概要
和風ファンタジー、中編です。全10話。
(11/29追記 最終話をつけ加えて11話となっております。投稿は第10話とともに11/30日となります)
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!白闇
東洋のようでいて、そうではない何処か。
武江さんがその心の中に作り上げた、何処かの遠い國。
そこで起る怪奇を、鼻先を過ぎる香の匂いを捉えるように、或いはサティの音楽のように書く。
赤、青、黄、黒、白。
これらの色彩が、武江さんの國においては、
緋(紅)、蒼(碧)、黄金、闇、光
へと変わる。
拡げたるは風呂敷ではなく天地を覆い尽くすほどの錦の緞帳。作者が織るそこには、巨螭(おおみづち)、鬼目、火焔鳥が描き込まれ、アッと愕きの叫びを上げて逃げまどう人々の姿をしっかりとその一針に留めて沈めていく。
この世界は漆黒の闇ではない。そこには近代の電燈かと見紛うほどの白光が差し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!海と月の、恐ろしくも美しい、魅入られずにはいられない物語
深い深い、溟い溟い海の底。恐ろしく年古りた螭は、ふと思い立った。夜空で輝く月を呑んでやろう、と。
あまりにも果てしない、到底叶いそうにない試みですが、この螭は只者ではありません。身を起こせば大海嘯を起こすほどに巨きな、口吻を峰かと見紛ってしまう巨螭なのです。だから、あるいは……。
一たび磨き抜かれた玉のような文体で綴られた物語を知ってしまうと、螭の試みの結果を確かめずにはいられなくなることでしょう。そうして、このお話で最も畏怖すべき存在は何だったのかを悟るでしょう。
ひたひたと全てを包み込む海のように静謐で、月の光のごとく清かな物語に、あなたも酔いしれてください。 - ★★★ Excellent!!!大海原に望月の輝く夜と、焔の明けと。
何とも壮大で不穏な、美しい物語だ。
広く深く黒々とした海水を湛える大洋の
遥かに深い、闇の深淵にとぐろを据える
巨螭(おおみづち)が、或る時ふと天上の
月を呑もうと考える。
その大きさたるや、想像しただけで気が
触れるほど。長く大きな身体を畝らせては
巨大な海嘯を齎して行く。
破格のスケールで描かれる巨螭の威容と
その途方もなく大きな自然のもとで小さく尊い命を紡ぐ人々の暮らし振りが対照的に
描かれる。
商船の上で不穏な風と波に巨螭を予感する
『鬼目』と呼ばれる紅い瞳の青年。
濱に打ち寄せる波に洗われる瑠璃に玻璃、
宝珠の煌めきを探して、吹き荒ぶ濱風に
翻弄される荒屋に棲まう娘。
焔…続きを読む