こんにちは!灯甲妃利です。
カクヨムにて連載しております『祓うダンテ』は、ドイツとオランダが舞台のダークファンタジーです。
こちらの作品の『Zeitachse6:Es ist ein Schnitter, der heißt Tod ―― 時系列6:死を刈り取る人がいる』という回で、ドイツ民謡(和訳つき)が登場しています。
あれは実在するドイツ民謡です。
今回はそれについてのんびり解説していきます。
あのドイツ民謡は『Es ist ein Schnitter, der heißt Tod』というタイトルで(略される場合もあります)
直訳が。。。文化の違い的にできない表現です。『刈り取る人、死と呼ばれるがいる』みたいな元も子もない感じになってしまいますが、要するに『死を刈り取る人がいる』とか『刈り取る死神がいる』みたい感じです。
楽譜成立の証拠があるのは1637年です。
お気付きでしょうか。。。
『祓うダンテ』って、ヒロインであるドゥエンテ視点では1552年の物語なのですよ。
ええええ!?(;´・ω・)
えええええええ!?(;´・ω・)
ちょ、ちょっと灯甲さん時代間違ってますよっ!(;´・ω・)
ていうか魔女の出身地であるプロイセンは1552年にはないですよっ!(;´・ω・)
って感じなのですが。。。
はい。『祓うダンテ』の世界だけ1552年にプロイセンがあります。とっても強い軍事国家です。
そしてドイツ民謡についてはプロイセンとはまた違う事情で存在しています。
ドイツ人の土地では1300年代と1400年代にペストが流行した時期があり、一説によるとその時点でドイツ人たちに『Es ist ein Schnitter, der heißt Tod』のもととなる曲が歌われていた可能性があるそうです。
証拠に残る楽譜にしたのが1637年ということ。
1618年から1648年にかけて、基本的にはドイツ人の土地である神聖ローマ帝国と、その周辺国オランダ(※作中の世界ではネーデルラントという名称で統一)
スペイン、フランスなどなどが入り乱れてぶつかる30年戦争が続きます。
『祓うダンテ』でも触れている通り、神聖ローマ帝国の皇帝であるハプスブルク家はカトリックなのですが、1500年代からプロテスタントというキリスト教のカトリックではない宗派が台頭してきます(それだけカトリックも階級とか権力とか色々厳しかったから不満もあった感じで)
カトリックVSプロテスタントの戦争が30年戦争で、いわる『宗教戦争』という肩書なのですが、そう単純ではありません。
30年戦争では、神聖ローマ帝国の領邦同士なら同盟結んでいて、仲間で、外部のプロテスタント国家と戦うぜ!ってなったわけではなく!
プロテスタント勢力の味方をしてハプスブルク家と戦争する道を選んだ神聖ローマ帝国内の領邦も色々出てきます。
ある種内戦的な面もあるのですが、神聖ローマ帝国は皇帝一極集中で権力を握っている国家とは違うのが難しいポイントです。
それは神聖ローマ帝国以外の貴族も同じ。
『僕たちは神聖ローマ帝国から独立したいよ!』
『僕たちは神聖ローマ帝国の皇帝に外交権をもっと認めてほしいよ!』
『ていうかスペインまじでムカつくんですけどbyネーデルラント』
など。領主や王様のもともとの信仰はあんまり関係なく政治的な理由でプロテスタント勢力についた領邦や国もあります。
スペインはカトリックなので、スペインに鬱憤が溜まっていたネーデルラントはプロテスタント勢力となります。ちなみにネーデルラントは今も基本的にはプロテスタント中心の国です。
30年戦争で殺伐としている時代だったからこの『抗えない死を歌った』ドイツ民謡が浸透した。。。というのが有力なアレですが。。。
だが、しかし。。。
30年戦争の時代だったから作られたわけではなく、もっと以前にもあったかもと『一説』が出てくる理由は、このドイツ民謡の作曲者が不明だからというのが大きいのかもしれません。
ということで私は、作中で『曲名は知らないけど~』とすることで(※この物語は楽譜成立がまだの時代のため)作中の時代の人が知っている曲として登場させました。
現代で歌っている人はオリジナルの作曲者ではないので、作中ではドイツ語原文で登場させました(一応配慮としてドイツ民謡であると明記しているよ)
Es ist ein Schnitter, der heißt Tod,(死を刈り取る人がいる)
Hat Gewalt vom höchsten Gott,(彼は神から力を授かった)
Heut wetzt er das Messer,(彼はナイフを研いでいる)
Es schneidt schon viel besser(それは既に鋭く切れる)
Bald wird er drein schneiden,(彼はもうすぐ刈り取るだろう)
Wir müssens nur leiden.(我々はただそれに耐えなければいけない)
Hüte dich schöns Blümelein(気をつけて。小さな美しい花よ)
とても悲しいメロディで、まあその名の通り死を描写している歌詞です。
このドイツ民謡が登場した回は元々初期原稿にあったわけではなく、カクヨムから公募に応募することにして、文字数規定的にいけたのでゼロから場面を加筆しました。
加筆中、ここでどの曲を採用するか迷いました。
複数候補はあったけど(それこそ1552年に歌われていてもおかしくない発表年の曲もあった)
歌詞とメロディが。。。もう『祓うダンテ』にはこの曲しかないと思ってしまったのです。
まず、歌詞がある意味『祓うダンテ』の主人公であるウェルギリウスそのままっぽいですし、あとメロディに私は鳥肌が立った。
とても懐かしい感じがしたというか。
君に、決めた!
と、直感ですよね。
興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひYouTubeで『Es ist ein Schnitter, der heißt Tod』と検索してみてください。1637年の原曲と同じ内容で歌っているドイツ人アーティストがいます。
ちなみに私のおすすめは Lorelinaさんというアーティストです。
彼女の声と世界観はこの曲のイメージにぴったりです。
ではでは!
『祓うダンテ』は公募に応募するために書き始めた作品なので文庫本1冊水準の文字数で終わります。
あと数万文字で終わるので、もうすぐクライマックスとなります。
引き続きよろしくお願いいたします。
なお、今回の近況ノートの写真はドイツのフランクフルトの写真です。神聖ローマ帝国の皇帝が戴冠式をやった教会の傍にあるレストラン街みたいな感じのところ。
フランクフルトは『ファウスト』などでお馴染みの作家、ゲーテの出身地でもあります(ゲーテの生家は観光地になっています)
それではまた!