チーム作り③
―サンの孤児院第一棟―
サン「ただいま戻りました~」
ベル「こっちは暖かくていいですね!」
アタン「風邪引かないようにしないと……」
アザル「アタン君は風邪引かないでしょ」
アタン「確かに。あたしは体が丈夫ですからね!(フンスッ)」
アザル「いやそういう意味では…」
アタン「はい???」
アザル「………なんでもない」
アタン「???」
ベル「!(クスクス)」
サン「ふぅー……やっぱりレッドウィンター自治区は遠いですね」
孤児院の年長ちゃん「あ、おかえりなさいませサン様、皆さん」
サン「ただいまです、○○君」
孤児院の年長ちゃん「サン様にお客さまがお見えですよ」
サン「私に…?」
孤児院の年長ちゃん「ほらあの…山海経、でしたっけ?あそこの三姉妹の方々が…」
サン「ツノエ君たちが……ちょうどいいですね。お話ししておきたいこともありましたし」
孤児院の年長ちゃん「広間でお待ちいただいてます」
サン「わかりました」
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―サンの孤児院第一棟、広間―
子供たち「「「すぅ……すぅ……」」」
コノエ「遊び疲れてしまったかな?それとも、我の催眠誘導が効いたのかな?ふふ、子供は可愛いの~♪(プニプニ)」
ツノエ「勝手に子供たちと遊んでしまって大丈夫でしたでしょうか…」
ヒノエ「あたしのご飯も食べたからね~、余計眠くなっちゃったかな~。もりもり食べてくれるから、料理人冥利に尽きるよ~(ノビ~)」
ツノエ「ヒノエ、伸び伸びするのもいいですが、ここはサン様のお家なんですからね。もう少しシャッキリ………」
サン「………(ジーッ)」
ツノエ「さ、サン様!?」
ヒノエ「ありゃ、帰って来てたんですか」
コノエ「サン様!?あの、えっとこれはその~……」
コノエ(子供たちに膝を占領されて動けない~!!)
コノエ「も、申し訳ありません!子供たちに勝手なことを……!」
サン「いえい……ふふっ。むしろ、子供たちの相手をしてくださり感謝しています。ふふふっ…♪」
ツノエ「えっと…サン様?どうして扉から半身を出されたままで……」
サン「いえ……もう少しだけ、この幸せな空間を見ていたいな~と思いまして(ニコニコ)」
コノエ(な、なんか恥ずかしくなってきた……!!)
ツノエ「えっと……」
サン「(クスクス)……すみません。困らせてしまいましたね」
ツノエ「じ、実は、サン様にご報告したいことがございまして、こうして孤児院まで…」
サン「私も、ちょうど三人にお話があったんです」
三姉妹「「「???」」」
サン「まずは、そちらのご報告をお聞かせいただけますか?」
ツノエ「あ、はい!」
ヒノエ「ツノエお姉ちゃんが凄~い頑張ってさ。凄~い人数の同志を集めたんですよ!」
ツノエ「山海経の全体数で考えると少ないんですけどね。それでも、サン様の理想に賛同してくれた人たちばかりです。名前も考えたんです!」
サン「な、名前?」
コノエ「そう。我らが太陽、サン様を崇める団体。その名も……(メガネクイッ)」
黄張三姉妹「「「聖陽党!!!」」」
サン「わ、私を崇めるって……は、恥ずかしいんですが……///」
ツノエ「それはもちろん!改革後の新たな山海経を取り仕切る組織になりますから、名前は重要ですよ!」
コノエ「現状では、玄竜門の門主や玄武商会の会長、錬丹術研究会の薬師にも勘付かれてはいないようで」
ヒノエ「みんな隠すのじょうず~!!」
ツノエ「自治区が閉鎖的で、自治区からの外出を好まない生徒が殆どのため、サン様に聖陽党のみんなをご紹介するのは難しいかと思われますが……」
コノエ「作戦当日、我らの活躍を期待していただければと思います」
ヒノエ「派手にカマすからねーッ!」
サン「そ、そうですか……期待していますよ。ツノエ君、コノエ君、ヒノエ君」
黄張三姉妹「「「はいっ!!」」」
ツノエ「それで、鼎たちからのご報告は以上なのですが……」
サン「そうですね。では次は私の方から……実は、長らくふわふわしていた組織の名前が決定したんです」
コノエ「そ、組織の名前…!」
ヒノエ「それはそれは~ッ?!」
サン「今ある体制に異を唱え、私たちの新たな律を打ち立てる『裁定者』の意味を込めて、『Verdicters』と決定しました」
コノエ「おぉ~!」
ヒノエ「かっちょいい~ッ!!」
サン「気に入っていただけようでなによりです。それともう一つ」
黄張三姉妹「「「???」」」
サン「決起当日、山海経に援軍を送ります。みなさんを信頼していない訳ではありませんが、より確度をあげたいので。作戦についてはみなさんにお任せします。こちらからの援軍を十分に活用してください」
ツノエ「はい、お任せください!」
サン「作戦の全体像は作戦会議という体で通達します。恐らく、リモートでの配信になると思われますが、よろしいですか?」
ツノエ「もちろんです」
コノエ「異論ありません」
ヒノエ「もんだいナーシッ!」
サン「そうですか。こちらの都合がつき次第通知いたしますので、それまでは『今まで通り』のみなさんでいてくださいね」
黄張三姉妹「「「はい!!」」」
サン「では、私はこれから連邦生徒会で仕事がありますので……」
ツノエ「え゛っ……朝早いのに、ご多忙のところ押し掛けて申し訳ありませんでした……」
サン「いえいえ、お気になさらず」
ヒノエ「役人さんってたいへ~ん……」
コノエ「ツノエ姉さん、我らも戻りましょう」
ヒノエ「あっ…お店の準備あるんだったー……」
ツノエ「そう…ですね………サン様、鼎たちもお先に失礼いたします。お元気で」
コノエ「またお会いしましょう、我らが太陽」
ヒノエ「まったねーッ!」
サン「はい、また…」
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サン「アタン君、トリニティ強襲は、どんな感じで考えていますか?」
アタン「貴女がゲヘナ強襲に人員を持って行きすぎているので、こちらとしては時間稼ぎを主軸に進めようかと」
ベル「サン様の決定にケチつけるんですかアタン!!」
サン「まぁまぁ。ベル、落ち着いてください」
ベル「むぅ~……」
サン「………人員をゲヘナに割いてしまっているのは申し訳ないと思っています。その所為でトリニティ強襲にご不便を掛けていることも」
アタン「理由もなくそんなことはしないとわかっています。教えていただけますよね?」
サン「もちろんです。理由は三つ。一つ、ゲヘナにはキヴォトス最強と謳われる空崎ヒナ君がいること」
アタン「ふむ…」
サン「二つ、ゲヘナには美食研究会、温泉開発部を始めとしたキヴォトス全体で見ても悪名高いテロリストがおり、在野の強者が多いこと」
アタン「確かに、トリニティであれば、組織単位で見るなら警戒すべきは正義実現委員会とシスターフッド程度……個人単位では、正義実現委員会委員長剣先(けんざき)ツルギと救護騎士団の団長蒼森(あおもり)ミネ、中学時代にその名を轟かせたキャスパリーグ杏山(きょうやま)カズサ、走る閃光弾守月(もりづき)スズミ、パテル分派代表聖園(みその)ミカ……」
サン「正直、総合的な戦力差は五部と言えるかもしれません。ですが、政治争いばかりのトリニティは、一般レベルの生徒は戦闘が不得意な者が多く、対してゲヘナは問題児の巣窟、鉄火場慣れしている者の方が多い」
アタン「………それなら、ゲヘナに人員を割こうというのも頷けます……」
サン「戦力を均等に分けても、効率が悪くなるだけですからね」
アタン「……………それで、三つ目の理由は?」
サン「見せしめ……とでも言いましょうか。奪われるより、他人の青春を奪う側であることの多い学校は、一度頭から末端まで叩き潰す必要があるでしょう。私の目指す世界に、今のゲヘナ生徒のような素行は絶対に許されませんから」
アタン「……………」
サン「トリニティ総合学園もミレニアムサイエンススクールも、フリズスキャールヴの起動準備が整うまでの時間稼ぎとして、一時的に首脳陣・指揮命令系統を機能不全に追い込めば十分ですから」
アタン「………………果たして……」
サン「はい?」
アタン「果たして、先生がそのゲヘナ解体と言える行いを容認するでしょうか」
サン「どうでしょうか。ですが、そこは先生のご意思次第、私は先生の意志を尊重するつもりですよ。最低限『保護』はします。ただ一つ言える事は……」
アタン「なんです?」
サン「この世は栄枯盛衰。キヴォトスでは自治区が衰退し滅びるのはよくあること。例えどんなに強大なマンモス校であったとしても。そう、例えばかつてキヴォトスで最も栄華を誇ったアビドスのように、災禍には抗えない。ゲヘナ学園にとっての災禍とは、この私です」
アタン「…………恐ろしい女……」
サン「………私よりも恐ろしい人はいますよ。私が知る中で、たった一人………もう、いませんがね」
アタン「……………」
サン「戦力の心配をしているなら、絶対……とは言いませんが、安心してください。用事が済み次第トオル君とアイアンハンマー隊のみなさんをトリニティに向かわせます」
アタン「後は、アリトゥーの支援も欲しいです」
サン「わかりました。頭に入れておきます………では、今日も一日、お仕事を頑張りましょう」