第9話 作中最強のすい
交差点の真ん中、月明かりを受けて青白く輝く刀身。
交差点……そこに立つのは、雨で濡れた薄水色の髪を夜風に揺らす少女──すい。
ちなみに、今回のアテレスは人型で。
俺たちはその光景を、星川中央公園の公衆トイレの隣にある、小さな建物の前から見守っていた。
「シェイラ……カッパ着るか……」
俺はショルダーバッグからカッパを取り出し、「ほら、手出して……」と優しい声でシェイラに合図を送る。そして彼女にそれを着せてあげた。俺自身は傘を差す。
そして、かなでに傘を渡そうと、新たな傘をバッグから取り出す。
「これ……シェイラの傘なんだけど、今欲しいか? かなで……」
「私は、大丈夫です、すいさんが雨をうけてるなら……私も雨を受けます」
「うん……そうなんだ」
俺はそう言いながら、差し出しかけた傘をバッグへ戻した。そして再び、すいの様子に目を向ける。刀身が、芯から赤く光り、熱を帯び始めていた。
「あれ……刀、赤くなってないか?」
「すいさんは、今炎の神の能力を使ってます。炎の神の能力は……」
「は、はっやっ! 初速……車と同じくらいだぞ、あれ! しかもF1並みの!」
すいは、スポーツの神、炎の神──さまざまな神の力を次々と使っていく。
もはや、何がどうなっているのか、俺の理解は完全に置いてけぼりだ。
その隣でかなでは、まるで解説者のように淡々と、「いまどの神の力を使っているのか」をずっと教えてくる。
「今、アテレス……マッスルポーズしなかった?」
数体の筋肉自慢のアテレスが、公園の進入防止用の金属製の杭?を引き抜き、それをまるで投槍のようにしてすいへと投げ放った。
「さすがに、助けに行こう! かなで……」
だが、
飛んできた複数の杭を、すいは迷いなく斬り捨てる。
切断された断面は、溶けてグズグズに変色していた。
──高温の刀身が鉄を溶かしながら斬って……──
そのまま、すいは高熱の刀を振るい、迫り来るアテレスを次々と斬り伏せていく。
斬られたアテレスは焼け焦げ、まるで炭のように崩れていった。
そして、
「月光……半月斬り」
すいが地面を蹴った瞬間、扇状の斬撃が空を裂く。その一撃でアテレスがまとめて崩れ落ちる。一分もかかったのだろうか。
わずかな時間で、50体ほどのアテレスをすべて倒してしまったのだ。
「今のは……、月の……」
「月の神、よぞらの技、だよな! 月が出ている夜だけ、全ステータスが強化される……だから、使ったのか!」
「すいが全部……倒したよ! かなで……すい凄い?」
「凄いです! すいさん」
──この人、もう一人だけでよくない?──
「なあ、かなで……すいさんだけいれば、もう解決するんじゃ……」
「ダメです! すいさんだって疲れますし、アテレスは日本全国に現れるんです……一日に最大1000体も!」
「そ、そんなに出るのかよ……」
「でも……すいさん、強いですよね……? 本当でしたよね……!」
「あっ……! 圧かけんなよ!」
「……ああ。認めるしかないな。すいさんの強さは……」
「これが……」
最 強 か……
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