30年近く極秘の存在だった世界初のマイクロチップ「MP944」とは?
世界で最初の民生用マイクロプロセッサはIntelとビジコンが1971年に開発したIntel 4004といわれています。しかし、軍用も含めるとジェット戦闘機・F-14に搭載されたこのMP944の方がわずかに早く登場しています。しかし、MP944は軍用ということで、30年近く機密事項となっていました。
World's First Microprocessor | 50th Anniversary 2020
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The World's First Microprocessor: F-14 Central Air Data Computer - YouTube
MP944は、アメリカ海軍のF-14トムキャット戦闘機に搭載された中央空中データコンピューター(CADC)用のマイクロプロセッサで、航空宇宙企業であるGarrett AiResearchのスティーブ・ゲラー氏とレイ・ホルト氏が率いるチームによって1968年から1970年にかけて開発されました。
MP944は20ビットのパイプライン処理と並列処理を備えたMOS-LSIであり、375kHzで動作し、毎秒9375回の命令を実行する能力を持っていました。これは当時の競合製品よりもはるかに高性能で、Intel 4004と比較して約8倍の処理速度を誇りました。
MP944が搭載されたCADCは、静圧センサー、動圧センサー、航空機温度プローブ、アナログおよびデジタルのパイロット入力という5つのソースからデータを受け取ります。そして、これらのデータを基にマッハ数、高度、対気速度などをリアルタイムで計算し、F-14の飛行性能の鍵となる可変翼システム、機動フラップ、グローブベーンなどの動翼を精密に制御しました。さらに、コックピット内にマッハ速度や高度、対気速度、垂直速度といった情報を表示するのもCADCが制御していたとのこと。
軍用機としての厳しい要件を満たすため、MP944は-55℃~125℃までの広範な温度範囲で動作する耐久性を備えていました。また、有人飛行システムとして安全性も極めて重視されており、システムは飛行中も常時自己診断を実行します。もし障害が検知された場合は、18分の1秒以内に標準装備された同等のバックアップユニットへと切り替わる冗長システムが構築されており、高い信頼性を確保していました。
開発者のホルト氏は、1971年にMP944についての論文発表を試みましたが、国家安全保障上の理由からアメリカ海軍により却下されました。1985年の再申請も許可されませんでしたが、1998年4月にようやく機密解除が認められました。これにより、MP944が実質的な「世界初のマイクロプロセッサ」であったという事実とともに、その先進性が明らかになりました。
なお、2020年に開設されたF-14の50周年記念サイトでは、MP944が世界初のマイクロプロセッサチップセットであることの他に、「初の航空宇宙用および軍用マイクロプロセッサ」「初のフライ・バイ・ワイヤ用飛行コンピュータ」「初の20ビット設計」「初の自己診断機能付きチップ」「初のデジタル信号処理(DSP)応用」「初のパイプライン実行および並列処理機能付きマイクロプロセッサ」といった数々の記録的な「世界初」の称号を持つと主張しています。
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in ハードウェア, Posted by log1i_yk
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