概要
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!静かな洞察と深い共感が織りなす、人生と社会へのやわらかなまなざし。
一連のエッセイは、まるで心の奥底を覗き込むような静謐さと、鋭い知性に満ちています。
日々の喧騒や混迷の中で見失いがちな「本質」や「真理」を、決して押し付けることなく、やわらかく、時にユーモラスに問いかけてくれます。
戦後から現代までの日本の変遷、個人と社会の葛藤、学びの本質、そして人生の散歩道を、まるで川が大海へと流れゆくように、自然に紡いで「わかったつもり」の危うさを自覚しながら、わからなさを抱えたまま前に進むことの尊さを教えてくれます。
無用の用の章で、なぜか『最後の授業』を思い出しました。
フランス語教師アメル先生が教え子と村人に語った「フランス語は民族の魂である」という言葉に象徴…続きを読む - ★★★ Excellent!!!思索の粒を丁寧に拾い集めた、静かで鋭い哲学エッセイ集。
『落穂拾い』レビュー
── 哲学をポケットに、日常を透かして考える──
レビュアー:ひまえび
注……僕よりも遥かに高い知的レベルのお方に対して失礼だとは思いましたが、笑ってお許しください。
本作『落穂拾い』は、十篇から成るミニマルな哲学的エッセイ集です。英語の一文に続く日本語の大意と考察、それらを反射的に並置する構成によって、読者は思考の“瞬間”に立ち会う感覚を得ます。
たとえば冒頭に掲げられた Time as well as money is hard to spend. というアフォリズム。
その後に続く短い補足では、「自分を変えるのは実は簡単だ」と反転する。
この一文のために、背…続きを読む - ★★★ Excellent!!!昔の知恵は現在でも活かせます
本作を現在の若者が読むと納得するか。不安を覚えます。
それでも、意図が通じればいいと願います。
失敗して初めて学ぶことがあります。当レビューを書いている僕は49歳。失敗を数多くしてきました。すると本作に納得することが多いのです。
本作の第一節は、他人を変えるより自分を変えることが容易いのが現実だと説きます。成功しているうちは他人に指図すれば物事を進められます。失敗したときに立て直すには? 学ぶとはつまり自分の言動を以前とは変えること。それが「失敗を糧にする」ということです。
第一節を読んだだけで、失敗の後に自分を変えてきた人だと分かります。その人がまとめてきた知恵は読みたくなりません…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人間が本当に「考える葦」であるならば。
この作品は思ったよりも難解だった。少なくとも小生にとっては、難解であると同時に楽しくもあった。考えることが好きな人にとっては、必読だろう。
レヴューは本来、他の読者様にお勧めしたい点を書くだろうが、ここでは作者様の問いかけに少し耳を傾け、小生なりの考えをお伝えできれば、と思う。
小生が大学で学んでいたのは文化人類学で、アイヌの口頭伝承を研究していたので、第二外国語はロシア語だった。作者様はドイツ語だったとのこと。文化人類学は歴史的に、植民地支配と結びつきが強かった。それと同時に、自省を深く求めてきた学問でもある。例えば世界がダーウィンの進化論に沸いたとき、文化も進化するという文化進化論…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人生の不確実さに寄り添う哲学のすゝめ
この作品は、人生や哲学、日常の出来事を通して、深い洞察と軽妙なユーモアを交えながら紡がれたエッセイ集のように感じます。一見抽象的でありながら、どこか身近で、自分自身の思考を映し出されているような感覚に陥ります。「学びとは知的散歩である」という矛盾に満ちた言葉から、誰もが経験するジレンマや偶然性を鋭く捉えつつも、それをポジティブに解釈する力強さを感じさせます。また、「おたく文化」や「道徳」を題材にした章は、日本独自の文化的背景をユニークな視点で切り取りながらも、普遍的なテーマに昇華させています。
特に印象的だったのは、「人生に目的は不要だ」と語る部分。目標や計画に縛られることのない「生きるこ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!メートル原器の使い方( ;∀;)
例えばね、「嫌味」を人類で最初に発明した人は「哲学の祖」といっていいかもしれません(笑)。「嫌味」というのは悪い意味に捉えられてしまうかも知れないけど、正論では論破できない世界に光を与える部分があります。嘲笑、冷笑、皮肉、他者に向けられた言葉は、知的好奇心が強ければ強い程、最終的には自己に向けられてしまうのです。おわかりでしょうか、皆様。
さて、こちらのエッセイですが、タイトルの「落穂拾い」の意味を一考してから拝読されると楽しめます。
真っ先に浮かぶミレーの絵「落穂拾い」。案外知らない人も多いかも知れないし、見た事はあっても普通に見逃している人もいるかもだし、深くディープに考察している人…続きを読む