市橋伯一 本当に生物は良くできているのか 市橋伯一 生物のしくみは良くできていると一般的には言われています。確かに、脳の仕組みも、眼の仕組みも驚くほど精巧で、時に人工物よりも高性能を発揮します。そしてそれは細胞の中身にも当てはまります。最小の単細胞生物は光学顕微鏡でギリギリ見えるくらいの大きさですが、その中で千種類を超えるタンパク質がひしめきあって数百の化学反応を制御しています。こんなものは人間には未だ作ることはできず、神がデザインしたと信じたくなるのも理解はできます。 しかし、こうした良くできたしくみであっても、見方を変えると、意外に出来の悪いところも目につくようになります。私は、合成生物学といって、生物のしくみを試験管内で再構成する研究をしています。作ってみようとすると、生物のやり方はやたらまだるっこしくて、「自分が神様ならもっと上手くデザインするのに」と思うこともしばしばです。今年度