暇潰しと息抜き
VerdictDay7日目―ゲヘナ自治区―
ゼル「ンなるほどォ~……救難信号ォ?の発信源を辿れば先生とバッタリ出会えちまうってェ訳かァ……」
ツノエ『はい……彼/彼女がいるというだけで、全体の士気が高まっているように感じます。ゼル、くれぐれも先生と相対した時はお気をつけて』
ゼル「オウ、肝に銘じとくぜェ~。それよか、オメェら今どうしてンだ?」
ツノエ『天罰丸を改修するべく、マモさんに助言をいただこうと白夜に向かっているところです』
ゼル「ほォ~ん……」
ツノエ『ゼルは今何を?』
ゼル「あたしかァ~?あたしはよォ~……」
バシンッ!!
片目隠れの風紀委員「きゃあっ!!」
ドサッ…
尻尾の長い魔巣会若衆「らくしょー……」
ゼル「暇潰し……マジでクソつまンねェー」
尻尾の長い魔巣会若衆「姐御も動いてほしい」
ゼル「イヤだね。うまあじがねェ」
尻尾の長い魔巣会若衆「舌肥え過ぎ……」
ゼル「ンなことよりよォ!さっさと先生にちょっかい出しに行こうぜ!サンの依頼だからって渋々受けたけどよォ……流石に退屈過ぎンぜ……!」
焔陽魔巣会の若頭「命令は命令です。しっかり熟しましょう」
ゼル「ん~……」
イオリ「……んなに……退屈……なら…!」
ゼル「ア?」
イオリ「私がっ!!」
尻尾の長い魔巣会若衆「っ!(バッ)」
ゼル「退いてろ(ダッ)」
イオリ「このっ!!(カチャ)」
ゼル「へっ!(ピンッ)」
パァアンッ!!
ボシュウウウウウウウウ!
イオリ「くっ!?」
ヒュオンッ!!
ゼル「うおっと…」
イオリ「くそっ……!どこに行った!?焔陽ゼル!!」
チナツ「イオリ!一度下がってください!」
イオリ「規則違反者を前に、下がれるか!!」
ゼル「メガネっ子の言う通りだァ落ち着けよお嬢ちゃ~ん♪」
イオリ「お嬢ちゃんなんて呼ぶな!銀鏡(しろみ)イオリだ!!」
ゼル「アァ?知らねェよ。ザコの名前なンか憶える訳ねェだろうがよ。顔だって怪しいわ」
イオリ「バカにして……!けほっ……どこだっ!!」
チナツ「イオリ!いいから下がって……煙幕から抜け出してくださ……(ドガッ)きゃあっ!?」
ドサッ!
イオリ「チナツ!?」
タッタッタッタッタッタッタッ!
イオリ「っ!?そこだ!(カチャ)」
パァアンッ!!
ゼル「ハズレだ」
イオリ「なっ!?」
ゼル「オラッ!!(カチャ)」
バララララララララララランッ!!
イオリ「(バヂュンッ!!)うあぁっ!?」
ドサッ…
イオリ「くっ……!」
ゼル「…………(ジャキッ)」
焔陽魔巣会の若頭「おぉ~……(パチパチパチ)」
弱気な風紀委員「た……助けを呼ばないと…」
尻尾の長い魔巣会若衆「………まだ生き残りがいる(ダッ)」
焔陽魔巣会の若頭「血の気多いですねー」
イオリ「……………っ!」
ゼル「そう睨んだってしょうがねェだろォ。睨んだからって、オメェとあたしの差は埋まンのか?埋まらねェだろ」
イオリ「規則違反者のクセに……説教垂れるな!!」
ゼル「へっ……口だけは達者だよなァ~。あたしに一回でも勝ったことあるかよ。ア?」
チナツ「う……ぐっ……」
ゼル「…………」
コツッコツッコツッコツッ…
チナツ「はぁ………はぁ………」
ゼル「なぁメガネの嬢ちゃん。なんでオメェらはあたしに勝てねェと思う?」
チナツ「…………」
ゼル「答えられねェようなことかァ?単純だろうが、オメェらがヒナの強さに胡坐掻いて、強くなろうとしねェからだろうが」
イオリ・チナツ「「…………っ!?」」
ゼル「ヒナ強ェもんなァ頼りにしてェだろうよ。だがよォ……そんな甘えた態度取ってからァ!強くなろうとするハングリー精神が足りてねェからァ!!勝ちに貪欲になろうとしねェからよォッ!!!」
ゼル「………あたしに一度だって勝てねェ。あたしだけじゃねェぞ?オメェらがそんな体たらくだから、『ヒナのいない風紀委員会は何てことない』って舐められるんだろ。違ェか?」
イオリ「…………違う……!」
ゼル「そうなのか?純度100%、オメェらの怠慢なんじゃねェのか?」
イオリ「違う!!」
ゼル「どうだか……『ヒナ委員長は特別』、『あの人は次元が違う』なァんて、オメェら心のどっかで諦めてンだろ?」
風紀委員たち「「「………っ!」」」
ゼル「それがいけねェって話なんだよ。オメェら勝手に限界決めつけちまってんじゃねェか。そら弱ェままに決まってんだろ」
ゼル「メガネの嬢ちゃんもそう思わねェか?(ツンツン)」
チナツ「くっ……!」
イオリ「チナツからぁ……!はなれろぉおおっ……!!」
ゼル「ならよォ……(クンッ)」
ジャキンッ!!
チナツ「ヒッ…!?」
チナツ(踵から仕込みナイフが…!)
ゼル「守ってみろやァアアッ!!!(ブンッ!!)」
イオリ「うああああああっ!!!!(ダッ)」
ガギィインッ!!
ゼル「ほォ~……」
イオリ「はぁ……!はぁ……!」
ゼル「脇が甘ェよなァ(ジャキッ)」
イオリ「っ!?チナツ…!!(ガバッ)」
チナツ「へっ?」
バララララララララララランッ!!
イオリ「うぐぁああああっ……!くっ…」
ゼル「…………」
焔陽魔巣会の若頭「姐御?」
ゼル「飽きた」
焔陽魔巣会の若頭「はえっ?」
ゼル「せんせェ探しに行く♪」
焔陽魔巣会の若頭「えっ!?あっ…!こ、こいつらどうするんですか!?」
セル「アリトゥーに連絡しとけェー。サンにはあたしから報告しとくからさァ~。ンじゃ、よろしくな~♪」
焔陽魔巣会の若頭「あっ……はい……」
斧投げ名手な若頭補佐「もう終わりかい?あたいはまだやり足りないぞ~?」
盾持ちの風紀委員「ひ、ヒィ~…!も、もうやめて~!!!」
焔陽魔巣会の若頭「あっ!やめぇー!戦闘終了ぉお~!!」
コタコト喋りの若頭補佐「モウ終ワリナンデスカ~!?」
片角の魔巣会若衆「ま、まぁ…!もういいんじゃないっスか?ちょっと疲れたっス……」
焔陽魔巣会の若頭「事後処理しましょうか……」
魔巣会の若衆たち「「「はーい」」」
━━━━━━━
コッ…コッ…コッ…コッ…
ゼル「………」
ゼル「あ~ホント……」
ゼル「………」
ゼル「クソつまんねェ(ポチポチ)」
ゼル「…………」
ゼル「おう、サンか?」
サン『はい、サンです。どうかしましたか?』
ゼル「ご依頼の『暴徒鎮圧』、終わったぞォー」
サン『そうですか……それは何よりです!』
ゼル「嬉しそうだな?」
サン『ゲヘナ自治区の行政をお任せしている副長より通報がありまして……旧風紀委員会の動きにより市民が怯えていると………ゼル君、ありがとうございます…!』
ゼル「治安維持なんぞ興味ねェよあたしにやらせんじゃねェ」
サン『うぐっ……も、申し訳ありません…』
ゼル「オメェの頼みなら別に断りはしねェけどよ……暫くはまた好きにやらせてもらうぜ?」
サン『はい。構いませんよ。それと……あの…』
ゼル「ヒナはいなかったぞ」
サン『っ!そ、そうですか……』
ゼル「冷静に考えてみろって。ヒナがいたらこうして連絡できてねェよ」
サン『むぅ…』
ゼル「まぁ?可能性がねェ訳じゃねェがな?百回に一回くらいはイケるかな?」
サン『……楽しそうですね』
ゼル「いいやまだだ。もっと楽しめそう、そんな予感がしてンだよ。結構当たるぜ?あたしの勘」
サン『…………あまり期待しないでおきます。ゼル君の楽しいは、私にとっての悩みですから』
ゼル「あたしのことなんだと思ってンだよ」
サン『む………問題児……ですかね?』
ゼル「ひでェなァ」
サン『今までのあれこれを思い返すと……ゼル君は私に迷惑ばかりかけていますからね。時に襲撃してみたり、時に誘拐してみたり、時に……お、お尻を引っ叩いたり……』
ゼル「オメェのケツがデケェのが悪ィ。それに、襲撃だの誘拐だのと人聞きの悪ィ……ただちょ~っと遊んでもらってるだけじゃねェかよ」
サン『………デカくありません、普通です。それに!相手の意志を問わず連れまわすのは、『遊び』ではなく『誘拐』です』
ゼル「意志を問わずって………温泉行った時のオメェの顔忘れてねェからな?ンだよあのふにゃあっとした顔はよォ!あれで『不合意でした』は流石にヴァルキューレが出動する案件だぞ」
サン『むむむ……』
ゼル「はいあたしのかちー!オメェもう二度と襲撃だの誘拐だの言うんじゃねェぞ。言ったらケツ引っ叩くからな」
サン『………ヒドイです』
ゼル「へへへっ♪」
サン『もぅ……』
ゼル「アァ~……いい気分転換なったわありがとなー」
サン『……………では、引き続き頑張ってくださいね』
ゼル「あ~い」
プツッ
ゼル「…………」
ゼル「せんせ~どこにいっかな~……」