自転車が今みたいなブームになる少し前、MTBでクロスカントリーをやっている知人に聞いた話なのだけど、山中のクローズドでないコースでは、しばしば自動二輪のオフ車に出くわすのだという。オフ車は激坂の常として、スロットルを開けて土をはね飛ばし轍を掘り返しながら登っていくのだが、そんなとき知人やその仲間の自転車乗りは、腕を組んで道の両脇に立ち、怒りと殺意を込めた視線でオフ車乗りを睨み付け続けて、オフ車が走り去るか引き返すまでプレッシャーをかけ続け、絶対に休憩なんかさせないのだそうだ。山の中のバイクは道を荒らす敵だから死ねばいいと思っていると、楽しそうに語っていた。
自分はバイク乗りではあるけれど、子供の頃に父親に連れられて何度も山登りをし、山道を荒らすことへの禁忌をしっかり教えられたせいか、恥ずかしげもなく道を削るオフ車の走り方は正視に堪えないくらいではある。けれどそれでも、この知人から聞いたエピソードの、バイクへの敵意とかそういう次元ではないあれこれが、自転車乗りの類型として自分の中にずっと留まっている。
いやKindleで「のりりん」の1、2巻が無料だったので読んだんだけど、あれは本当に布教漫画だよなあ。「自転車乗り界隈には色々思うことはあるだろうけど、一度乗ってみなよ世界が変わるから」という導入とメカに関する蘊蓄で、実際あの漫画を読んで自転車に乗り始めた人もいるだろうと思う。そして、一度中に入ってしまえば、自転車乗りの世界が居心地よく感じる人もいるだろうなと。特異な世界に抵抗を感じていた人ほど好きになるかも知れない。自分だって、仲間に入れてもらえさえすれば、嬉々として山中のオフ車を睨み付けるだろうしな。
とりあえず、のりりんは続刊も買ってみようと思う。自分も元々は自転車は嫌いじゃなかったのだし、きっと楽しめるだろう。
(2018年08月23日 8時25分)
追記
結局Kindleで全巻購入して読んだ。いや結構面白かった。主人公の謎のモテ具合はもはや作者の側も投げやりになっている感がしなくもなかったのと、終盤はやや駆け足で畳んだ気配がなきにしもあらずだったのは少し残念だったけれど、きれいに終わってひと安心。
しかしレースに出場するときのチーム名が「チームKANPAI」という、社会人サークルにありがちすぎる(そして個人的に嫌いな)ノリで笑ってしまった。そうなんだよなあ。こういう、平均より上の連中の余裕、みたいなものが、そして趣味の本体以外の「飲ミニケーション」がたっぷり付属してくるところが嫌いだったのだ。