次世代原発の建設検討、従来方針を転換-GX実行会議で政府提案
梅川崇-
化石燃料への依存度高いほど「経済の不安定化要因に」との認識示す
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原発の運転期間、延長の在り方についても論点に盛り込む
政府は24日、首相官邸で開いた「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、安全性が高いとされる次世代原子力発電所の建設を検討する案を示した。ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー市場の混乱で、電力の安定供給が危ぶまれていることを背景に、原発の新設は想定しないとしていた従来方針を転換する。
オンラインで会議に出席した岸田文雄首相は、ロシアによるウクライナ侵攻で「世界のエネルギー事情が一変し、グローバルなエネルギー需給構造にも大きな地殻変動が起こっている」と強調。その上で、「再生可能エネルギーや原子力はGXを進める上で不可欠な脱炭素エネルギーだ」と指摘した。
供給リスクを抱える液化天然ガス(LNG)に関連して、危機ケースを念頭に事業者間で融通する枠組みの創設に着手する方針も示した。
政府は提示した資料の中で、足元の石油・ガス市場の混乱に触れつつ、今後最もLNGの需要が伸びる来年1月には、スポット市場での争奪戦が過熱する可能性があるとした。
化石燃料への依存度が高いほど「経済の不安定化要因が大きくなる」との認識も示し、安定的な電力供給と2050年のカーボンニュートラルを実現するためには、次世代原発の開発や建設が欠かせないと判断した。
原発を巡って政府は、これまで新増設や建て替え(リプレース)については想定していないとの立場を維持していたが、この方針を転換する。
資源エネルギー庁によると、国内では現在10基の原発が再稼働済みで、GX実行会議では来夏以降に追加で7基の再稼働を目指す方針を確認。地元の理解確保に向けて、国が前面に立って対応を行うとした。
また、原則40年・最長60年と法律で定められている原発の運転期間についても、延長の在り方について今後の論点に盛り込んだ。岸田首相は、次世代原発の開発などと併せて年末までに具体的な結論を出せるよう、検討を加速するよう求めた。
会議の運営を担う事務局の担当者によると、民間の有識者からは次世代原発の開発や建設に対して明確に反対する意見は出なかったという。
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