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室蘭での「3日ぐらし」——創業116年の松の湯に通う(北海道) | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
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朝日新聞デジタル

室蘭での「3日ぐらし」——創業116年の松の湯に通う(北海道)

ESSAY
2025.09.18

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夕暮れの松の湯

夕暮れの松の湯

  • 松本康治
    ライター・出版社経営

    1962年、大阪府生まれ。出版社勤務を経て、1987年に医療系出版社として「さいろ社」を設立。山歩き後の銭湯と、風呂上がりのビールを愛する。神戸市在住。「関西の激渋銭湯」「激渋食堂メモ」「ふしぎ山」などのサイトを主催するほか、銭湯ファンの仲間たちと「ふろいこか~プロジェクト」を立ち上げ、銭湯を勝手に応援している。著書に『レトロ銭湯へようこそ 関西版』『同、西日本版』『関西のレトロ銭湯』(戎光祥出版)、『ぼくが父であるために』(春秋社)、『看護婦(ナース)の世界』(共著、宝島社)など。

旅が好きだからといって、いつも旅ばかりしているわけにはいかない。多くの人は、人生の時間の大半を地元での地道な日常生活に費やしているはず。私もその一人だ。が、少し異なるのは、夕方近くにはほぼ毎日、その地域で昔から続く銭湯(一般公衆浴場)ののれんをくぐることだろうか。この習慣は地元でも旅先でも変わらない。昔ながらの銭湯の客は、地域の常連さんがほとんど。近場であれ旅先であれ、知らない人たちのコミュニティーへよそ者として、しかも裸でお邪魔することは、けっこうな非日常体験であり、ひとつの旅なのだ。

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無人終着駅

晩夏の北海道、室蘭線。濃緑の車窓に、青い海や黄色の花々がちらちらと現れては飛び去ってゆく。

線路は東室蘭駅で二股に分かれる。列車はここに長く停車したあと、よっこらしょという感じで絵鞆(えとも)半島へ向かう支線に入り、きつくカーブを曲がりながら巨大な製鉄所に接する三つの駅を過ぎて、10分ちょっとで終着の室蘭に到着した。

室蘭駅は2024年10月から終日無人化されてしまったため、運賃は車内で現金精算。たどり着いた終着駅が無人駅というのも味気ないものだ。でもローカル線が次々に廃止される時代、こんな小さな半島部に寸詰まりの盲腸線が残され、札幌からの直通列車が入るのは貴重なのかもしれない。

室蘭駅
室蘭駅

本当はいろんな街に住んでみたいけど、なかなかそうもいかない。そこで、何の用事もないけれども3日間だけどこか知らない街の安宿に滞在して、観光もせず食べ歩きもせず、あたかもそこの住民のように何食わぬ顔してふだん通りに過ごす。それを「3日ぐらし」と勝手に名付けて楽しむことを少し前に思いつき、以前の当連載のここ(高岡編)やここ(鳥取編)にも書いた。

室蘭には9年前にも来たことがある。地図を見て、フック状に北海道からぶら下がる絵鞆(室蘭)半島を、硬い甲羅を持つアルマジロ的な生き物のように感じた。

断崖絶壁の背中をV字に折り曲げて太平洋の風浪をはね返しながら、おなか側の室蘭港と市街地をやわらかく抱き込んでいる。その地形に興味をひかれ、チキウ(地球)岬を歩いたり、測量山や絵鞆岬から景色を眺めたりした。

9年前に訪れたチキウ岬
9年前に訪れたチキウ岬
9年前に訪れた測量山からの室蘭港眺望
9年前に訪れた測量山からの室蘭港眺望

そのときに地形や自然美以上に驚いたことがある。宿泊先は交通の便利な本線沿いの東室蘭にとっていたのだが、支線の終点にある室蘭の旧繁華街(中央町)に行ってみたらがくぜんとするほど寂れていたことだ。中心商業地の空洞化は地方都市でしばしば目にするが、ここの光景は何かの夢のあとのように感じられた。

いったい何があったのだろう。次回はこの「夢のあと」でもう少し時間を過ごしてみたい、と思ったのだった。

中央町の大町アーケード付近
中央町の大町アーケード付近
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4nBgoHUyBd3d
2025年9月27日 2:35 AM

 さびれてしまっている旧市街をおとずれ、かつての繁栄をそこはかとなく思い起こすことができるのは他所者(よそもの)のなせる業だ。日本のローカル(地方都市)でおこっている現実を客観的にみる良いチャンスだ。

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4nBgoHUyBd3d
2025年9月27日 2:35 AM

 さびれてしまっている旧市街をおとずれ、かつての繁栄をそこはかとなく思い起こすことができるのは他所者(よそもの)のなせる業だ。日本のローカル(地方都市)でおこっている現実を客観的にみる良いチャンスだ。