祖母が亡くなったことで親戚が集まった。大勢いる いとこたちを把握しきれていない主人公は、そうした、把握しきれていない親戚である美しい少女に出会う。少女は主人公に、あるものを一緒に探すよう頼むが——。内容をご紹介するなら、こんな感じでしょうか。ただここまで内容をお伝えしてしまうと、もう感想はほとんどお伝えできません。ただ、心がじんわりとするお話です、とだけお伝えしておしまいにします。9,505文字に、ありたけのぬくもりが込められています。ぜひ。
読んでいくと、きっと、仲の良い、あたたかくて楽しい家族なのではないか、そんな雰囲気が、店舗の小気味よい会話のむこうから立ちのぼってきます。おばーちゃん、きっともう、未練もなく、満足してゆけたことでしょう。
亡くなった祖母が、若い姿の「寿美子さん」が登場する瞬間の驚きと、静かに託される「育児日記」の温かさが胸に残りました。家族を想う気持ちの強さと、別れの場面に潜む「言えなかった言葉」が丁寧に描かれていて、温かくて静かな余韻が残る素敵な作品でした。
亡くなった祖母が、ひとりの少女にだけ託した“探し物”。それは、母に渡せなかった「育児日記」――愛した記憶と、言えなかった「ありがとう」を綴った、静かな“母からの手紙”だった。涙のあとに、静かな光がともる。これは、亡き母から娘へ、そして孫へと受け継がれる、命の物語。