10月30日、未来の有権者たちが、思いを込めて本物の選挙さながらの1票を投じた。 現実の神奈川県茅ヶ崎市長選投票日と同じ日に行われた「こども選挙」の投票所には、背伸びをして投票用紙に向き合う子どもの姿も。 用紙に並ぶのは実際の候補者名で、投票箱や記載台も市選管から借りた本物だ。 「選挙権」があるのは市内在住の小学生から17歳で、投票だけでなく準備から子どもが関わった珍しい試み。開票までの2か月を追った。(写真と文 池谷美帆) 2022年11月7日公開
「こどもが聞いて、こどもが選んで、こどもが届ける」。自分たちが住む街への関心を持ってもらおうと模擬選挙を企画したのは、コワーキングスペース兼図書館を運営する池田一彦さん、美砂子さん夫妻。2人の子を持つ夫妻が、知人と雑談する中からアイデアが生まれた。「子どもが投票したら、どんな視点で選ぶんだろう」。6月に市内の有志で実行委員会を発足。公職選挙法が禁じる未成年者の選挙運動の参加にあたらないよう気を配り、市長選の開票後に結果を公表することなど、専門家の監修のもと進めた。
9月からは、公募で集まった市内の小学生15人がこども選挙委員として加わり、民主主義や選挙、茅ヶ崎について学んだ
約2か月間、何度も集まって選挙について考えた
自分たちが暮らす茅ヶ崎について考えるワークショップ。「残念だと思うところ」については、どうしたら解決できるかも話し合った
候補者へはビデオでインタビューすることに。質問も子どもたちが考えた(中央は一彦さん)
子どもたちに問いかける美砂子さん(左)
候補者への質問を議論する。最終的に、3問に絞られた
ビデオインタビューの収録。「子どもと大人の意見をどのようにして取り入れますか?」
音声を確認する子どもたち。後日3人の候補者全員から回答があり、「市長になるかもしれない人が、子どもの質問にちゃんと答えてくれた」と、選挙委員の児童は目を輝かせた
市内の学童保育で行われた「期日前投票」。投票の前に、ビデオインタビューで候補者の考えを聞いた
こども選挙委員(左)の案内で投票。本物の投票箱を前に、興味深げに列を作った
実際の市長選投票日の10月30日、趣旨に賛同する飲食店や商業施設などに、11か所の「投票所」が設けられた
「子どもも投票していいんだ」と、うれしそうに話す子も
頭を抱えて悩みながら、初めての一票。保護者は口出しできず、一人で記載台に向かう。
商店街の一角にも「投票所」が。「大人は本当の選挙へ、子どもは『こども選挙』へ!」投票所の案内なども、こども選挙委員が活躍した
投票時間が過ぎると、投票箱が集められた。「たくさん入ってるかな…」。そわそわしながら開票を待つ
集計も自分たちの手で
ネット投票と合わせて566票が投じられた。「最初なかなか子どもが来てくれなくて、どうしようかと思ったけど…」と、ほっとした表情を見せた
投票と同時に集めた候補者へのメッセージは、子どもたちの手で本人に届けられる。 一彦さんは「子どもも意見を言っていいんだと気付くことで、社会の一員であると感じるきっかけになれたら」。未来を担う子どもたちへ、思いを込めた