裏切りの容疑者
VerdictDay4日目―▽◇自治区、セーフハウス―
シロコ「ん……」
“シロコ?どうかしたの?”
シロコ「ん……先輩たちと連絡が付かない………ごめん先生。色々手伝いたいけど、一旦アビドスに戻る。また来るから」
“うん。気をつけてね、シロコ”
シロコ「ん」
ヒフミ「あっ!し、シロコさぁんっ!!」
シロコ「ヒフミ……どうかした?」
ヒフミ「こ、これを…!」
シロコ「………無線機?」
ヒフミ「モモトークや通話は、距離が空いてしまうと使えなくなりますが、こちらは問題なく使えましたので、一応お渡ししておきます!これ、周波数のメモです!」
シロコ「………ん。ありがとう、ヒフミ」
ヒフミ「シロコさん、道中お気をつけて」
ユキノ「ヴァーディクターズを観察してて気づいたことは、どうやら彼女たちは住宅街や一般市民の多い場所だと、銃撃戦を避けるようだ。住宅街を通れば、仮に追跡されたとしても振り切ることができるだろう」
シロコ「ん。ありがとう。肝に銘じておく」
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“………じゃ、私もそろそろ出発しよっかな”
コノカ「せんせ、気を付けてくださいっす。何かあったら、すぐに逃げるんすよ」
“うん。わかってる、ありがとうコノカ”
イロハ「先生。写真・映像記録整理し終わりました」
マシロ「こっちも、準備できました」
“………ムリに付いて来なくてもいいんだよ?二人とも……”
イロハ「いえ。実際に例の兵器を確認したのは私たちですし、先生にばかり危険なことをさせる訳にも行きません」
“…………マシロも同じ気持ち?”
マシロ「はい!」
“そっか………うん、わかったよ”
ニコ「先生。こちらも準備できました」
クルミ「護衛は任せなさい!!」
オトギ「護衛は専門分野ではないけどね」
クルミ「できない訳じゃないわ!」
”クルミ、もう平気なの?”
クルミ「一晩寝たし、これくらい平気よ」
“そっか……ムリしないでね”
ユキノ「先生。準備ができているなら、行くぞ」
“うん。よろしくね、FOXのみんな”
ミヤコ「先生……お気をつけて…」
“うん。何かあったら連絡してね”
ミヤコ「はい…」
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―ミレニアム自治区・××自治区間バイパス―
ニコ「…………うん?」
ユキノ「FOX2、速度を落とせ」
ニコ「うん」
オトギ「なになに~?あれは………ヴァーディクターズの制服?」
クルミ「検問ね。停められるわよ?突っ切るの?」
ユキノ「いや。突っ切ろうものなら即刻攻撃されるだろう。大人しく応じよう。先生を毛布で隠してくれ」
オトギ「はーい。せんせ~、ちょっと我慢しててね~」
ユキノ「銃器も………(ガチャガチャ)隠してくれ。後、後ろの二人も隠れてくれ。座席の影でもいい」
クルミ「はいはい」
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―ミレニアム自治区・××自治区間、検問―
猫目のヴァーディクターズ検問官「ごめんごめ~ん。ちょっと止まってもらってい~い?」
ユキノ(巧いことをするな………検問をミレニアム自治区より外側、××自治区側に設置することで、ミレニアム側からの行政干渉をされないようにしているのか………となると、××自治区は既にヴァーディクターズに従属していると見るべき……いや、大部分の小規模自治区がそうなのだろうな。ヴァーディクターズに従属し銃器を差し出し、代わりにあの兵器群による治安維持の提供……か)
ニコ「どうしたんですか~?」
猫目のヴァーディクターズ検問官「悪いね~足止めさせちゃって。今銃器の規制行ってましてね。知ってます?」
ニコ「あぁ~……はい!先日の放送見てましたので……」
猫目のヴァーディクターズ検問官「うん、そういう訳でさ。ちょっとだけ検査させて貰っていい?」
ニコ「銃器ならもう前に没収されてて……」
猫目のヴァーディクターズ検問官「悪いけど、こっちもその発言を易々と信用する訳には行かなくてね」
ユキノ「………(チラッ)」
黒い天使羽のヴァーディクターズ検問官「…………」
山羊角のヴァーディクターズ検問官「…………」
ユキノ(三人…………二人はトリニティとゲヘナの出身か……?あの二人、やり手だな……)
猫目のヴァーディクターズ検問官「という訳でさ、車内の方軽~く確認させてもらっていい?」
ニコ「はい」
ガラッ!
猫目のヴァーディクターズ検問官「むむむ…」
オトギ「どぉ~?何もないでしょ?」
猫目のヴァーディクターズ検問官「………その毛布なに?(ポスポス)」
“ん……”
クルミ「あぇっと……寝てる!そう寝てるの!ちょっと長旅でさ」
ユキノ「死ぬほど疲れてる。起こさないでくれ」
猫目のヴァーディクターズ検問官「……………(ジッ)」
ユキノ「…………」
オトギ「………」
ニコ「…………」
クルミ「………っ!(ゴクッ)」
猫目のヴァーディクターズ検問官「うん、いいよ。通ってどうぞ~。悪いね、時間取っちゃって」
ニコ「いえいえ、それでは~……」
ブロンッ!ブロロロロロロロロロロッ……
黒い天使羽のヴァーディクターズ検問官「よかったんですか?通しちゃって。怪しさムンムンでしたけど」
猫目のヴァーディクターズ検問官「う~ん……とりあえず火器の類は持ってなかったし、ここで暴れる訳には行かないしさ」
山羊角のヴァーディクターズ検問官「でもあの制服、どこの学校の所属なんだろ?」
猫目のヴァーディクターズ検問官「さぁ……」
黒い天使羽のヴァーディクターズ検問官「とりあえず写真は押さえておきましたので、本部に送ってみます」
山羊角のヴァーディクターズ検問官「サン様に負担かけちゃうの?」
黒い天使羽のヴァーディクターズ検問官「う゛っ……!イヤな言い方をしないでくださいませ!連邦生徒会の職員の方で生徒の照会をお願いしようというだけです!(ポチポチ)」
山羊角のヴァーディクターズ検問官「会いたいなー」
猫目のヴァーディクターズ検問官「うん……あと32時間で別の班と交代だし、それまで気を抜かず!」
山羊角のヴァーディクターズ検問官「はーい」
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―ミレニアム自治区―
ニコ「何とか誤魔化せたねーユキノちゃん」
ユキノ「時間の問題だろう。私とニコの顔写真を撮られた。照会されれば一発で矯正局に収監中だったSRTの生徒だったこどがわかるし、付随して先生と脱走したこともバレてしまうだろう」
クルミ「帰りはあそこ通れないわね~」
マシロ「先生。ミレニアムの生徒に連絡は付きそうですか?」
“ユウカにモモトーク送ってみたけど………どうかな”
クルミ「………不思議ね」
オトギ「何が~?」
クルミ「ここの自治区の住民たち、生徒から一般市民に至るまで、銃器の没収なんてされてない」
オトギ「一切干渉してないんだね。あの検問までがヴァーディクターズの手が伸びてるエリアなのかな?」
イロハ「ポジティブに考えるなら、そうですが………ミレニアムがヴァーディクターズと手を組んでいないとも断言できないんですからね…」
オトギ「それもそうだけどさー……いがみ合ってても仕方ないじゃん?容疑の段階で、攻撃なんてできないよ。それにさ、もし本当にミレニアムが一枚噛んでて、ヴァーディクターズに協力してるなら、今頃、とっくに襲われてるんじゃない?」
イロハ「…………むっ……」
ピコンッ♪
“あっ、ユウカから返信が来た”
クルミ「なんて?」
“………ミレニアムタワーの、エンジニア部の部室で会おうって”
クルミ「あたしらの目的地と一緒じゃない」
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―ミレニアムサイエンススクール、エンジニア部―
ユウカ「先生。ようこそいらっしゃいました」
ウタハ「私たちに話があると聞いているが、一体何かな?」
“実はね…”
イロハ「既にご存知でしょうが、三日程前ヴァーディクターズなる組織に、ゲヘナやトリニティ……他にも、SNS上でわかっている限りで、山海経や百鬼夜行、レッドウィンター、オデュッセイアといった学園が襲撃を受けました」
ウタハ「そうだね。それはもちろん私たちも知っている。無論、例の放送も見ていたよ………私たちの関与を疑われていることも、ユウカから聞いている」
マシロ「……この写真を見て下さい(スッ)」
ウタハ「……………これ………は?」
マシロ「トリニティやゲヘナで暴れていた、ヴァーディクターズが保有する兵器の写真です!鮮明ではないので、判断に困るかと思われますが、これらにお心当たりはありませんか!?」
ウタハ「…………」
イロハ「………判断し兼ねるようでしたら、こちらの映像もどうぞ」
コトッ…
ウタハ「………………」
イロハ「これは、ゲヘナ学園から脱出する際、件の兵器に追われている最中を録画したものです」
―イロハの記録映像―
ガシャンッ!ガシャンッ!ガシャンッ!ガシャンッ!
L.A.W.S_TypeREX『――――――ッ!!!!!』
虎丸の操舵手『車長、アレは一体何なんですか―ッ!?』
イロハ『わかりません!今はとにかく全速力で……!』
プツッ
イロハ「………如何でしょう?」
ウタハ「……っ!」
イロハ「心当たりがある……そうですね?」
ウタハ「……………」
イロハ「はぁ……だんまりですか…」
マシロ「簡単なことじゃないですか!!貴女方はこの件に関与しているんですかしていないんですか!どっちなんですか!?」
ウタハ「……………………」
ヒビキ「ウタハ先輩……」
マシロ「答えてください!!!私たちは突然、何の前触れもなく、居場所を、日常を、青春を失ったんですよ!?私たちには知る権利がある!!答えてください。どっちなんですか!?(ジャコンッ)」
オトギ「ちょっ!落ち着いて落ち着いて…」
“ウタハ……教えてほしい。これは……”
ウタハ「マモだ……」
“………え?”
ウタハ「これらは全てマモが作ったものだ。設計図を見たことがある…」
“ほ、ホントにマモなの?誰かがマモの技術を盗んだとか…”
ウタハ「先生、否定したい気持ちは私もよくわかるよ。でも……別の誰かでは絶対にない。マモの技術は、簡単に盗める程安い物ではないんだ。私にだって、そう簡単にできることじゃない。例え、カイザーの様な大企業であったとしても、できない………彼女にしか、造れないんだ」
“……そんな………”
コトリ「そ、それこそあり得ませんよ!マモ先輩は確かにこういう戦闘ロボットの類が好きな人ではありましたが、決して……決してこのようなことに手を貸す人では…!!」
ヒビキ「………」
ニコ「………ユウカさん。マモという人は?」
ユウカ「あ……えっと…実は………」
“ユウカ、正直に話してあげて”
ユウカ「………すみません先生。実は、先生にもウソを吐いていました……」
“………っえ?ウソ?”
ユウカ「はい………マモ先輩は、突然いなくなったんじゃないんです。マモ先輩は、ブラックマーケットなんかの裏社会と違法な取引をして金銭を獲得していて……それで、マモ先輩を反省部屋に拘束したんですが…………逃亡したんです」
“……………”
ユウカ「違法なことをしたのは事実です。でも……マモ先輩はこれまで、様々な点でミレニアムに貢献してきた人です。そんな人に犯罪者の烙印を押すなんて………できなくて、自主退学という扱いに……」
クルミ「つまり、ヴァーディクターズに協力して、あの兵器を造っていたのは、そのマモって人?」
ユウカ「そういうことに………なるかと……」
オトギ「じゃあ、ミレニアムサイエンススクールは、直接の関与はしてなかった訳だ。ひとまずは安心していいのかな?セーフハウスのみんなを納得させられそう」
ウタハ「…………(フラッ)」
ヒビキ「………ウタハ先輩…?」
ウタハ「すまない…………一人にさせてくれ。色々と……考えたいんだ……」
“ウタハ……”
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オトギ「ねね!セミナーの……ユウカだっけ?なんとかそっちと協力できないかな?」
ユウカ「協力……ですか?」
オトギ「そそ。私たちはヴァーディクターズを止めたい。キヴォトスを変えたいって気持ちはわかるけど……それでも、一般市民や罪のない人にまで迷惑を掛けるなんてダメ。SRTとして見逃せないしさ。ね?先生」
“そうだね………サンちゃんのやり方は間違ってる。話せばわかる子だし、何とか止めさせたい”
クルミ「そっちとしても、マモっていう犯罪に加担したやつをどうにかしたいでしょ?自分たちの名誉のためにもさ」
オトギ「ちょっとクルミ……もうちょっと言葉選んで…」
ユウカ「………わかりました。協力できることは、積極的に協力したいと思います。先生、当面の目標は……」
“まずは、各学園から逃げ延びた子や、囚われている子を助け出したい”
ユウカ「……わかりました」
ニコ「ミレニアムが敵じゃないってわかっただけでも、大きな収穫だね、ユキノちゃん」
ユキノ「………そうだな」
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―ウタハの私室―
ウタハ「マモ…………どうしてだい、マモ……どうして君は………そんなにも変わってしまったんだい……(グシャ)」
ウタハ「何が………何が君を変えたんだい……マモ………………マモ……」
コンコンッ
ウタハ「……………」
アリス「ウタハ先輩!アリスです!お願いがあります!!」
ウタハ「アリスか………すまない。君のお願いを聞ける気分ではなくてね……ヒビキたちに相談してくれるかい?」
アリス「コトリたちから部屋にいると聞きました。アリスの……アリスの『光の剣』を直して欲しいんです!バラバラに壊されてしまって………ウタハ先輩、お願いします!」
ウタハ(『光の剣』……あれは……)
ウタハ「あれは………あれの基本を設計し造り上げたはマモなんだ。バラバラに壊れてしまったというのが、どういう状態なのかはわからないが……一から作り直す必要があるだろう。私にはできない。マモがいなければ、アレは再現できないんだ…………申し訳ないが、諦めてくれ。アリス」
アリス「そんな……!ウタハ先輩、お願いします。ウタハ先輩!!」
ウタハ「頼む…………帰ってくれ……!」
アリス「…………っ!ごめん……なさい。アリスは……もう行きます……」
ウタハ「どうして………なんだ…!(ガリッ)」
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―白夜、マモのラボ―
ゼル「いやすげー!なんだよあの装置ィ!連邦生徒会から白夜までテレポートしたぞ!!」
マモ「物質を量子レベルまで分解しエネルギー波に乗せて運ぶシステムだ」
ゼル「SFでよく見るアレか!?そんなの実現できンのかよ!!」
マモ「他ならない、Mk-Ⅱのおかげだ。Mk-Ⅱを解析することで、ロストテクノロジーの一端に触れることができた………その知見を活かしただけだ。ちょうど、見本を見せてくれるやつもいたしな」
ゼル「ほォ~ん……」
マモ「さて………」
Mk-Ⅱ「ま……すたー…………ます……たー……」
マモ「喋るな。自己修復にリソースを集中させろ」
Mk-Ⅱ「もうしわけ……あり…ません」
マモ「お前が謝ることじゃない、私のミスだ。空崎(そらさき)ヒナを見誤っていた………お前を活かせなかった、私のミスだ。全てな」
Mk-Ⅱ「そんな……こと…は………ますたー……は…すごい……ひとです」
マモ「道具を十全に活かせなかった、活かしきることができなかった。それは、持ち主たる私の落ち度だ。今は休め、Mk-Ⅱ(ナデナデ)」
Mk-Ⅱ「ます………たー……」
マモ「…………(ニッ…)」
ゼル「………(ニヤニヤ)」
マモ「……何をニヤニヤしているんだ、ゼル」
ゼル「いやァ?サンやあたしによく、兵器に対しその様なスキンシップは不要ダーッとか言っときながら、自分はアリトゥーの頭撫でてるじゃねぇかよ(ニヤニヤ)」
マモ「黙れ」
ゼル「い~や黙らないね。サンにチクってやろうっと!」
マモ「おい!」
クイッ…
マモ「?」
Mk-Ⅱ「ます……たー……(キュッ」
マモ「………はぁ………」
ゼル「~♪(ニヤニヤ)」
マモ「トランクイロ・マエストロはどこに仕舞ったかな……」
ゼル「へっへへへ~♪」