※この一連の長田弘にかんする記事での引用は、ときに断りのないかぎり、2015年『長田弘全詩集』(みすず書房)を典拠とする。10月2日の朗読会も、本『全詩集』を典拠として行われる。したがって、『言葉殺人事件』の「バラード」シリーズはすべて「バラッド」で統一される。 さていよいよ『言葉殺人事件』所収の「バラッド第一番」に触れよう。先日、「最近は『メランコリックな怪物』に夢中だ」というようなことを書いたけれども、それでも完成度という点で言えば『言葉殺人事件』が群を抜いて優れているし、静謐さ、可憐さ、緻密さ、端正さ、陽気さ、単純明快さ、複雑さ、リズムに韻律、ようするに我々が長田弘に求めうる、あらゆるものが、『言葉殺人事件』にはある。「静謐で端正なバランス」という点で言うなら、『人はかつて樹だった』(2006年)なんかは、かなりいい線いっているとは思う。けれど、この時期(21世紀)の長田の詩には、な