主人公は、大学受験に失敗して所在もなく公園で泣いておりました。この時期にいつも咲いてくれている桜も、全く咲いておりませんでした。そこで、方向音痴の「彼女」と出会ったのでした。圧倒的な文章で語られる、少し不思議な物語にございます。人生に無駄な時間などない。浄土真宗からスタジオジブリにまで通ずる教えを、思い出すことができます。強くお勧めいたします。ご一読を。
慰みに夜桜でもと、近くの公園にやって来たが、桜は、やっと蕾が確認できる程度だった───。飾らない文章なのに、言葉の繊細さと美しさが際立つショート。この雰囲気に、公園で出会った不思議な少女が、ばっちりハマります。春の夜の、夢のような体験。読んでる途中で、ワクワクして、読了後の気分も、ふわっと、うららかな春の日差しを感じるような、良いものです。主人公と、少女の出会い。二人がかわすやり取りも、過不足なく、読みやすいショートです。おすすめですよ。ぜひ、ご一読を!
今年も出会いと別れの季節がやってきた。大学入試後の失意の中での一期一会。ぼんやりと淡く光る桜の木の下にいたのは、迷子の姫だった。心を通わせ、彼女を助けるために立ち上がる気概が春の夜に清々しい。時代錯誤の感も相まって、春を呼び寄せる展開に繋がる手腕が光る本作。もう一つの春としての桜を呼んでしまうラストが微笑ましい、言葉はなくても思いは伝わる春色に映える爽やかな物語です。