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【共同声明】日本の公的資金と納税者をリスクにさらす対米投資「第2弾」は容認できない――リスクの高い小型原子炉(SMR)への巨額投資を実施すべきではない | 原子力資料情報室(CNIC)   
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【共同声明】日本の公的資金と納税者をリスクにさらす対米投資「第2弾」は容認できない――リスクの高い小型原子炉(SMR)への巨額投資を実施すべきではない

日本の公的資金と納税者をリスクにさらす対米投資「第2弾」は容認できない――リスクの高い小型原子炉(SMR)への巨額投資を実施すべきではない

2026年3月19日

国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター
原子力資料情報室

日米首脳会談に合わせて、最大10兆円の新たな対米投資プロジェクトが発表されることが報じられています。これは、日米関税交渉の結果として合意された、日本側が総額5,500億ドルに及ぶ対米投資パッケージの「第2弾」であり、その中に小型原子炉(SMR)、ガス火力発電案件が含まれています。

 私たち環境NGOおよび市民団体は、実施可能性・経済合理性が疑わしく、放射能汚染や核拡散のリスクも高いSMR事業、および気候変動を加速させる化石燃料事業に多額の公的資金を投じられることに深く懸念します。これは、日本の納税者に将来にわたる莫大な負担とリスクを押し付けるものであり、到底容認できるものではありません。

1. ビジネスとしての合理性の欠如と莫大な経済的リスク

 SMRは「小型で安価」と謳われてきましたが、単位発電量あたりで比較すれば既存の大型原発以上にコストが高いのが現実です。

 SMRの経済合理性に大きな疑問があることを示す象徴的な事例が、米ニュースケール・パワー(NuScale Power)社によるアイダホ州でのSMR計画(CFPP)の失敗です。同計画は、建設コストの高騰により、2023年11月に中止に追い込まれました。同年1月の段階で、同社は売電価格目標を当初予定していた58ドル / MWhから89ドル / MWhに引き上げました(注1)(注2)。これはアメリカ政府による巨額の公的支援(補助金)が投入されてなお、SMRが米国の蓄電池付き大規模太陽光(例:2022年45ドル/MWh(注3))と比して価格競争力を持たないことを示しています。

 国際原子力機関(IAEA)の2024年版SMRカタログ(注4)に掲載されているSMRは全部で70種以上あります。一方で、国際エネルギー機関が予測している2050年における世界の電力供給に占める原発シェアは10%に満たないという状況です。老朽化した原発の建て替えや、一部新規建設があったとしても、それらの大半は大型軽水炉になります。つまり、ニッチな市場に多くの炉型が提案されているのがSMRというビジネスの現実です。SMR市場は始まってもいないのにすでに限られたパイを奪い合う「レッドオーシャン」になっているのです。

 再生可能エネルギーのコストが世界的に急落する中、高コストで実現の目処が立たないSMRに投資することは、ビジネスとしての合理性を欠いています。アメリカ国内で民間の投資家から敬遠されているのは当然でしょう。

 それにも関わらず、政治的圧力に押される形で、日本政府が国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)といった公的金融機関を通じて投融資を行えば、将来的に焦げ付きが発生する可能性は高く、その「しりぬぐい」をさせられるのは日本の納税者です。

2. SMRの抱えるその他の問題点

 前述のビジネス上のリスクのみならず、SMRには従来の原発と同様、ライフサイクルにわたる放射能汚染、核廃棄物、事故リスクに加え、テロや戦争のターゲットとなるリスクをかかえています。

 とりわけ核廃棄物については、大半の炉型で、出力単位での放射性廃棄物は、従来の原子炉と比して大幅に増加します(注5)。また多様な炉型が提案されており、多様な放射性廃棄物が発生することから、処理が複雑化することも想定されます。核廃棄物は何万年も管理が必要ですが、ほとんどの国で処分地の選定すら行われていません。

 また、一般の原子炉に比して、多くのSMRでは20%近くまで濃縮度を高めた核燃料(HALEU)が使われるため、核拡散といった意味でもリスクが高まります。

3. 不平等性と日本が抱えるリスク

 今回の一連の巨額対米投資案は、米国からの関税圧力を回避するための政治的譲歩として浮上したものですが、その内容は、日本にとって極めて不利なものです。

 日本側が資金を提供するのにもかかわらず、案件選定について最終的に判断を下すのは米大統領です。日本は大統領が案件を選定したと通知されてから45日営業日以降に、アメリカ側が指定する口座に資金を振り込むこととなっています。しかし投資案件から得られる利益は、提供した資金の元利返済が終了するまでは日米が50:50で分配、残りについては米国90%、日本10%で配分されるということになっています。

 加えて、案件の実現可能性についても多くの疑問が挙げられています。たとえば、米国側報道によれば、第2弾で提案されると見られているSMR案件の中には、従業員が5人未満と思われる設立3年の企業の名前が上がっています(注6)。もともとSMR案件には大きなリスクが伴う中、さらに日本の公的資金が投入されるにもかかわらず、案件形成過程がきわめて不透明で、日本側が関与できない中で行われています。

 この日米合意の前提となっている国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税は、米国連邦最高裁判所から違憲判決が出され、現在は通商法122条に基づく150日間限定の代替関税に移行しています。トランプ政権による関税引き上げの法的根拠が瓦解している中、第2弾、第3弾と矢継ぎ早に投資案件を進めるのではなく、投資案件の進捗を一時停止し、法的根拠を確認して対米投資パッケージの再交渉を行うべきです。

 出融資に中心的役割を担うJBICや、民間銀行への保証を行うNEXIは、日本政府100%出資の公的金融機関です。両機関の出融資残高・保証残高からみてもかなり巨額の投資規模であることに鑑み、すでに日本政府は両機関に対して財政基盤強化費を計上しています。事業が失敗した場合の公的資金注入について政府は「仮定の質問」として答弁を回避していますが、前述の事業の問題点を踏まえればリスクは明らかでしょう。

4. 「持続可能性」への懸念

 JBICやNEXIは、それぞれ融資や付保の判断前に、両機関の環境社会配慮ガイドラインに基づき、事業の環境影響評価のレビューや情報公開を行うことになっていますが、これまでに発表された「第1弾」の案件で、そうした手続きがすでに蔑ろにされていることも露呈しています。

 本来、エネルギー政策は気候変動対策や安全性を最優先に検討されるべきものであり、外交上の「取引材料」として拙速に決定されるべきではありません。 化石燃料インフラや、リスクの大きい原子力事業に国民の資産を投じることは、持続可能な社会への移行を阻害し、日本の気候変動対策における国際的信頼をも損なうものです。

 政府は、本投資案件に関する意思決定プロセスを透明化し、リスク評価を公表すべきです。過去のニュースケール・パワー社への出資においても、公的機関による説明責任は果たされていません。 

 私たちは日本政府に対し、SMRへの投資を含む対米投資パッケージを直ちに見直し、不透明な政治的「ディール」によって市民の財産を危険にさらすことを止めるよう強く求めます。

以上

注1)Schlissel, D. (2023, January). Small modular reactor project likely to end badly for utilities and worse for taxpayers. The Institute for Energy Economics and Financial Analysis. ieefa.org/resources/small-modular-reactor-project-likely-end-badly-utilities-and-worse-taxpayers

注2)89ドル/MWhはIRA(インフレ抑制法)による30ドル/MWhもの補助金を前提とした数字。

注3)Lawrence Berkeley National Laboratory. (2023).Utility-Scale Solar, 2023 Edition.

注4)IAEA. (2022).  small modular reactors Catalogue 2024.

注5)Krall, L. M., Macfarlane, A. M., & Ewing, R. C. (2022). Nuclear waste from small modular reactors. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(23), e2111833119. doi.org/10.1073/pnas.2111833119

注6)Desrochers, D. (2026, February 23). ‘Just a couple of guys’: How a little-known company could score big from a Trump trade deal. Politico. www.politico.com/news/2026/02/23/energy-company-trump-japan-trade-deal-00791916

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