「好きです、先輩。私とお付き合いしてください」。ふたりきりの校舎裏、少々あざとさが目立つもかわいらしく人気者な後輩女子、恋歌から告白された平凡な“僕”。彼女の誠意を信じられないまま一夜を明かした彼は、登校中刑事に呼び止められた。そして知るのだ。昨日の夕方、つまり彼が告白された頃合い、恋歌の母親が何者かに殺されたことを。
このどんでんが思いっきり返されるキャッッチーなオープニング! そこから始まる主人公と恋歌さんの対決! “僕”からすればアリバイ作りに利用されたのでは? となりますものね。導入の秀逸さ、この上なしです。
実際、恋歌さんは怪しいです。直接手を下さずとも誰かに手を汚させることも……と読者に思わせるほどかわいらしく魅力的なのですよ。実に巧みで妙なるキャラクター力と描写力じゃありませんか。
彼女を前に“僕”は当然迷って悩みます。でもその心情が濃やかだからこそ、真相を明かした彼の言葉は強く胸に響くわけですね。
事件の解明と同時進行していく“僕”と恋歌さんのラブコメの行方もお楽しみあれー!
(「ダニットという謎」4選/文=髙橋剛)