灯籠流しで海へと流されたものは、時々形を変えて戻ってくる。えびすさんと呼ばれるそれらを管轄するのは、御宮の人間の仕事。
物語は、そんな古くからの風習を受け継ぐ海辺の町を舞台として、そこに暮らす章生と、御宮の家に生まれた柳瀬、そしてその妹の夕子の三人を中心として進んでいく。
しめやかな灯籠流しの儀式の様子に、どこか浮世離れした雰囲気を纏う御宮の家の兄妹。そして彼らの抱えた秘密が、美しく滑らかな文体で語られるたび、どんどんと物語の世界にのめり込んでいく。
言葉の流れが本当に心地よくて、日常の中に溶け込む神秘と、人と人の間に絡んでいる縁や執着にぞくぞくとした。気づかぬ間にふっと違う世界に連れて行ってもらえる、艶やかさと恐ろしさがクセになるお話だった。
夏にぴったりの素晴らしい短編なので、ぜひたくさんの方々に読んでいただきたい。
おすすめです!