧。
- ^ “History of road safety, The Highway Code and the driving test” (英語). イギリス政府. 2026年1月18日閲覧。 “‘Belisha’ beacons provide advanced warning of new pedestrian crossings.”
- ^ 卜部敏男『英国の民主政治』時事通信社、1947年、159-160頁。「町角には黄色い球を乗せた棒が立っている。霧の中でも割によく見えるものだ。これをその創案者たるホア・ベリシャ大臣にちなんでベリシャ・ビーコンといふ。」
- ^ Len Shackleton (2024年1月30日). “Remembering Leslie Hore-Belisha: the man behind the "Belisha Beacons" — Institute of Economic Affairs” (英語). 2026年1月18日閲覧。
- ^ a b “90 years of the Belisha beacon” (英語). simmonsigns. 2026年1月18日閲覧。 “many believe it refers to the entire post at a pedestrian crossing. In fact, the Belisha beacon is only the yellow globe lamp that flashes at the very top of these posts.”
- ^ (英語) Local Transport Note 2/95 The Design of Pedestrian Crossings. The Stationery Office, UK. (1995). p. 5-12. ISBN 0-11-551626-3
- ^ “Minister Ryan announces zebra crossing pilot scheme” (英語). アイルランド政府 (2022年10月24日). 2026年1月19日閲覧。
- ^ “ZEBRA CROSSINGS”. IrishCycle.com. Laois County Council (2024年1月). 2026年1月19日閲覧。
- ^ Cian Ginty (2026年1月12日). “Irish councils start rolling out zebra crossings without expensive beacons” (英語). IrishCycle.com. 2026年1月19日閲覧。
- ^ 邱 2021, p. 170.
- ^ “道路交通(交通管制)規例”. 電子版香港法例. 2024年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月20日閲覧。
- ^ “運輸署推行試驗計劃優化斑馬線設施(附圖)” (Press release). 香港特別行政區政府新聞公報. 22 April 2022. 2022年9月20日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2024年6月20日閲覧.
- ^ “S.I. No. 181/1997 - Road Traffic (Signs) Regulations, 1997.”. 愛爾蘭法例文本(英語: Irish Statute Book) (1997年5月1日). 2021年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月20日閲覧。
- ^ “Active Travel Pilot Scheme for New Zebra Crossings”. 國家運輸管理局 (愛爾蘭)(英語: National Transport Authority (Ireland)) (2022年10月24日). 2022年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月20日閲覧。
- ^ “Traffic Signs and Carriageway Markings Regulations”. Legislation Malta (1969年8月29日). 2023年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月7日閲覧。
- ^ “Road Traffic (Traffic Signs) Rules” (英語). Singapore Statutes Online (2024年5月1日). 2021年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月20日閲覧。
- ^ 邱 2021, p. 172.
- ^ “The Zebra, Pelican and Puffin Pedestrian Crossings Regulations and General Directions 1997 SCHEDULE 1” (英語). イギリス政府. 2026年1月19日閲覧。 “1.-(2) One globe shall be placed at each end of the crossing and, if there is a pedestrian refuge or central reservation on the crossing, one or more globes may, where the Department considers it necessary, be placed on the pedestrian refuge or central reservation.”
外部リンク
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