「社員の同意を基にした人事」は実行可能 企業が大きく変わるために取り組めることのひとつが、人事異動における本人同意原則の導入である。それは、企業が自ら強大な人事権を放棄することでもある。 本人同意原則の導入が現実的である理由は2点ある。 第1に、それは個別企業の意思決定だけで実行可能だ。無限定性、標準労働者、マッチョイズムから成る「三位一体の地位規範信仰」が変わりにくいのは、それに経路依存性とシステム性があることが理由だった。 その場合、それを変えるためには社会の多様で複雑な要因に、関係者が一致団結して取り組まなければならない。そうなると関係者間の調整だけで、長期間を要してしまうだろう。 しかし、本人同意原則の導入に関しては、個別企業がそれを実施すると決めてしまえば、容易に実行可能なのだ。 第2に、本人同意原則には人事制度の大きな改定が必要ない。極論をいえば、現行の人事制度を一切変えずに、