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『ようこそ邪神さん』 ☆新一 | TarZの日記 | スラド
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日記

TarZの日記: 『ようこそ邪神さん』 ☆新一 11

日記 by TarZ

 ある晩、エヌ氏がふと日記を書く手をとめて窓を見ると、窓辺にぬるぬるした触手がちらりと見えた。

「なんだ、こんな夜に。お前は誰だ」

「夜分に申し訳ありません。私は邪神の使いです」

「ははあ、深きものどもとか、ニャルなんとかいうやつか。本で読んだことがある。その触手を見ると悪友連中のドッキリというわけでもなさそうだ。この俺になんの用だ」

「なに、ちょっとしたことです。正気を保つ人間を探しているところです」

「あいにく俺は正気など持ち合わせていないぞ。この間も上司の無茶な要求でSANロールに失敗したばかりだからな。この世界に絶望しかけ、今も日記に呪いの言葉をしたためていたところだ」

「そういう、辛うじて正気を保っている人間こそを求めているのです。私は、あなたの望む奇蹟を一つかなえて差し上げようというわけで」

「なんだと? ははーん、魂胆が読めたぞ。奇蹟をかなえる代わりに、魂を抜き出そうというのだろう」

「察しがいいですね。その通りです。しかし、なにも魂をとって喰おうというわけではありません。脆弱な肉体から解放するだけです。それに、どんな願いもかなえて差し上げられるのですよ。悪い話ではないと思いますがね」

「どんな願いも、か」 エヌ氏はペンを置き、しばし考えた。

「どんな願いでもかなえられるのなら、悪くない話かもしれないな」

「そうでしょう。邪神の世界も受注競争が激しい。名状しがたき顧客満足度のようなもの向上が我々のモットーです」

「いいだろう。では俺の願いを言おう。俺の願いは…」

「願いは…?」

「過去に戻って、あなたとの出会いをやりなおしたい! 窓辺の触手を見て淡々と日常会話を進める私じゃなく、恐怖と狂気に駆られてコズミックホラーな日記を書き続ける脆弱な私になりたい!」

「なんて人だ。そんな願いがかなうとしたら、それはこの星新一ワールドに対する冒涜だ。君は筒井康隆にでもなるつもりかい」

「だが、どんな願いもという約束だったぞ。さあ、かなえてみろ」

 邪神の使いは、一つしかない目を白黒させ、二つある口からこの世ならざる苦悶の声を絞り出しながら触手をかきむしった。「ループネタかよ!」

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