HONZでは、鳥本にはずれなし、という格言(?)がある。鳥をあつかったノンフィクションは間違いなくおもしろいというのだ。異を唱えるものではないが、山本(やまもと、じゃなくて、山の本)にこそはずれがない、というのが持論だ。これまで読んだなかで、一冊たりとも、つまらなかった山の本などない。 ヤマケイ、山に関係ない人にとっては何かわからないかもしれないが、登山雑誌『山と渓谷』のことだ。数年前からヤマケイ文庫がでており、HONZいちおしの『くう・ねる・のぐそ』をはじめ、どの本も驚くほどおもしろい抜群のラインアップだ。そして、今回、新書の刊行がはじまった。その記念すべきナンバーワンが、山野井泰史の『アルピニズムと死』だ。 山野井泰史、日本でいちばん有名なクライマーといっていいだろう。沢木耕太郎の『凍』に描かれた登山家、といえば思い出す人がいるかもしれない。2002年、山野井は中国・ネパール国境の山・