私がWeb小説を読み始めた頃に夢中になっていた作品です。
スチームパンクものの中でも独特の輝きを放つ本作。蒸気機関と歯車が支配する鉱山都市スーティを舞台に、若き写真家ゾーイ・エズズが幻の遺跡を探す冒険譚として物語は幕を開けます。
その世界観は、読者を一瞬で引き込む力を持っています。地下20階から地上71階まで広がる複雑な構造の鉱山都市。そこに住む人々の暮らし。失われた古代文明の謎。これらが織りなす壮大な舞台設定が読者を夢中にさせます。
主人公ゾーイの成長と、彼女を取り巻く仲間たちとの絆の深まりを描く人間ドラマも見逃せません。特に赤髪の二輪車乗りセオドアとゾーイの関係は信頼と裏切りの狭間で揺れ動き、読者の心をがっしりと掴みにきます。気の強い新聞記者イッツェルや、深奥地区育ちのダグラスなど、個性豊かなキャラクターたちが物語に彩りを添えています。
そしてキャラクターたちの複雑な背景。それぞれの裏に隠された過去や思惑が徐々に明らかになっていく展開は読みごたえがあります。特にセオドアやマーガレットの過去が明かされる場面は圧巻で、読者の感情を強く揺さぶります。
スチームパンクの要素である機械仕掛けの世界と、人間ドラマが見事に調和しているこの作品。古代の遺跡や技術が現代社会にもたらす影響、そしてそれを巡る人々の思惑。これらが絡み合いながら、物語は予想外の展開を見せていきます。
また美しい文章表現も、この作品の大きな魅力の一つです。蒸気や歯車の描写、キャラクターの心情描写など、細部まで丁寧に描かれた文章は、読者を物語世界に没入させてくれます。
スチームパンクを舞台に人間の葛藤や成長、そして希望を描ききった感動作。機械文明の発展と人間性の探求という普遍的なテーマを、独自の世界観と個性的なキャラクターで彩った本作は、スチームパンク好きはもちろん、人間ドラマを楽しみたい読者にもおすすめの作品です。ぜひ続編を期待したいです。
蒸気がもうもうと立ち込め、チェーンが軋みを立てながら歯車を回し…
スチームパンクが好きな方、冒険譚が好きな方全てにお勧めします✨
誰も全容を知らない鉱山都市、無秩序にたくましく在るこの都市で、写真家の女性ゾーイは生きていました
謎の一枚の絵を拾った女性写真家のゾーイは、その絵に描かれたヴィヴィエ遺跡という遺跡に心惹かれ、絵を巡る陰謀に巻き込まれたところを、これまた謎の空飛ぶ二輪車乗りの青年セオドアに救われ、二人は遺跡を探す冒険に乗り出す…
あらすじはこういう感じですが、このお話の魅力はストーリーだけではありません！
実際に読んでいただきたい！
描写の一つ一つに作者のこだわりと、物語世界への愛が溢れています！
一言のセリフ、地の文での描写が丹念に物語を彩り、決して飽きさせません！
現実に引き戻されることもありません。
登場人物たちは間違いなく物語世界の中で生きていて、彼らの目が、耳が、鼻が、指先がそれを教えてくれます。
蒸気の音…使い込んだ機械たち…蒸気に混ざる屋台の匂い…金属と革とサビの感触…行き交う人々のざわめき、ひしめき合う息苦しさ…
この素晴らしいお話の中に入ってみませんか？
一話読んだらまた次の一話、また次の一話と、読む手が止まらなくなりますよ✨
ここは魔法がない代わりに蒸気や機械でものが動く世界。
鉱山都市スーティに住む売れない写真家の彼女ゾーイ。彼女は天使と呼ばれるほどの有名人なのに、売れない写真家をしております。『赤髪の二輪車乗り』の空を飛ぶ二輪車に乗る有名人の青年を撮ったものの、他の写真もあまり売れず。途方に暮れていたところ、彼女は不意に下水道の道に落ちて、一枚の絵のようなものを見つけます。
しかし、その一枚を見つけたことで彼女の人生は変わっていきます。
その一枚を持ったせいで偉い人に捕まってしまいました。そして、その偉い人に捕まったのはゾーイだけではなく、『赤髪の二輪車乗り』の青年もいたのです。
鉱山都市を冒険し、その一枚の絵の謎について知ろうとします。
伏線もちゃんと練れており、その国の情勢や問題などがしっかりと書かれております。登場人物たちも豊かで見どころが多く、ストーリーも飽きないです。
ゾーイの過去、一枚の写真やそれらを取り巻く周囲。
彼女たちは目的の場所に辿り着けるのか。自分は見届けていきたいと思ってしまいます。
好きな人には刺さるやもしれない、スチームパンクもの。初めてスチームパンクを読む人が手にしても良い一作。一読してみてはいかがでしょうか？
バラックが積み上がり、巨大な建造物となった居住区を有する鉱山都市。そこには喫茶店があり、朝市が開かれ、常ににぎわっていた。うわさ話が飛び交い、蒸気の匂いとともに町中に人がっていく。しかしすぐ横には仕事にあぶれて失業した人達がたむろしていた。
雑然とした街に生きる女性写真家のゾーイは、巷で話題の“空飛ぶ二輪車”をカメラに収めようと奔走する。
そんなある日、一枚の絵に遭遇し、魅入られ、そして……。
と、ワクワクする舞台にワクワクする展開。
言葉選びも綺麗で、それ故キャラがブレず、世界観にガッツリと引き込んでくれます。
良作であり大作。この機会に是非！
一枚の絵画に描かれた風景を探し求める、スチームパンクファンタジー作品です。
主人公は売れない写真家。
いつも勤勉にモチーフを求めて各地を回っていますが、他の写真家が内に秘めているような題材への熱を持っていませんでした。
そんな主人公に転機が訪れたのは、足を踏み外したせいで落下してしまった下水道。
そこにあったのは、場違いなほどに美しい絵画。
放置するのも忍びないと思った主人公は、その絵画を持ち帰ってしまいます。
そこから始まったのは、絵画泥棒の濡れ衣。続いたのは、権力者との命懸けの追いかけっこ。
なぜ、自分を執拗に追い回すのか。なぜ、一枚の絵画程度に執着するのか。そして、もしかすると、絵画のモデルは存在するのではないのか。
目を奪われた光景を現実で目撃せんがため、主人公は行動を起こします。
夢のような風景は、現実に存在しているのか。
ぜひ読んでみてください。