第63回パグウォッシュ会議世界大会の全体会議「広島・長崎から80年:核兵器廃絶への道」で発言する鈴木達治郎さん=広島市中区の広島国際会議場で2025年11月1日、佐藤賢二郎撮影 原子力工学を専攻するなど、原発のエキスパートである鈴木達治郎さん(74)。その経歴から「原子力ムラ」の一員とみられることもあるが、実際は「異端」という表現がふさわしい。 そんな鈴木さんが「ここで人生が変わった」という転機がある。 全2回の後編です。 前編 核廃絶に必要なこと 日本人初パグウォッシュ役員が語る科学者の責任 研究員の質問攻め 1977年夏。留学していた米国の名門、マサチューセッツ工科大(MIT)大学院で、主任研究員にこう尋ねられた。「プルトニウムの利用に経済性があると思うか」 質問は核燃料サイクルについて。核燃サイクルとは、原発から出た使用済み核燃料を再処理(化学処理)してプルトニウムを取り出し、再び原