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「これからの世界を生きるうえで重要になってくる」SF小説で考える未来への可能性(FRaU編集部) | FRaU the Earth
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SF翻訳家・大森望 × 声優・池澤春菜 対談 #3

「これからの世界を生きるうえで重要になってくる」SF小説で考える未来への可能性

作家たちが自らの持てる想像力と筆力を駆使して、いずれ訪れるかもしれない未来の社会を描き出すのがSF小説。特に近年は気候変動の要素を色濃く織り込んだものが増える中、2人の識者が、現実を生きる私たちにさまざまな気づきをくれる作品について語り合った。

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#1 世界的アワード3年連続受賞作も! SF小説から考える「気候変動と世界の未来」
#2 グレタ・トゥーンベリがモデルの本も!SF小説から考える「気候変動と世界の未来」

大森望 SF翻訳家 
おおもり・のぞみ/1961年、高知県生まれ。劉慈欣『三体』や、テッド・チャン『息吹』など話題作を翻訳する。責任編集を務めるアンソロジー「NOVA」シリーズでは、第34回日本SF大賞特別賞、第45回星雲賞自由部門をそれぞれ受賞。 

池澤春菜 声優、エッセイスト 
いけざわ・はるな/1975年、ギリシャ生まれ。数々のアニメ作品で声優を務める一方、SFエッセイ集『SFのSは、ステキのS』やSF短編集『わたしは孤独な星のように』を上梓。2020~22年には、第20代日本SF作家クラブ会長を務めた。

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さまざまな未来を見せる気候変動SFは希望である

大森:気候変動という今ここにある危機は、小説家たちの創造力を大いに刺激するテーマです。その意味で『ねじまき少女』も象徴的な作品で、一世を風靡しました。バイオテクノロジーで改造された動物やアンドロイドの少女が登場しますが、水没の危機に瀕した23世紀のバンコクが舞台ということもあり、エキゾチックな未来像が注目されました。

『ねじまき少女』
パオロ・バチガルピ/著 田中一江、金子浩/訳
ハヤカワ文庫SF/924円(上巻)

池澤:クライファイは海面上昇で地上に住めないという設定から発想していく作品が多いですよね。『いずれすべては海の中に』の表題作では、陸地は放棄され、一部の富豪たちが豪華客船で優雅に暮らしている。危機の時代にテクノロジーの恩恵を受けられる人と、そこから切り捨てられる人の差異を描きます。『闇の中をどこまで高く』でも、後半では水没した都市が舞台となっていました。

『いずれすべては海の中に』
サラ・ピンスカー/著 市田泉/訳
竹書房文庫/1760円

『闇の中をどこまで高く』
セコイア・ナガマツ/著 金子浩/訳
東京創元社/3080円

大森:それでいうと、上田早夕里さんの《オーシャンクロニクルズ》シリーズも、その名の通り、海面上昇に伴って生まれた異形の生物や、海洋民の生活を徹底して描いています。今も続いているので、ぜひ多くの人に読んでほしいシリーズです。

『深紅の碑文』
上田早夕里/著
ハヤカワ文庫JA/1012円(上巻)

池澤:今回挙げた作品は、気候変動による破滅や悲劇を書いたものが圧倒的に多くなりましたが、韓国の新世代、キム・チョヨプの『地球の果ての温室で』は、大厄災で地球が滅亡しかけたところから復興した世界が舞台になっています。生き生きとした植物の描写を通して、人間の営みを超えた、地球のダイナミズムを描く美しい作品なので、こちらも見逃せません。

『地球の果ての温室で』
キム・チョヨプ/著 カン・バンファ/訳
早川書房/2200円

大森:気候変動に対する危機感は、欧米ではたぶん日本以上に強くて、だからこそクライファイが注目されています。でも実際は日本にも影響が及んでいる。SF小説を通して気候変動についてのさまざまな考え方に触れることは、これからの世界を生きるうえで重要になってくると思います。

池澤:《フューチャーズ》とも言われるように、未来は複数形で、我々の生きる世界は、あらゆる可能性に開かれています。

大森:未来は決して一つではない。

池澤:そう、その希望を見せるのがSF小説なんですよね。閉塞感が漂う現代社会に生きる私たちにとって必要なエンターテインメントなんです。SFの力を借りて、自分自身が生きたい未来、自分の子孫たちに遺したい地球を想像する時間を持つ人が増えれば、よりよい未来への可能性が高まるのだと思います。

大森:何より娯楽なので、肩肘張らず、気軽に読んでほしいですね。

池澤:本当にそう思います。小説だからって全文をマジメに読まなくちゃ、と思わなくていい。映像作品を倍速視聴するように飛ばし読みしてもいいし、気に入ったシーンだけを繰り返し読んでもいいんです。SFは、著者と同じくらい、読者も自由になっていいジャンルなんですから。

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