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興行成績が落ち込んだ2025年フランス映画界、来年への期待 パリの映画館では南京虫騒動も : 佐藤久理子 Paris, je t'aime - 映画.com
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コラム:佐藤久理子 Paris, je t'aime - 第149回

2025年11月27日更新

佐藤久理子 Paris, je t'aime
100万人の動員を超えた人気のコメディ映画シリーズ
100万人の動員を超えた人気のコメディ映画シリーズ

年末が近づき賞レースも本格化してきたので、ここで2025年のフランス映画界を振り返ってみたいと思う。と、書いてみたものの、じつは今年のフランス映画界は昨年に比べて興行成績が半分近くも落ちこんだという。2024年は動員1千万人の大台を超えたコメディ「サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行」や、「モンテ・クリスト伯」(約940万人)、ジル・ルルーシュ監督の「L’Amour ouf」(約500万人)といった大ヒット作があったのに引き換え、今年は社会現象化するような作品に恵まれなかったのが大きい。

今年100万人の動員を超えたフランス映画は5本のみで、1.ジャン=ポール・ルーブの「God Save the Tuche」、2.フランク・デュボスクの「Un ours dans le Jura」、3.ケン・スコットの「Ma Mère, Dieu et Sylvie Vartan」、4.セドリック・ヒメネスの近未来SF「Chien 51」、5.アレクサンドル・アスティエの「Kaamelott: Deuxième volet, partie 1」。ちなみに1はフランスで人気のコメディ映画シリーズの通算5作目。5は2000年代フランスのテレビドラマで人気を得た、時代ものコメディの映画化3部作の2作目にあたる。前作は2021年に公開され、今回の2作目はパート1と来年公開されるパート2に分かれ、さらに最終作はなんと2035年に公開予定という壮大な企画だ。ただし1作目に比べると今回は、数字の伸び方に勢いがない。また1、2、5位と、5本中3本は、主演も兼ねる俳優による監督作であり、彼らの人気が数字を後押ししていることも伺える。

では今年はそんなに優れた作品が少なかったのか、と言われるとそんなわけでもないと反論をしたくなるものの、良質でも小粒だったり、大衆的な作風ではないゆえに数字に繋がらなかったことが考えられる。配信系の勢いに押されて映画館人口が減っていることもあるだろう。さらに運の悪いことに、11月初旬にはパリのシネマテーク博物館や某映画館でトコジラミ(南京虫)が確認される事態が起き、ホリデーシーズンを前に映画館離れが懸念されている。

イザベル・ユペール主演最新作
イザベル・ユペール主演最新作

ちなみに公開されたばかりで健闘している作品には、仏化粧品会社ロレアルの創業者の一人娘で「世界一裕福な女性実業家」と言われたリリアンヌ・ベタンクールが、ジゴロのような年下男に大金を貢ぎ続けたスキャンダルを元に、イザベル・ユペールが主演を務めた「La Femme la plus riche du Monde」、フランソワ・オゾンアルベール・カミュの原作「異邦人」を、「Summer of 85」のバンジャマン・ボワザンで映画化した「L’Étranger」、ドミニク・モルが「黄色ベスト」のデモの事件からインスパイアされた「Dossier 137」などがある。

一方、制作側をいま脅かしているのは、ブロックバスターと低予算映画のあいだの規模の作品(製作費5億円から20億未満ぐらい。ちなみにフランスにおける「低予算」の感覚は日本とはかなり異なる)に、予算が集まりにくくなっているという傾向だ。つまり多くの中級規模の作品はこれに該当するわけで、これまでフランス映画の多様性を支えてきたプロジェクトが今後、かなり淘汰される危険がある。国の文化予算も削減されつつあるいま、プロデューサーたちは新たな資金調達のあり方を模索している。

暗い話はこの辺にして、2026年の期待作はどんなものがあるだろうか。ロマン・デュリスディーバ・カッセル主演による「オペラ座の怪人」、国民的歌手ジョニー・アリディの自伝企画が2本、ビクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」をタハール・ラヒムノエミ・メルランバンサン・ランドンらで映画化する大作、イランのアスガー・ファルハディ監督のメガホンの元、ユペール、カトリーヌ・ドヌーブビルジニー・エフィラの三大俳優が共演する新作、さらに濱口竜介監督がエフィラと組んでパリで撮った新作もある。フランス映画の国際化も一段と進みそうだ。(佐藤久理子)

筆者紹介

佐藤久理子のコラム

佐藤久理子(さとう・くりこ)。パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。

Twitter:@KurikoSato

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