夜。
洗面所からヨメの悲鳴が聞こえた。
「ツァーーイ!!」
どうしよう。聞かなかったことにしようか。
虫が出たのか、何かが壊れたのか。
いずれにしても、ぼくにとって悪いことが待ってそうな気がする。
でも聞こえてしまったものは仕方ない。
とりあえず様子を見に行こう。
洗面所では、キャミソール姿のヨメが肘と脇腹を押さえて悶絶している。
一体どうした。
聞けば、風呂に入る前に洗面所のヒーターをつけようとしたのだそうだ。
洗面所のヒーター。
超寒いわが家の洗面所 兼 脱衣所を南の楽園に変えるべく、洗濯機の裏の壁に取り付けた小さなヒーター。
ただ、取り付け位置を少々高いところにしてしまったため、ヨメは洗濯機の防水パンの端で爪先立ちをしながら目一杯に腕を伸ばして電源を入れている。
そして事故が起こった。
防水パンから足を滑らせ、伸ばした腕を引っ込めたところで洗濯機の天板にヒジを
「ガイーン」
加えて、普段使わない筋肉を使った脇腹が
「ピキーン」
そしてまろび出た悲鳴が
「ツァーーイ!!」
まあ、なんだ、わが家では割とよくある光景だ。
しかしここまでお読み頂いた方は、こんな疑問を思い浮かべはしないだろうか?
「リモコンどうした?」
わかります。たしかにその通り。
ちゃんとありますよ。
電池切れ?
いえいえ、バッテリーはビンビンです。
それなら何故、ヨメは危険を犯してまでヒーターの電源ボタンへ必死に手を伸ばすのか?
そのすべての答えは、この1枚の写真にあります。
「ON」どこ行った……
