freeeの組織力を最大化する工夫はトイレから

組織としてもどんどん成長していく freee。去年の今頃は、まだ10人にも満たないメンバーで、ワンルームマンションの1室で事業を運営していたfreee。1年足らずでメンバーは50人を超え、急激に拡大してきた。特に大きかったのが意思決定の問題だ。

「この場合、どうしましょうか」

「◯◯はどっちでいきましょうか」

組織が小さければ、そんな会話は簡単にカジュアルにできるし、僕が決めたり、僕が直接いろいろな意思決定に関与することが簡単だった。ところが優秀なメンバーが揃って、高速でものごとを進められるようになると、そうはいかない。決めるべきことは指数関数的に増えていき、決めないことによるロスが増える。

この問題を解決し、組織力を最大化するには、みんなが素早く意志決定をして物事を進めることが最も重要だ。そして一方で、みんなの意思決定がfreeeらしいということももちろん大事なので、そんなよりどころとして、freeeの価値基準というものをセットした。

実際にこの価値基準が実効性を持つようになるまでには、試行錯誤が必要で、いきなりうまくできた訳ではなかった。ここでは、そんな試行錯誤のプロセスと、そこからの学びを紹介。もちろん、これはまだ完璧ではなくて、引き続き思考錯誤を進めるべきものだと思う。

  • スタートアップらしく全員参加でやることに意味があった
  • キャッチフレーズ化することに強い効果があった
  • 伝える場所はやっぱりトイレが一番いいっぽい

試行錯誤のプロセス

社会人になってから、僕は4つの会社で働いたことがある。いずれの会社にも、すでに経営理念や行動規範や価値基準のようなものがすでに存在していて、特にそれについて疑問にも思ったことがなかった。

今後さらにfreeeチームを拡大していくにあたり、組織のエッセンスをカタチにしておきたいと考え、価値基準をセットしようと考えた僕は、まずなんとなく役員メンバーに僕のまとめた価値基準案のようなものを見せ、フィードバックをもらい、それをチーム全員に共有した。

ところが、これがあんまりうまく浸透しなかった。。。

単純に、言葉として難しすぎて覚えられなかったり、そこに込めた真意がかならずしも理解されていなかったりということがある一方で、例えば「エンジニアのためにあるようにしか見えない」といったように、一部の人にしか関係ない印象も与えてしまっていたようだ。

こうして中途半端な状態になってしまった価値基準を再建すべく、社員合宿のアジェンダのひとつとしてスタートアップらしく全員でこのテーマについて議論してみることにした。グループに分かれて、価値基準について議論をしてみると、「特にみんなに理解されていないポイント」や「皆が誇りに思っている部分」、「逆にみんなが足りていないと思っている部分」が明るみにでてくる。

そのような発見を元に、委員会を結成。「UXは風土そのもの」を掲げる関口さんが座長として取りまとめてくれた。この時点でもう一点、「言葉として、覚えやすく、キャッチーで、意味を連想しやすいものであるかどうかで浸透度に差が出ている」ということも発見し、5つの価値基準の定義付けをこの委員会で作成した後、それぞれの価値基準のキャッチフレーズを全員アイデア出し必須で募集した。

ここででたアイデアを元に、最終の言葉の整理。結果として、下記のようなfreeeの価値基準がセットされた。

freeeの価値基準: 2014年7月改訂版

1. マジで価値ある?: ユーザーにとって本質的に価値があると自身を持って言えることをする。

IMG_4260

当初は固かったこのセンテンスには、「マジで価値ある?」のキャッチフレーズが添えられた。これによりいろいろな場面で、「これってマジで価値あるの?」「スミマセン、これマジで価値ないっす?」という会話が沸き起こるようになり、大幅な改善。

freeeはリリース前に、いろいろとポテンシャルユーザーにヒアリングしたが、「入力が速くできる会計ソフト」へのニーズはあるものの、「入力がいらない会計ソフト」に対してはイマイチ反応がよくなかった。心折れそうになりながらも、「本質的に価値がある」ということをよりどころに全自動のクラウド会計ソフト freee (フリー) としてリリースを敢行したことに大きな意味があった。この「マジで価値ある?」精神を忘れないようにしたい。(さらに略語でmajikachiというのもある)

2. アウトプット思考:まずアウトプットする。アウトプットしながら考え、改善する。

IMG_4256

こちらは当初、「とりあえず、アウトプットすればOK」というようなかたちで浸透してしまった。重要なことは、アウトプットしながら考えるという部分。これまでも、「まず、アウトプットしますか」みたいに語られていたのが、造語として「思考」とお尻につくことで、「では、この件についてはアウトプット思考で行きますか」ときちんと「思考」までが語られるようになって、実際に思考して改善するプロセスまでを意識できるようになった。

freeeの取り組む課題は、複雑で難しい。アウトプット思考で進めなければ、何も産まれない。

3. Hack everything:なんでもハックする。みんなが楽しく生産性をあげられるように。

IMG_4257

不正侵入という意味ではなく、クリエイティブにいろいろなツールなりノウハウを使いこなして楽しく生産性をあげようという意味での「ハック」。社内チャットに仕込まれたボットが開発チームのプロジェクトマネージャーのように振る舞ってくれる仕組みなどが代表的だが、開発プロセスにおいても、カスタマーサポートやマーケティングのプロセスにおいても関係しそうなことを徹底的に勉強してクリエイティブに使いこなす精神は、バックオフィスの自動化をめざすfreeeにとって非常に大事な精神だ。

4. ハイパー目標:「今の自分だけ」では達成できない高い目標をセットする。

IMG_4258

ついつい人は「今の自分」をベースに目標をセットする。常に非連続的成長を求められるスタートアップでは、これではダメ。「自分が成長すればできそう」とか、「チームで協力したり、新しくチームつくればできそう」とか、現在ないリソースも想像して高い目標を立て、それを実現していかなくてはいけない。

これは当初、闇雲に高い目標を立てようという意味で理解されてしまっていたが、「ハイパー目標」という意味不明な言葉に、しっかり定義付けをすることで、「語られる」フレーズに昇華することができた。

5. かたまりだましい:周りを巻き込み・巻き込まれることがハイパー目標達成の鍵

IMG_4259

ひとりひとりの視点には必ず偏りや盲点のようなものがあるため、いろいろなインプットを得ることで意思決定の精度があがることはさまざまな実験で証明されている。そして、なにより、1人でできることは限られているし、かっちりした組織という訳でもないので、うまくかたまりをつくっていって最大活用することが大事。これが、ハイパー目標達成のためにもひとつのカギになる。

いいプロダクトを置いておくということではなく、しっかりとコミュニケーションするというチームワークで実績を残すことができたfreeeのエッセンスのひとつ。

(でもスミマセン、キャッチフレーズはゲームの名前を採用。ここはアウトプット思考でね。)

そして運用

こうしてアップデートされた価値基準は、トイレに掲出され、みんながリラックスする時間に目に触れることになった。

今回、価値基準は大幅にブラッシュアップすることができ、意義深いものになったと思う。

まず、全員が関与してつくったものであるから、当然覚えやすいし、覚えるだけではなく、そこに込められた意味についての理解がしやすい。こういったものは全員が理解してはじめて意味をなすものであって、文字面だけ存在していても理解がずれていては意味がない。

そして次に、意識をされなければ意味がない。freeeのメンバーがこの5つを意識してなされた意思決定であれば、そうそう外れないだろう、というのがこの仕組みをうまくいかせる上での重要な前提だ。今回アップデートした価値基準は、会話に組み込みやすいので、自然と会話に組み込まれ意識されやすくなっている。「これ、マジで価値ある?」とか、「じゃあ、アウトプット思考でいこう」とか、「ハイパー目標立てました!」など。会話として使われるようになれば、意識されているということになる。

組織は常に進化していくべきで、こういったものも現在のところの最適解にすぎず、さらにチームや事業が拡大していくにつれ、どんどん見直されるべきだ。でも、こういった価値基準さえもオープンソース的にみんなでアップデートしていけると骨太な組織になっていけるのではないかなと考えている。

学び

「会話に組み込まれる」ような価値基準を設定して、意思決定をスムースに。

元フリーターが大活躍。スタートアップで「経歴」よりも大切な5つのこと。

スズキです

ユキナオです

「ほぼ」新卒なスターが活躍する freee。ちょっと知られたところで言えば、「東大法学部卒無職31歳が半年でプログラマーになった」平栗(ぐりちゃん)や、freee創業当初のインターンであった「カップル揃ってスタートアップ、東工大リケジョ」の前村(なおちゃん)が大活躍している。

今回は、これまた「ほぼ」新卒で、マーケティング活動全般を担当してfreeeの急成長を支える、鈴木ユキナオ の分析を通じて、スタートアップで活躍する人材の特徴についての僕の勝手な見解を考察してみる。

ここに書くこと:

ユキナオは、freee のリリース直後に freeeのインターンに応募。当時既に大学を卒業しており、フリーターとして警備の仕事に従事する傍ら、freeeに面接にやってきた。もちろん、スーツなどは着ていないし、どう見ても「君、ちょっと前まで髪型としてはモヒカンといわれる髪型だったよね?!」という雰囲気を漂わせつつ、彼は freee に現れたのであった。

到底普通の会社では採用されないであろうユキナオであったが、入社後は圧倒的に活躍をする。こんなから学べる、スタートアップで必要な素養は、

1. あらゆる手口を試してみる

2. 謙虚な姿勢と好奇心

3. 気合いのリサーチ

4. 「アイデアは量」と考えられる

5. 一体感を呼ぶ力

である。それぞれについて詳しく見ていこう。

 

1. あらゆる手を試してみる

ユキナオが、インターン募集サイト「キャリアバイト」を通じて freee に応募してきたのは、「クラウド会計ソフトfreee」のリリース直後であった。予想もしてなかった急激なアクセスでてんやわんやな状況の中、募集サイトから送られてくる機械的な応募メールを僕は恥ずかしながら気付かずスルーいていたのであるが、ここでさらに追い打ちをかけるようなメールが「キャリアバイト」の営業担当から届く。

スクリーンショット 2014-08-15 17.10.37

知っている営業担当からのメールなので、今度は普通にメールに気づく。これまで、こういったかたちでの連絡が来たケースもなかったし、よくよく応募メールを読み返すと、ちょっと気になるコメントも書いてあった。

スクリーンショット 2014-08-15 17.11.19

サイトから応募して、会社から返事がなければサイトに問い合わせる。目的を達成するために、とりあえずやれそうなことはやってみるのはまず重要である。

 

2.謙虚な姿勢と好奇心

そしてユキナオは面接にやってきた。あからさまにちょっと前まではたいそうなモヒカンであっただろう出で立ちで、彼はfreeeにやってきた。

話を聞いてみると、ニュースサイト運営の経験とか、あとは、バイト兼趣味での動画編集の経験とか、今どきのオンラインのマーケティングをやる上で役に立ちそうなスキルを持っている。

(例えばこのビデオはユキナオの自作だ)

すごいすごい、と思いながら話を聞いていた僕であった訳だが、「どんなふうにfreeeで活躍できると思う?」と聞くと、

「いやー、自分はまだ何もできないんで。動画とかはまあつくれると思うんですけど、そうじゃなくてfreeeのビジネス全体に貢献したいと思うんですよね。そのためにはなんでもします、としか言えないんですけど、、、まあ、イメージのつく範囲では、掃除とか。」

「え、掃除?他には何かできないの?」

「うーん、どうっすかねぇ。ちょっと考えてみます。」

なんとも頼りない感じだ。

当時の僕は、このやりとりをなんとも不安に感じたものだったが、振り返って考えてみると、ユキナオは当時すでに「エンタメ系のサイト運営」や「動画編集」においてはそれを職業にできるレベルであったにもかかわらず、そこにとらわれずやりたい、そしてそこに挑戦できるのだったら、とりあえず今のところはできないのでなんでも挑戦する、と言ってくれていたのだ。もちろん、もっといいプレゼンテーションの仕方はあるものの、変に経験にとらわれたり、奢ったりすることなく考えらることはとても重要だと思う。

経験はときに足かせになったり、限界となったりしてしまう。僕がGoogleに入社したとき、周りの人に「大変なことは何ですか?」と聞くと、「Googleは特別な会社だから、常識を unlearn するのが大変だよ」と言われたことがとても印象的であったのだが、今思うと「積極的に unlearn できる環境」というのは経験や既存の枠に捕らわれない素晴らしい環境だ。

よくスタートアップで活躍するには好奇心が重要という話もでてくる。僕は、好奇心とは謙虚さとの裏返しであるような気がする。現在、自分はこれがわからないと思うからこそ、何かを知ったり、学んだりするときに面白みや興奮を覚えるのだ。

 

3. 気合いのリサーチ

ユキナオ&ぐりちゃん

旧オフィスの庭でリサーチにいそしむユキナオ

1. のあらゆる手をつくすとちょっと似たベクトルかもしれないが、特にここ10年くらいに大きく重要性が増したこととして、気合いのリサーチ力というのがあると感じている。

ユキナオは面接の後、翌日13時までに freee に貢献するためにどんなアイデアがありそうか、まとめて送ると言い残して帰っていった。そして翌日、気合のリサーチが感じられる14ページくらいのレポート送ってきた。

綿密というわけではないが、とにかくいろいろな事例を頑張って調べ、それを自分なりにフレームワークにまとめたな、ということが感じられる内容のレポートであった。

実際、ユキナオは今も抜群のリサーチ力がある。別に英語が得意というわけでもないが、気合いで英語のウェブサイトであろうと本であろうと、とにかく活用できそうなものはだいたい調べる。自社のデータもいろいろな角度から徹底的にしらべる。データを集めるために必要なツールがあれば、もちろん勉強する。

変に自分に限界を敷かず、うまく必要な情報を集めることの重要性は、この10年くらいの間に圧倒的に高まったと思う。それは、インターネット上で自分だけで調べられる情報が圧倒的に増えたからだ。

まだ駆け出しの頃、自分自身もこの気合いのリサーチ力に随分救われたし、これによっていろいろな道を切り開いてきたと思う。

 

4.「アイデアは量」と考えられる

(ここでfreeeマンがユキナオです)

「アイデアは量」という考え方を持てる人は意外に少ない。僕自身は、広告代理店の新人時代のコピーライティング研修でこれを学んだ。ある商品に対するコピー案を1日100案ずつ大先輩のコピーライターに見せなくてはならないという研修で、もちろんそのコピー案は徹底的にダメ出しされるのだ。

この「アイデアは量」を学ぶことは、3つのメリットがある。

  • さまざまな制約に縛られず発想できるように(せざるを得なく)なる
  • 周囲へよい刺激を与える
  • アイデアに対して客観的になれる

1つ目・2つ目のポイントは「いわずもがな」なのだが、ここでは2つ目がポイントだ。慣れていない人にとっては、アイデアを人に述べることは案外恥ずかしいものだ。なので自分のアイデアを表現しようとするときに、そのアイデアが優れている理由を探しすぎてしまう。(より良いアイデアを考えることができたかもしれないのに、アイデアを正当化する理由探しに時間をつかってしまったり)その過程で自分のアイデアに愛着を持ちすぎてしまい、客観的な判断ができなくなってしまうのだ。

一方で、「アイデアは量」さえ身につけておけば、自分のリソースをいったん「いいアイデアを数多く出す」というところにフォーカスさせて、その後で今度はフラットな目線で、よいアイデアを客観的に評価することができる。

前述の通り、ユキナオから面接翌日に送られてきたレポートは、数々の駄作とも言えるアイデアで埋め尽くされており、「人に見せるの恥ずかしいだろうな」というような内容であった。しかし、そのようなレポートを送ってくれるところに「アイデアは量」マインドが強く感じられるし、実際ユキナオはそのように活躍している。

 

5. 一体感を呼ぶ力

少数精鋭のスタートアップは、もちろん強い一体感を持つが、やはりそこが競争力の源泉であったりするので、そんな一体感をさらに強めるような力はとても活躍する。

ユキナオの特技に、「最高の集合写真を撮影する」能力がある。集合写真を撮るのは、何らかの記念であったり、何らかの目的があったりするものだが、そのような記憶に残る局面で、最高の写真を撮るナイスプレーをする。手段としては、奇声を発する、奇妙な動きをするといったような手段ではあるが、なぜかみんなの結束力は増し、素敵な写真が撮れるのだ。

ちなみに、僕は撮影を含んだ取材を受けたことは結構あるが、ユキナオはそのなかでもトップクラスのカメラマンになれるのではないかと思うほど、笑顔の撮影においては圧倒的な演出スキルがある(それはカメラマンのスキルではないかもしれないが、、、)。

出社初日の朝会では、とりあえず「大声」で挨拶をすることで、なんとなく身のある挨拶をしたっぽい印象を残したユキナオであるが、このようにどんな手段であっても、とにかく一体感を強化する力はスタートアップの競争力をさらにアップさせるためにとても重要だ。

五反田で集合写真

ユキナオプロデュースの集合写真

 

まとめ

以上、freee のユキナオ君の応募、面接、入社時などを振り返り、スタートアップで活躍する人材を見破る方法を考察してみた。これらの素養は非常に役に立つ素養であることは間違いないが、ユキナオという個人を切り口として考察しているので、もちろん別の確度から貢献できる他の素養もあると思う。

ただ、新しい価値を世の中にもたらし、世の中を変えていくスタートアップにおいては、経験や経歴は必ずしも重要ではなく、そこに捕らわれない本質的な価値を発揮できる人材であることが重要だと思う。ユキナオはそんなことを実感させる人物である。

 

freee リリース1周年を終えて(ちょっと遅いけど。。。)

先月の2014年3月19日に全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」はリリース1周年を迎えた。1周年にあたっては、リクルートライフスタイル社が提供する「 AirREGI (エアレジ) 」との連携を発表し、freeeが目指すバックオフィスの自動化に向けてまたさらなる大きな一歩を踏み出すことができた。1年目の振り返りを書き留めておこうと思いつつ、1ヶ月が軽く過ぎてしまったので、「まだ先月の話」といえるうちに公開してみようと思う。

IMG_3083

[リリース1周年飲み会にて]

 

2013年3月19日、freee公開

freeeのように簡単かつ自動でつかえるクラウド型の会計ソフトに対するニーズが必ずあることは僕は確信していたが、実はリリース前にコンセプトレベルで調査やヒアリングをしたときに必ずしもfreeeの評価は高いといえなかった。そんなこともあり、半信半疑でお祈りするような気持ちで、2013年3月19日freeeをリリースするにいたった。蓋を開けてみると想像していたよりも圧倒的に高い評価と実績を最初の数日でつくることができた。まずは細々とでもよいから着実なスタートを、と考えていたところが、想定以上のアクセスでパフォーマンスが低下するなど社内はいきなり大騒ぎ(といっても当時は数名のメンバーしかいなかったのだが、、、)。

開発に着手し、外にも出ず開発のためにマンションの居間に籠もりはじめてから9ヶ月、苦しいときも多かったが、このリリース日に多数のユーザーの方々から応援のメッセージをいただいて、着実な手応えを感じ、このfreeeを徹底的に価値のあるものに育てていこうと、あらためて気が引き締まる、2013年3月19日はそんな日だった。

 

ソーシャルメディアとフィードバック

リリース直後で印象的だったことはやはりソーシャルメディアのインパクトであった。freeeの評判は、Twitter、 facebook、ブログの記事などでまたたく間に広まっていった。以前、大企業で主には既存プロダクトのマーケティングをしていた自分には、この感覚はまったく新しい経験であった。freeeの広まり方がビビッドにソーシャルメディア上で見て取れた。例えが悪いが、昔全身麻酔で手術を受けた際に、点滴から麻酔が入ってきて、それが全身にビリビリっと伝播していくのを感じたのを克明に覚えているのだが、そんな感じだった。

そしてソーシャルメディア上で多数のフィードバックをいただいた。簡単になおせるものや、リリース前には想定していなかったニーズなども多く、すぐになおして連絡するようにした。まさに、freeeはソーシャルメディアによって拡まり、ソーシャルメディアに育てられた。

 

そしてLaunchPad

5月、Infinity Ventures Summit の LaunchPad に参戦する。以前、僕がCFO兼プロダクトマネージャーとして参画していたALBERTの会長の山川さんから、「是非、挑戦してみた方がよい」というアドバイスをいただき、応募をする。スタートアップのデモ大会には何度か出場したことがあるのだが、freee のプロダクトの特性上、共感を得られる方が特定のセグメントに限られるということもあり、こういったものには若干苦手意識があった。しかし、予選での議論が非常によい刺激となったこと、そして、得られる順位や評価がなんであれ、「自分はなぜこれをやっているのか」が伝わるプレゼンをしようと開き直ることにしたことで、少し気がラクになって進めることができた。

そして当日。朝の集合も早く、規模も大きく、オペレーションがしっかりしているIVSだけに、「こりゃ失敗できないな」と思うところに、会場は早々に満員になり、さらに緊張が高まる。

ここで、偶然、登壇者の控え席のとなりに座っていたのが、大学と博報堂の両方の大先輩であるユナイテッドの手嶋さんであり、話に花が咲いて緊張をほぐすこともできた。それ以外のことはあっという間に過ぎていって、結局自分が意図どおり進められたかどうかも記憶にないのではあるが、よい出会いに恵まれてか晴れて優勝することができた。

地味な領域のプロダクトではあるが、この場で優勝できたことは大きな励みになったし、さらに freee の知名度もアップした。また、東京でオフィスから応援してくれていたチームの優勝の瞬間のビデオも後から見て心あたたまるものだった。

 

 

freee 有料プランの開始

8月、標準プラン(有料プラン)を開始する。無料アカウントを登録いただける事業所の数は順調に伸びていったのだが、それでビジネス化に値する価値を利用いただく方々に提供できているかどうかはわからない。そんな意味でfreeeの課金開始というのは、大きく緊張する瞬間であった。

それまで、「大切なデータをお預けするのだから、早く有料にしていただいた方が安心」という声をいただいていたこともあり、もしかすると標準プランを開始することによるポジティブな効果もあるのではないかというかすかな期待があったのだが、実際のところ標準プラン開始以降、本格的に使っていただけ始めたということが問い合わせの内容などさまざまなところで見え始める。

freeeのようなクラウドサービスではユーザーの方々のデータをお預かりするというところが大きな特徴となるが、その場合、ビジネスとしての継続性が見えやすいことは、利用いただく方にとっても重要なポイントであることを再認識する。

20130703_210509(0)

[有料プラン開通時の記念写真]

 

東後が参画

2013年8月、東後がfreeeに参画し、取締役COOに就任した。東後はマッキンゼーを経てGoogleに入社。 Google 時代には、一緒に日本における中小企業マーケティングのフレームワークをつくっていった同志であり、「みんビズ」など、スモールビジネス関連のマーケティングにおいて革新的なプロジェクトを仕掛ける立役者であった。ずっと開発のことばかり考えていて、そろそろマーケティングやビジネスのことも考えていこうという局面で、リハビリもかねて、その後のビジネスプランなどについて東後に相談をするようになったのだが、「こうあって欲しい」という想いドリブンでできた僕の計画値を見て、「なるほど、アグレッシブですね。でも、まあ、頑張ればできそうだ。」と彼がコメントをしてくれたのはとても印象的で勇気づけられた。

実際にfreeeの成長を成し遂げるには、利用いただいている方々のご支援と、チーム一丸となっての成果につきるのだが、freeeのチームをまとめ、マーケティング、提携、カスタマーサポートを目標に向かって推進した東後がfreeeに参画してくれたことは、大きくポジティブな想定外のひとつだった。

DSC_5820

[freee で COO をつとめる東後]

 

モバイル・アプリのリリース

freeeはリリースから実に多くの機能改善、機能追加を繰り返している。1年目の成果としては、対応金融機関の拡充や、消費税、確定申告やe-tax関連の機能追加などが非常に大きいが、中でも特に印象的であったのはモバイル・アプリのリリースであった。

「経理・会計を、だれでもどこでもできることにする」ことはfreeeの目標のひとつであるとともに、ユーザーの方々からの要望が多いという点でも、このモバイルアプリの開発に着手することは重要であった。一方、それ以上に、このモバイル・アプリの開発にあたっては、スタートアップらしさ満点の一見不可能そうな短期開発スケジュールを敷いたのだが、そんな中でもさまざまな工夫を凝らしながら、目標としていた開発終了日の11時57分、見事にAppleへのアプリ審査申請をすることができた。プロダクトとして素早く進化し、より皆様のお役に立てるようになっていくことは freee が提供する大きな価値であり、その上でも象徴的な出来事であった。

20140131_235228

[iOSアプリ審査提出直後の祝杯]

 

急成長とカスタマーサポートの挑戦

消費税の増税、Windows XPのサポート切れなどにより、需要が高まる中、確定申告シーズンに突入。増加するであろう問い合わせなどにも対応するできるようサポート体制の強化はある程度余裕をもって予定に入れていたつもりであったが、それにしてもfreeeは想定以上に早く多くの方々に利用されるようになっていった。

そのため正直なところ、サポートのリソースが追いつかない状況もあったが、だんだん増員とトレーニング、そしてプロセス改善も進み、サポートのレベルをあげていくことができた。また、チャットサポートのように革新的なサポートにも取り組み、高い満足度を実現することもできた。チャットによるサポートの提供には個人的にとても思い入れがある。僕はとてもものぐさな人間で、カスタマーサポートのコールセンターに連絡して、本人確認で時間をとられたり、しらべますのでお待ちくださいと言われたまま、電話を耳にあてて待っているのがとても嫌いだったりする。もう少し良いやり方はないものかと思う中で、チャットはひとつの答えであるような気がしていて、大きな可能性を感じているのだ。

最終的に、通常はカスタマーサポートではないメンバーも全面的にサポートに加わり、日々増加する需要にも対応できた。やがて僕自身もサポート対応を行っていたが、ここからは学ぶことも多かった。リリースから6月までの3ヶ月ほどの時期も僕自身がサポート対応をしていたが、久しぶりであったのといただく質問が高度化しているため回答も簡単ではなかったが、直接ニーズを把握することで、さまざまな改善案も見えた。

DSC_2866

[freee カスタマーサポートコアチーム]

 

最後に

というかたちで、とても多くの方々に支えられつつ、freeeは2年目を迎えた。いつの間にやらfreeeのスタッフは30人を超える。事業計画上は見積もっている数字でも、実際にその風景は迫力が違うし、数字以上に想像できていないことのインパクトを感じる。こんなに素晴らしいチームができていることは、リリース時の2013年3月19日には想像していなかったし、そして同じような感想を来年2015年3月19日に再びもてるよう、頑張りたい。

IMG_3091

[リリース1周年記念飲み会の集合写真]
みなさま、全自動のクラウド会計ソフト「freee(フリー)」の次の一年もよろしくお願いもうしあげますm(_ _)m。