割と近所にあったとしても、
よほどの用事でもない限り降りないような駅は確かにある。
とにかく何処かのベッドタウンみたいなのを想像すればいいのだろうか?
何もない、無機質な住宅街かもしれない。
そこの、一際大きな屋敷に葬式などで見かける鯨膜、
ちょうど……ピアノの黒鍵と白鍵のようなものがたれさ立っているのを、主人公は見た。
が、それは、みてはいけない鯨膜だったそうで、見たものは失踪するという、
奇談、階段、禍話である。
しかし私は疑問に思うのだ。
この男はナゼ……なんの目的があってこの土地に来た?
もしかしたらよからぬものは日常に紛れ、
鯨膜なんぞ見る前から、侵食されていたのかもしれない……。
想像力で怖くなるタイプの物語です!
あからさまなのを野暮と感じる方は読まない手はない。
この時期にぴったりにございます!!
是非! ご一読を。
白布と黒布を一枚置きに縫い合わせた鯨幕。
その鯨幕が強く印象に残る物語だ。
主人公に誘われるようにして進む物語は、短いながらも満足感を与えてくれるすごさと魅力に溢れている。
淡々と、それでもこちらに焦燥感を与えるような文章は鯨幕の出現で幻想的に変わる。
この物語はホラーだ。ホラーだけど、見惚れてしまう。
鮮烈な青空の元、屋敷を取り囲むかのような鯨幕に読んでいるこちらの目も奪われてしまうのだ。
白と黒の布が風に揺れる。こんなことは書いていないのに、不意にあの風景の中に立っているかのような感覚に陥る。白昼夢の中にあるかのような景色を浮かべては見惚れてしまうのだ。
そんな想像力をかき立てられる文章が魅力な物語だ。
さて、鯨幕を見た主人公はどうなったのか、ここからは是非、物語を読んで欲しいと思う。
幻想的で恐怖に満ちた物語が好きな方におすすめです。