総務省「インターネット地図情報サービスWG」の報告書案公表
22日の総務省研究会の後、朝日新聞がいち早く「グーグルストリートビュー法規制見送り」という記事を出していたが、この報道はいささか偏向したものだったようだ。その後、総務省が研究会の配布資料を公表しており、23日のINTERNET Watchの記事「ストリートビューの法的問題を整理、総務省の研究会」が、報告書案の内容を詳しく紹介している。朝日新聞の記事を読むと、ストリートビューには何ら問題がなく、新たに法規制される余地もないという結論が出されたかのような印象を受けるが、INTERNET Watchの記事では、報告書案が「道路周辺映像サービス提供者に一定の法的リスクが残ることは避けられないと指摘している」点や、「一般市民の心理を踏まえれば、法的な問題を克服できたとしても直ちに受け入れられるサービスと言えるわけではない」、「道路周辺映像サービスは必ずしも社会的合意を形成した上で提供されてきたとは言い難い」とされた点を紹介している。
この内容は、配布資料のうち「インターネット地図情報サービスWG報告書(案)」(PDF)の部分に書かれている。内容は、(1)国内のストリートビュー類似サービスの現状、(2)国内での反発の状況、(3)海外での状況、(4)日本で懸念される法的問題、(5)より信頼されるサービスに向けた具体的提言という構成になっており、法的問題では、個人情報保護法との関係、「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」との関係、プライバシー権・肖像権との関係について検討されている。タレコミ人が興味深いと思ったのは、総務省の「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」で言う「電気通信事業者」は、電気通信事業法で定義されている「電気通信事業者」より広い概念であるため、ストリートビューのようなサービスを提供する事業者は電気通信事業者に該当するのだそうで、このガイドラインの適用対象となるとされている点だ。ということは、ガイドラインを改訂することで、国民の不満の声に比較的臨機応変に対応していけるということではないだろうか。
しかしながら、たしかにこの報告書案では、いずれの法律にもストリートビューは抵触していないと結論付けている点は否めない。23日のストーリーのコメントにも出ていたように、顔の隠されていない生画像が保管されているかもしれないのに、報告書案が「顔の部分にぼかしをかける等の措置を講じた上で公開している限り、個人識別性を欠き、「個人情報」には該当しない」と結論付けたことには疑問がある。驚いたのは、このワーキンググループのメンバー構成だ。同資料の49ページにメンバーリストが次のように掲載されている。身内ばかりで構成されていて、撮影されて困っている人の立場での出席者がいない。
- 主査 森 亮二 英知法律事務所 弁護士
- 主査代理 上沼 紫野 虎ノ門南法律事務所 弁護士
- 構成員 石井 夏生利 情報セキュリティ大学院大学准教授
- 構成員 藤田 一夫 グーグル株式会社 ポリシーカウンシル
- 構成員 楠 正憲 マイクロソフト株式会社
- 構成員 島本 学 NTTレゾナント株式会社 企画部法務考査部門長
- 構成員 中川 譲 一般社団法人インターネットユーザー協会 理事
MIAUからの出席者もあったようなので、MIAUがこの問題にどのように取り組んでくれたのか、いつものように公式サイトで声明を出してほしいと思う。